コーポレートガバナンス体制

エーザイのコーポレートガバナンス体制

2023年7月1日現在

エーザイのコーポレートガバナンスの特長

  1. 経営の監督と業務執行の明確な分離

    当社は、指名委員会等設置会社であることを最大限に活かし、取締役会は、法令の許す範囲で業務執行の意思決定権限を執行役に大幅に委任し、経営の監督に専念しています。これにより、執行役は激しい環境変化のもとでも迅速かつ機動的な意思決定と業務執行が可能となります。また、経営の監督と業務執行を明確に分離するため、取締役会の議長を社外取締役とし、執行役を兼任する取締役を代表執行役CEO1名のみとしています。
    このように経営の監督と業務執行を明確に分離することにより、経営の活力を増大させています。
    取締役会はステークホルダーズの視点で監督機能を発揮し、経営の公正性・透明性を確保しています。
    一方で、取締役会は、会社法に基づき、「業務の適正を確保するための体制」に関する規則を決議し、執行役が整備・運用すべき内部統制を具体的に定めています。執行役は、本規則に定められた事項のみならず、自らが担当する職務において内部統制を整備・運用することにより自律性を確保し、業務執行の機動性と柔軟性を高めています。
    取締役会は、このような体制のもと、執行役の業務執行状況を確認するとともに、業務執行や意思決定のプロセスなど内部統制の状況について株主の皆様や社会の視点でその妥当性を点検しています。
    取締役および執行役のそれぞれが職務を執行し、その責任を果たしながらも相互に意思疎通をはかって信頼関係を構築し、ともに企業価値を向上させ、社会価値の創造に貢献していく、このような仕組みが当社のコーポレートガバナンスの特長です。

  2. 取締役の多様性

    当社は、取締役会が様々なステークホルダーズの期待に応え監督機能を発揮できるよう、バックグラウンドが異なる多様な取締役を選任しています。
    特に、社外取締役については、企業経営経験者、グローバルビジネス経験者、財務会計および法律の専門家をはじめとするタスク面の多様性ならびに国籍、性別、年齢等の多様性を中長期的に確保することを志向しています。

    2023年7月1日現在

    ◎:指名委員会が取締役として選任した主たる理由

  3. 機動的かつ最善の意思決定と業務執行を担う執行部門の体制

    a 執行役の選任と配置
    取締役会は、企業理念を実現し、企業価値の向上を担う執行役をグローバルな視点で選任し、執行役の機能が効果的、効率的に発揮できるように配置しています。
    執行役は、研究開発・サイエンスおよび医薬品の製造や品質ならびに安全性等の高い専門性を有する者、世界の各リージョンの医療制度や医療市場に習熟した者をはじめ、アドミニストレーションの各分野において業務に精通した者を選任しています。
    b 執行役会とアドバイザリーボード等
    当社は、業務執行の最高意思決定機関として執行役会を設置するとともに、中長期的な研究開発の方向性、ポートフォリオ戦略・戦術等を検討するエーザイ サイエンティフィック アドバイザリーボード(世界的に著名な研究機関の教授・研究者から構成)、およびESG、SDGsを中心とする非財務資本への取り組み向上について検討するサステナビリティ アドバイザリーボード(国際政策に精通した国内外の外部専門家から構成)をはじめ、CEOの意思決定をサポートする仕組みを構築しています。そのほか、取締役会からの権限委譲に基づいて、コンプライアンス委員会、リスクマネジメント委員会、全社環境安全委員会、人権啓発推進委員会等の会議体を設置しています。
    c グローバルな内部統制システムの構築と運用
    取締役会は、執行役の職務の執行の適正を確保するために必要な体制の整備に関する規則を定め、執行役は、これに基づき自らが担当する職務において内部統制システムを整備・運用しています。また、当社はグローバルに執行役を配置し、海外子会社における内部統制システムを担当執行役が直接的に構築し、その運営を行っています。
    d  説明責任とステークホルダーズを意識した経営の浸透
    3ヵ月に1度、執行役全員が取締役会に出席し、執行部門での意思決定や各執行役の業務執行の状況を取締役会に報告しています。執行役が取締役会への報告、説明責任を負うことにより、執行部門での意思決定や政策・施策の合理性や透明性が高まり、ステークホルダーズを意識した経営が浸透しています。

  4. 取締役会による経営の監督

    取締役会は執行役に業務執行の意思決定の権限を大幅に委譲しており、執行役は取締役会に適時適切な報告を行う義務を有しています。取締役会は執行役の選任および解任の権限を有しており、執行役の報告に基づき業務執行のプロセスの適正性や効率性を検証するとともに、業務執行の結果である業績を評価することにより執行役を信任し、経営の妥当性や効率性を確保することで、経営を監督する役割を果たしています。
    また、取締役会は、指名委員会、監査委員会、報酬委員会に取締役会の重要な経営の監督機能を委任しており、各委員会からの報告に基づきそれぞれの委員会の職務の執行を監督しています。さらに、取締役の一人ひとりが株主の信任に応えるべく公正に判断してその権限を行使し、適切に職務を執行しているかを監督することで、取締役会の公正性と透明性を確保しています。

