サステナビリティに関するガバナンス

体制・システム

エーザイは指名委員会等設置会社であり、取締役会は業務執行の意思決定権限を執行役に大幅に委任し経営の監督に専念する一方、執行役は迅速かつ機動的な意思決定と業務執行に努めています。

長期的な企業価値の向上に資する経営課題と位置づけるサステナビリティ課題についても同様で、経営の監督と業務執行の明確な分離のもと、執行部門において社会のサステナビリティへの貢献を目指すための方針や戦略を策定し、諸施策を推進する機関としてサステナビリティ委員会を設置しています。

また、サステナビリティに関する議論に高い見地より幅広くアドバイスを得ることを目的として、国際政策に精通した外部専門家によるサステナビリティ アドバイザリーボードをCEOの諮問会議体として設置しています。

これに加えて、サステナビリティ専任部署(サステナビリティ部)を設置し、各部門が対応する個別のサステナビリティ関連課題や社外の環境を俯瞰し、全社一体となった取り組みを可能とする体制を整備しています。サステナビリティ部は、当社がサステナビリティへの重要な貢献と位置付けるグローバルヘルス領域での医薬品アクセス向上に関するイニシアチブの策定・実行も担当します。

サステナビリティ委員会

サステナビリティ委員会は、社会のサステナビリティ課題が長期的な企業価値の向上に資する経営課題であるとの認識のもと、各種施策の立案・実施に関する審議を行っています。全社事業戦略およびサステナビリティを所管する執行役が議長(共同議長)を務め、人財、総務、サプライチェーン、リスク・コンプライアンス等を管轄する執行役で構成され、多角的にサステナビリティ課題を検討し、取り組みを推進します。
サステナビリティ委員会のもとに、環境・社会のサステナビリティに関するテーマを扱う委員会である全社環境安全委員会や人権啓発推進委員会などを複数設置するとともに、社内で重要サステナビリティイニシアチブとして位置付けるグローバルHR戦略(人的資本、DE&Iなど)、環境保全(気候変動、汚染、自然資源等)、グローバルヘルスなどのテーマについて議論および意思決定しています。
サステナビリティ委員会での議論はGrowth & Operating Committeeに定期的に報告され、取締役会への報告が行われます。これに加えて社外取締役のみで構成されるhhcガバナンス委員会に対し、全社のサステナビリティアジェンダへの取り組みに関する報告を定期的に行っています。

サステナビリティ アドバイザリーボード

当社は、医薬品アクセスに関する取り組みのさらなる充実をめざし、2011年より「医薬品アクセス アドバイザリーボード」を開催し、患者様とご家族に対し持続的にソリューションを提供するために、どのような活動をすべきか、国際政策や開発の分野における有識者からの助言を得てきました。2018年よりスコープを拡大し、エーザイのサステナビリティに関わるトピックスを議論し、アドバイザーから提言・助言を受ける「サステナビリティ アドバイザリーボード」として開催しています。医薬品アクセスのさらなる強化に加え、国際社会からの要請である地球規模での人権問題や気候変動への対応、経済安全保障などについても議論し、そのアドバイスを企業価値の向上につなげることをめざしています。当社では毎年開催しています。

サステナビリティ アドバイザリーボードのメンバー

坂場 三男氏(議長)

元駐ベトナム | 元駐ベルギー大使
1973年、横浜市立大学文理学部文科を卒業後、外務省に入省。フランスでの語学研修後、インド、フランス、エジプト、米国などで勤務。外務本省では大臣官房総括審議官、中南米局長、外務報道官などを歴任し、2008年から2010年まで駐ベトナム大使を務める。2014年、駐ベルギー大使・NATO日本政府代表の任を最後に、外務省を退官。その後は、2015年から2017年に横浜市立大学特別契約教授、2017年から2021年に法務省・公安審査委員会委員を務める。現在は、MS国際コンサルティング事務所の代表職とともに、アジア文化研究フォーラム理事長、日本戦略研究フォーラム(JFSS)顧問、全国育成就労監理支援機関連絡会(ASE)相談役を務める。2024年春に瑞宝重光章を受勲。
著書に『今すぐ国際派になるためのベトナム・アジア新論』(2019年、振学出版刊)、『歴史から読み解くアジアの政治と外交』(2024年、カナリアコミュニケーションズ刊)など多数。

