早期アルツハイマー病治療薬「LEQEMBI™」(レカネマブ)について、米国退役軍人保健局がFDAによる迅速承認から2カ月で保険適用を開始早期アルツハイマー病の米国退役軍人の方々への貢献が可能となるとともに、エーザイは引き続き透明性高く「LEQEMBI」の高質なデータを米国退役軍人保健局に提供

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、米国退役軍人保健局(VHA)による、早期アルツハイマー病(AD)の退役軍人に対する「LEQEMBI™」(米国ブランド名、一般名:レカネマブ)の保険適用が開始されることをお知らせします。VHAが定める基準を満たしたVHAの医師は、VHAが定める対象基準および米国食品医薬品局(FDA)による現行の承認ラベルに適格な退役軍人の方々に対して、「LEQEMBI」を処方することが可能となります。今回、VHAが慎重かつタイムリーな検討により、「LEQEMBI」の迅速承認取得から約2カ月で保険適用を決定したことは、ADの退役軍人の方々に対するVHAの継続的なコミットメントを示すものです。

 

 「LEQEMBI」がフル承認を取得した場合には、「LEQEMBI」のラベルは改訂され、FDAによって評価された新しいデータが含まれる予定です。当社は、「LEQEMBI」のフル承認への変更に備え、追加の高質なデータが入手可能になり次第VHAと共有し、協議を継続していきます。当社は、「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念」に基づき、退役軍人の方々に貢献できることを光栄に思います。

 

 「LEQEMBI」は、可溶性(プロトフィブリル)および不溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。米国において、2023年1月6日にADの治療薬として迅速承認され、1月18日に発売されました。「LEQEMBI」による治療は、Aβ病理が確認されたADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。

 

 「LEQEMBI」の迅速承認は、ADの特徴である脳内に蓄積したAβプラークの減少効果を示した臨床第Ⅱ相試験の結果に基づくものであり、検証試験により臨床的有用性を確認することが本迅速承認の要件となっています。FDAは、Clarity AD試験結果をレカネマブの臨床的有用性の検証試験として評価することに合意しています。

 

 「LEQEMBI」について、米国において、迅速承認を受けた同日に、フル承認に向けた一部変更申請(supplemental Biologic License Application:sBLA)をFDAに提出し、2023年3月3日に受理されました。本sBLAは優先審査に指定され、PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクションデート(審査終了目標日)は2023年7月6日に設定されました。本sBLAは、大規模グローバル臨床第Ⅲ相検証試験であるClarity AD試験のデータに基づくものです。本試験において、「LEQEMBI」は主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成しました。Clarity AD試験の結果は、2022年11月に第15回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)にて発表し、同時に査読学術専門誌the New England Journal of Medicineにも掲載されました。

 

 レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

 

 * プロトフィブリルは、75-500Kdの可溶性Aβ凝集体です1

 

以上

 

  1.  
  2. <参考資料>
  3. 1.  米国退役軍人保健局(VETERANS’ HEALTH ADMINISTRATION: VHA)について

 米国退役軍人保健局は、米国最大の統合医療システムです。171のメディカルセンターと1,113の外来診療クリニックを含む1,298の医療施設で、毎年900万人の登録された退役軍人に医療を提供しています。

 

  1. 2.  レカネマブについて

 レカネマブ(一般名、米国ブランド名:「LEQEMBI™」)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。レカネマブは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合し、脳内から除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。米国において、「LEQEMBI」は、2023年1月6日に米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認を取得しました。「LEQEMBI」の適応症はアルツハイマー病(AD)の治療です。「LEQEMBI」による治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性のデータはありません。本適応症は、「LEQEMBI」で治療された当事者様で観察されたAβプラークの減少に基づき、迅速承認の下で承認されています。本迅速承認の要件として、検証試験による臨床的有用性の確認が必要となります。

 

 米国における処方情報はこちらから入手できます。

 

 米国において、2023年1月6日に臨床第III相Clarity AD検証試験のデータに基づくフル承認への変更に向けた生物製剤承認一部変更申請(supplemental Biologics License Application:sBLA)をFDAに提出し、2023年3月3日に受理されました。本申請は優先審査に指定され、PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクションデート(審査終了目標日)は2023年7月6日に設定されました。Clarity AD試験では、主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成しました。日本において、エーザイは、2023年1月16日に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に製造販売承認申請を行い、1月26日に厚生労働省より優先審査に指定されました。本申請においては、審査期間の短縮をめざし医薬品事前評価相談制度を活用しています。欧州においても、2023年1月9日に欧州医薬品庁(EMA)に販売承認申請(MAA)を提出し、1月26日に受理されました。中国においては、2022年12月に国家薬品監督管理局(NMPA)にBLAのデータ提出を開始し、2023年2月27日に優先審査に指定されました。

 

 レカネマブの皮下注射によるバイオアベイラビリティ試験は終了し、Clarity AD試験OLEにおいて皮下投与の評価が進行中です。

2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。

 また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。

 

  1. 3.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

 

  1. 4.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

 2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

  

参考文献

1 Söderberg, L., Johannesson, M., Nygren, P. et al. Lecanemab, Aducanumab, and Gantenerumab — Binding Profiles to Different Forms of Amyloid-Beta Might Explain Efficacy and Side Effects in Clinical Trials for Alzheimer’s Disease. Neurotherapeutics (2022). https://doi.org/10.1007/s13311-022-01308-6. Accessed February 9, 2023