  5. 社外取締役を中心としたコーポレートガバナンス充実に向けた継続的、自律的な仕組み
    当社のコーポレートガバナンスの実効性を支えるのは、取締役会の過半数を占める独立社外取締役の存在です。当社では、①指名委員会における独立性・中立性のある社外取締役の選任システム、②社外取締役である取締役会の議長のリーダーシップによる取締役会等の運営、③ステークホルダーズとの対話やサクセッションプランの検討など、幅広くコーポレートガバナンスに関する議論が行われるhhc ガバナンス委員会、④取締役会および各委員会のPDCA(Plan-Do-Check-Action)を回すコーポレートガバナンス評価など、社外取締役を中心とした、継続的かつ自律的なコーポレートガバナンス充実の仕組みを構築し、これを運用しています。また、各取り組みの内容については、持続的にその充実をはかるよう努めています。

2022年度のコーポレートガバナンスに関する取り組み

      1. hhcガバナンス委員会の活動状況

        a)ステークホルダーズとの対話
        hhcガバナンス委員会では、年に一度、実施したステークホルダーズとの対話の実施を振り返り、次年度に向けた対応事項や実施に向けた検討事項等を審議の上確認しています。2022年度は以下の取り組みを実施しました。
        ・がんサバイバーの方との対話の実施
        ・機関投資家等(約60名)と社外取締役との意見交換会(ラージミーティング)の開催、個別の機関投資家と社外取締役との対話の実施
        ・労働組合代表メンバーと社外取締役との情報共有とディスカッションの実施
        ・工場および研究所へ訪問し、若手・中堅社員と社外取締役との情報共有とディスカッションの実施
        b)CEOサクセッション
        ・サクセッションプランの情報共有と検討(2回実施)
        c)取締役会の実効性評価
        ・コーポレートガバナンス評価(コーポレートガバナンスプリンシプルと内部統制関連規則の自己レビューと取締役一人ひとりが評価する取締役会評価)の実施
        d)hhcガバナンス委員会の効率的な運営の検討と実施
        開催頻度、所要時間も増加している当委員会の運営について、より重要な審議に十分な時間を確保するため、効率的な運営の検討を行いました。具体的には以下の対応を実施しました。
        ・重要な審議事項(CEOサクセッションプラン、取締役会の実効性評価、ステークホルダーズとの対話の振り返り等)に十分な時間を確保
        ・ESG等のサステナビリティへの取り組み状況の点検を行うサブコミッティを設置し、関連する執行役との情報共有とディスカッションを実施
        ・取締役会における議論を深めるために必要な各種情報の共有について、オンデマンドでも録音・録画・資料へのキャッチアップを可能にするなどのサービスを充実
        e)その他
        ・取締役会およびhhcガバナンス委員会の議題の選定
        ・テーマを定めないフリーディスカッションの実施
        ・指名委員会における諸課題(取締役候補者選任の基本的な考え方の検討、上場企業の取締役選任をはじめとする役員関連調査結果等)の情報共有とディスカッション
        ・報酬委員会における諸課題(執行役報酬制度の改定等)の情報共有とディスカッション
        ・執行部門による各種テーマに関する情報共有(中長期的な事業展望、社員の人事制度等の施策、アクティビズムの動向や機関投資家の議決権行使等に関する情報、製造委託先における品質管理の取り組み等)
        ・外部講師を招きコーポレートガバナンスに関する最新テーマ(ベネフィット・コーポレーション)に関する情報共有とディスカッションの実施

      2. ステークホルダーズとの対話
        2022年度は、当社の主要なステークホルダーズである患者様と生活者の皆様、株主・機関投資家の皆様および社員との対話を以下のとおり行いました。また、年度末に開催したhhcガバナンス委員会では、こうした対話を振り返り、対話の結果を取締役会の監督機能に活かすべく議論を行いました。
          