ウジャル・シン・バティア氏

元世界貿易機関(WTO)インド政府代表部大使|元WTO上級委員会委員長
国際経済政策、公衆衛生ガバナンス、国際貿易法における豊富な経験を活かし、エーザイのサステナビリティ・アドバイザリーボードのメンバーを務める。元インド政府世界貿易機関(WTO)大使および元WTO上級委員会委員長として、インド政府高官としてのキャリアを、地方行政から経済政策、国際貿易に至る幅広い分野で築いてきた。キャリア後半には、貿易交渉および紛争解決に注力し、国際的な場でインドを代表するとともに、国際貿易法の発展に貢献した。現在も国際貿易紛争の裁定に携わる。
サステナビリティ、公衆衛生、そして急速に変化するグローバル経済がもたらす影響に関する同氏の継続的な取り組みは、イノベーションと社会的責任の両立をめざすエーザイのミッションへの貢献に活かされている。

BT・スリングスビー氏

GHIT Fundの創設者・元CEO兼専務理事 | Catalys Pacificの創設者・マネージングディレクター
GHIT Fund(公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金)—低・中所得国に影響を及ぼす顧みられない疾病に対する新薬開発を促進する、世界初の官民パートナーシップ—を設立。CEO兼専務理事として、マラリア・結核・顧みられない熱帯病(NTDs)の創薬・開発に100件以上の投資を実行し、同基金を3億5,000万米ドル規模に成長させた。その後、日米間でライフサイエンス・イノベーションを推進するCatalys Pacific —太平洋を横断するバイオベンチャー企業— を創設。新規の治療薬、診断薬、ワクチンにわたるヘルスケア分野での投資経験が豊富。米国医学アカデミー(National Academy of Medicine)のパブリック・プライベート・パートナーシップ・フォーラムのメンバーを務め、50本以上の医学や公衆衛生分野における学術論文を執筆。東京大学大学院医学系研究科および京都大学大学院医学研究科で講義を行った。

サステナビリティ アドバイザリーボードからのメッセージ

坂場 三男氏(議長)

国連総会で「ミレニアム開発目標(MDGs)」が採択されたのは人類が21世紀を迎える直前の2000年、そしてその15年後に「持続可能な開発目標(SDGs)」という新たな文書が採択されました。MDGsは発展途上国を対象とした開発目標でしたが、SDGsは先進国を含むすべての人々を対象に、貧困や不平等の克服などを目指す17項目の目標であり、2030年までに達成することとされました。この17の目標の中には、3番目に「すべての人に健康と福祉を」という項目が盛り込まれています。2030年といえば、残すところあと数年であります。目標の達成どころか、むしろ遠ざかっているのではないかとの懸念があります。

2006年には、国連機関が「責任投資原則(PRI)」という文書を策定し、主に機関投資家を対象に、ESG(環境、社会、企業統治)の視点をその意思決定プロセスに反映するよう呼びかけました。短期的な利益追求だけではない長期的な経営指標の在り方に着目し、これを投資決定の際に考慮すべきとの原則です。2020年代までに多くの機関投資家がこの原則に賛同し、個別企業においても具体的な指標・目標を定めて企業経営方針に取り込むようになりました。しかし、ESG向上への壁は高く、最近では、短期的利益追求の立場から、この原則を批判ないし無視しようとする逆行現象もみられます。理想と現実のギャップは大きいと感じます。

21世紀において、人間社会には少子高齢化の波が押し寄せ、健康寿命の長期化が課題になっています。その一方で、多くの発展途上国では、地球規模での温暖化が進む中で新種の病気が広がり、顧みられない熱帯病の状況も深刻化しています。世界の地政学的状況も不透明で、安全保障環境の悪化が懸念されています。今、SDGs目標の達成に向けた国際環境はむしろ悪化しているように見えます。民間企業、とくに製薬企業が負っている責任と果たすべき役割はますます大きくなっていますが、克服すべきチャレンジも多くあります。世界的な人権問題しかり、経済安全保障にかかわる諸問題しかりです。叡智を絞らねばなりません。

