デジタル技術の活用

創薬において鍵となるのは、高質なヒューマンデータです。世界中で日々生み出される膨大なバイオロジカルデータやコホートデータに加えて、エーザイ独自の治験データを用い、アンメット・メディカル・ニーズに対して、それらの疾患の真の原因に基づく新しい創薬仮説を構築し、最適な創薬モダリティで薬としていく。その過程で生じるデータを次の創薬に活かしていくことで最大効率を求めていく。そのような知の循環(Knowledge Circulation)が当社の創薬の強みです。

その中核となるデータサイエンス機能については内製化を志向しています。データサイエンスによる真の変革を起こすためには、データサイエンティストが専門知識(ドメイン知識)を持つ人々と日常的に深く議論し、表面的・断片的な理解に留まることなく本当に困っている課題について共感し、同じ目標に向かって努力する必要があるからです。筑波研究所にはデータサイエンティストとデータを創り出すウェット研究者が日常的に交流するクロスポイントとして「デジタルセントロメア」を設置しています(写真)。

筑波研究所の研究者が日常的に交流する「デジタルセントロメア」

同じフロアにいるバイオロジー研究員のみならず、ケミストリー研究員や薬物動態、分析研究員も同じ棟にまとまり、いつでも簡単にデータサイエンスへのアクセスができます。大きな課題の解決には長い時間がかかり、そのための議論には可能な限り全ての情報やデータを持ち寄る必要があり、緊密なコミュニケーションが不可欠です。

一日も早くお薬をお届けするために、あらゆる作業プロセスについて常に「正しさ」と「速さ」の両立が求められます。正しいデータを早く創出するために、ロボティクスを活用した自動化と高性能コンピュータによる計算能力向上への挑戦を続けています。また、AIは人間の脳の代わりとして「判断」や「創造」、「予測」といった作業を担い、しかも「学習」によってその機能を進化させていくことができる画期的な技術です。プログラミング不能な熟練者の複雑な判断基準を模したAIや、人間では到底不可能な知識量を基に適切な化合物構造を生成するAIによって、今までとは比べ物にならないスピードとアイデアで創薬の有り方が根本から変わってきています。創薬から診断、さらには疾患予測に至るまで連続的につながる難題を解決し、認知症やがん、顧みられない熱帯病に苦しむ患者様や生活者の皆様の憂慮を解消するため、さまざまな場面でAI等のデジタル技術の活用が浸透しつつあります。