        a)患者様との対話

        ・がんサバイバーの方にリアルな闘病体験やその中から得られた想いを具体的に伺うとともに、対話を通じて、がんという病による身体と心に受ける大きな影響を知り、当社の社会的使命をあらためて強く認識しました。この対話を通じて、患者様の喜怒哀楽に共感する重要性や、企業理念であるhhcとその実践への理解を深めました。
        b)機関投資家の皆様との対話
        ・約60名の機関投資家等との意見交換会をウェブ会議システムで開催し、2時間にわたる質疑応答、ディスカッションを実施しました。
        ・機関投資家との個別対話をウェブ会議システムまたは対面で行い、8社のべ12回の情報共有と意見交換を行いました。
        ・機関投資家の皆様との対話では、様々な観点から踏み込んだ意見交換ができ、対話で得た指摘や知見は取締役会における議論や経営の監督に活かしています。
        c)社員との対話
        ・3回目となる社員の代表である労働組合の代表メンバーとの対話の会を初めて対面で開催し、「報酬(賃金)・人財投資について」、「社員、働き方、健康に関する施策と人事制度の強化・補強について」等について情報共有と意見交換を行いました。
        ・筑波研究所を訪問し、施設内の見学および新たな研究開発体制DHBL(Deep Human Biology Learning)について説明を受け、創薬概念および組織体制について理解を深めました。また、創薬仮説の構築から承認までの創薬の実行に責任を持つドメインヘッドや若手組織長との対話の場において、各取締役から組織や社員への期待のコメント、経験に基づくアドバイスがなされ、活発なディスカッションを行いました。
        ・川島工園を訪問し、川島工園や製剤研究部の概要、また、品質技術室、製剤研究部から最近のトピックスについて説明を受け、質疑応答、意見交換を行い、くすり博物館、製剤・包装工程を見学するとともに、最新の注射剤棟/研究棟EMITS (Eisai Medicine Innovation Technology Solutions)を見学し、当社の生産環境および生産体制への理解を深めました。
        ・取締役三和裕美子がエーザイ・ジャパン(国内医薬品事業)の女性社員(中堅、若手)との懇話会に参加し、中堅社員と環境・風土、制度、働き方について、若手社員とは仕事と家庭の両立、キャリア、マインド(価値観)をテーマに、活発に意見交換を行いました。

        がんサバイバーの方との対話
      3. サクセッションプランの情報共有とディスカッション
        • a)
          経営トップ(CEO)選定の考え方
          当社は、経営トップ(CEO)の選定を、取締役会の最も枢要な意思決定事項のひとつと位置付けています。CEOは、自ら強いリーダーシップを発揮して次期CEOを育成することを責務とし、社外取締役がこれを認識の上で助言等を行うなど、そのプロセスに関与することで、CEOによる後継候補者提案の客観性が高まり、取締役会として、CEO選定の公正性を合理的に確保できると考えています。
        • b)
          CEO選定に係る手続き
          CEOのサクセッションに関しては、2004年に指名委員会等設置会社に移行後も、常に最良のコーポレートガバナンス体制のもとで、議論が積み重ねられていましたが、2016年度、社外取締役ミーティング(現hhcガバナンス委員会)において、それまでの経緯を踏まえた上で、CEOの策定するサクセッションプランに関する取締役会での情報共有等のあり方や、突発的事態への備えについて議論がなされ、その手続き等をルールとして定めました。その概要は以下のとおりです。
          (1)サクセッションプランの情報共有
          ① CEOにより提案されるサクセッションプランの情報共有は、hhcガバナンス委員会において、年2回実施する。
          ② このhhcガバナンス委員会には、CEOをはじめ社内取締役も参加し、取締役全員でサクセッションプランの情報共有を行う。
          (2)サクセッションプランのディスカッション
          ①候補者を評価するための基準(クライテリア)は、経営環境等に応じて変化することが想定される。このため、CEOが候補者を提案する時点においてこれを適切に設定する。
          ② CEOは、これに基づいて候補者を評価し、サクセッションプランにおいてその評価結果を示す。
          ③ 取締役は、サクセッションプランに関する助言を行い、CEOは取締役からの助言を考慮し、適宜、サクセッションプランに反映させる。
        • c)
          突発的事態に対する備え
          不慮の事故などにより、急遽、取締役会として新たなCEOを選定しなければならない事態も想定されます。このような突発的事態に対する備えについても、上記サクセッションプランの検討の中で確認されています。
                 
      4. hhcガバナンス委員会の効率的な運営の検討と実施

        当社のコーポレートガバナンス向上に向けて、hhcガバナンス委員会の役割がますます大きくなるとともに、取り扱うテーマ数、開催頻度、所要時間も増加し、社外取締役の活動範囲も年々拡大しています。このため、当委員会の運営について、より重要な審議に十分な時間を確保するため、効率的な運営の検討を行いました。

        a) 重要事項の審議時間を十分に確保
        経営環境の変化に伴い、社外取締役には緊密な意思疎通のもと、全員出席による重要事項を審議する機会が増加するとともに、いかに充実した審議時間を確保するかが課題となります。hhcガバナンス委員会をより効率的に運営するために、まずは審議時間を十分に確保することを第一優先に検討しました。

        b) サステナビリティへの取り組み状況の点検を行うサブコミッティの設置
        サステナビリティへの取り組みは経営の重要課題であり、企業価値に影響を及ぼすリスクのひとつでもあることから、取締役会はESGに関する定期的な報告に加え、個別のテーマについても担当執行役から報告を受け、モニタリングを行っています。取締役会でのサステナビリティに関する議論を充実させるため、hhcガバナンス委員会はサステナビリティへの取り組み状況の点検を行うサブコミッティを設置しました。
         