エーザイは、「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業経営理念に掲げています。SDGsの目標に合致し、長期的視点からの企業経営を目指している点で、ESGの精神に沿ったものと評価されます。私たちサステナビリティアドバイザリーボードのメンバーもこうした方向性に賛同し、その流れをさらに加速していただけるように助言したいと思っています。メンバーそれぞれの国籍は異なり、そのキャリア、経験も多様です。私自身も外交官としてインドやエジプトなどいくつかの発展途上国に在勤し、開発協力の事業にも参画し、国連の活動にも関与した経験があります。各メンバーはいわば「部外者」ではありますが、だからこそ見える世界もあります。エーザイが直面するチャレンジに一緒に向き合い、SDGsとESGの目標を念頭に、適切な助言を行っていきます。

ウジャル・シン・バティア氏

エーザイは、人間的価値を深く尊重する姿勢を特徴とする、研究開発型のグローバル製薬企業です。同社の「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」理念は、患者様とそのご家族をあらゆる活動の中心に据えるとともに、地域社会、投資家、従業員との間に透明性と信頼に基づく関係を育んでいます。同社は、企業としての成功を財務的な成果だけでなく、社会にもたらす価値の意義によっても評価しています。

エーザイの事業戦略には、グローバルな視野と、医療較差の是正に取り組む使命感が息づいています。その一例が、医療サービスが十分に行き届いていない地域における医薬品アクセスの拡大に向けた取り組みです。特に、リンパ系フィラリア症の蔓延国における無償治療を提供するために、グローバルヘルス分野のパートナーと長年にわたって協働してきました。

サステナビリティはエーザイの取り組みの中核を成すものであり、私自身、エーザイのサステナビリティ・アドバイザリーボードのメンバーとして、この分野に貢献できることを光栄に思います。2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロの達成を目指す同社のコミットメント、そして事業活動全体で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指すRE100イニシアチブへの加盟は、単なる法令遵守に留まらず、サステナビリティを組織の中核的価値として位置づける同社の揺るぎない志を示しています。

こうした価値観はエーザイの組織全体に深く根付いており、今後の企業としての進化を支えています。イノベーションと強い社会的責任と一貫して結びつけ歩み続ける企業の姿勢を見ることは心強く、私自身、その継続的な歩みに関わることができることを大変誇りに思います。

BT・スリングスビー氏

近年、グローバルヘルスを取り巻く環境は、COVID-19パンデミック後の影響、地政学的優先事項の変化、資金環境の厳しさを背景に、大きく変化してきました。パンデミックは、イノベーションやセクターを越えた連携を加速させた一方で、医療や必須医薬品へのアクセスに依然として大きな較差が存在することを浮き彫りにしました。特に、顧みられない熱帯病(NTDs)は、低・中所得国において今なお大きな負担をもたらしており、継続的な取り組みと投資の必要性を示しています。同時に、強靭な保健医療システムを構築し、イノベーションの成果を世界中の患者様に公平に届けていくことの重要性も高まっています。

こうした状況の中、エーザイはNTDsおよび医薬品アクセスへの取り組みを通じて、グローバルヘルスの推進への強いコミットメントを示してきました。患者様を中心に据えた理念のもと、長年にわたりパートナーシップを重視した活動を継続してきたことは、同社の思慮に富み、かつ責任ある姿勢を表しています。特に、十分な医療が行き届いていない地域における必要不可欠な治療薬へのアクセスや、グローバル・ローカル双方のステークホルダーとの連携を通じて、エーザイはこの分野において信頼性と影響力を備えた企業として位置づけられています。とりわけ、医薬品アクセスの視点をより広い事業戦略の中に組み込んでいる点は、ヘルスケアにおける持続可能な価値創造が社会的ニーズと整合していなければならないという同社の考え方を表しています。

今後を見据えると、エーザイには、グローバルヘルスのエコシステム全体にわたる連携をさらに深めることで、そのリーダーシップを一層強化する機会があります。官、民、そして慈善団体等の各セクターにまたがるパートナーシップの拡大は、革新的なソリューションの開発と提供を加速するうえで重要となるでしょう。並行して、データ、デジタルツール、新たな事業運営モデルを活用することで、アクセス向上プログラムの拡張性と効率性を高めることができます。グローバルヘルスの課題がますます複雑化する中で、エーザイはイノベーションとアクセスをつなぐ重要な役割を果たすことが期待されます。これらの優先課題に引き続き注力することで、エーザイはヘルスケアのアウトカム改善と世界的な医療較差の是正に着実に貢献していくことができるでしょう。