        本サブコミッティでは、運営を委任された委員が中心となり、以下のテーマについて情報共有とディスカッションを行いました。
        (1) TCFDへの開示方針および課題と開示充実の方向性
          *Task Force on Climate-related Financial Disclosures
        (2) 地球環境に配慮した事業活動(水セキュリティレポートの評価結果、環境マネジメント推進体制、CO2削減状況(スコープ1,2,3)、インターナルカーボンプライシングの導入と運用などの対応状況等)
        (3) サステナビリティ全般の開示(CSRD*1、DJSI*2、ATM*3インデックス、人権・サステナビリティ調達等)に関する報告
          *1 Corporate Sustainability Reporting Directive
          *2 The Dow Jones Sustainability Indices
          *3 Access to Medicine
        (4) 女性活躍推進に関する報告
          サブコミッティでの検討状況は、速やかにhhcガバナンス委員会に報告されました。

        • c)
          取締役会での議論を深めるための情報共有の工夫
          2022年度の取締役会およびhhcガバナンス委員会の議題の選定にあたり、テーマを3点(①全員参加のもと議論、②サブコミッティでの対応、③議論を深めるための必要情報)に区分、整理するとともに、③については情報共有の方法についても検討しました。
          その結果、価値創造レポートの意見交換会、サブコミッティ、新任社外取締役研修会などについて、新たにオンデマンドで後日でも録音、録画、資料を確認できるようにし、情報共有の利便性の向上に努めました。
      5. その他各種研修会等の実施

        当社の事業活動や経営環境への理解をより深め、取締役会における議論の充実、監督機能の発揮を企図し、様々な研修会や執行部門(執行役や社員等)との交流の場を企画・実施しています。

        a) 社外取締役を対象とする研修会
        ・新任の社外取締役については、就任前に、会社概要、企業理念、経営状況、コーポレートガバナンスに関する事項および各種役員関連規程等の説明を実施しました。
        ・就任後は、当社への理解を深めることを目的に、事業活動、医薬品業界の動向、経営環境、hhc活動の具体例等について、担当執行役や組織長等による説明会(のべ17回)を実施しました。この研修会には情報のアップデートを目的に、新任以外の取締役も任意で参加しました。
        ・外部講師によるベネフィット・コーポレーションについて情報共有とディスカッションを実施しました。
        ・社内取締役および執行役を対象とするコンプライアンス研修を実施し、社外取締役も任意で参加しました。

        b) 執行役とのコミュニケーション
        ・新任社外取締役研修は対面での説明を基本とし、執行役が個別に担当職務について説明の上、当社の事業内容や活動について情報共有を行うとともに活発にディスカッションを行いました。
        ・これらの研修は、対面に加え、ウェブ会議も活用し、新任以外の社外取締役も任意で参加しました。また、執行役の説明、質疑応答の様子を録画することで、取締役がオンデマンドで視聴できる仕組みにしています。
        ・ 中国リージョン担当の執行役および現地のトップマネジメントチームが来日し、政府集中購買などリージョンが抱えているリスクなどについて情報共有とディスカッションを行いました。
        ・ 取締役リチャード・ソーンリーが英国ハットフィールドにあるエーザイ・ヨーロッパ・リ
        ミテッドを訪問し、施設を見学するとともにEMEAリージョン担当執行役との対話を行いました。

      6. コーポレートガバナンス評価の実施
        hhcガバナンス委員会では、毎年、取締役会の経営の監督機能の実効性を評価し、運営等の課題を抽出するとともに、取締役会および執行部門に改善の要請や提案を行っています。コーポレートガバナンス評価では、前年度の課題認識等に基づき、取締役会等の活動状況を点検・評価し、次年度に向けた課題抽出および改善策等を示すことでPDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルを回しています。

        2022年度コーポレートガバナンス評価結果

        コーポレートガバナンスプリンシプルおよび内部統制関連規則については、規定を逸脱した運用等は認められず、取締役および執行役等がコーポレートガバナンスの充実に向け、適切に職務を執行していることを確認しました。
        取締役会評価については、2021年度取締役会評価で抽出された2022年度の課題に対し、2022年度における対応状況を確認、評価し、次年度に向けた課題等を認識しました。