オープンイノベーション

アルツハイマー病治療法創出に向けたオープンイノベーションの推進

当社は、認知症のリーディングカンパニーとして、アリセプトおよびLEQEMBIを創出し、アルツハイマー病(AD)の治療法を切り開く最前線に常に立っています。
AD創薬は現在の世界的ムーンショット(イノベーションの創出を目指す、従来技術の延長にない、大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発)プロジェクトの1つであると言われ、さまざまな分野の科学者が相互信頼を育み、目標を共有しながら、専門知識、アイデア、技術などの総合力を結集することによって成し遂げられると考えています。当社のオープンイノベーションエコシステムは、このコンセプトを実現するために構築されており、薬物療法および非薬物療法を通じた認知症の予測、予防、治療、ケアのための包括的なソリューションの創出を目指しています。

関心のある分野

アミロイドβやタウに続くADおよび幅広い認知症の治療薬開発を目指しており、以下の分野でユニークなアイデアや研究プログラムを持つ科学者からの提案を求めています。

  1. Neuro-Glia-Vascular Unitの調整

    神経細胞、グリア細胞、脳血管の相互作用を調整し、ADやパーキンソン病(PD)など神経変性疾患の進行抑制や治癒を可能とするもの

  2. 移植によらない神経再生

    中枢神経の新生を促進し、脳機能の賦活化を可能とするアイデアやプログラム

  3. 脳・細胞特異的薬物送達

    抗体や核酸、その他の治療モダリティを脳内に送達することを可能とするアイデアやプログラム、または低分子医薬品を含めた治療モダリティを中枢神経系の特定細胞に狙って送達することを可能とするアイデアやプログラム

  4. 神経変性疾患の新規な体液バイオマーカー

    レビー小体型認知症、PDに伴う認知症、前頭側頭葉変性症など、AD以外の神経変性疾患に関する新規の血液、脳脊髄液、または他の体液中バイオマーカー

  5. シナプス結合を強化する脳刺激技術

    非薬物療法を含め、脳を刺激することでシナプス形成を促進し、神経細回路を増強させることで脳機能の回復を可能とするアイデアやプログラム

オープンイノベーションの実績

信頼、長期的な取り組み、共同作業、共通の目標という原則のもと、私たちは複数の大学や企業とパートナーシップを築いてきました。以下にコラボレーションの一部をご紹介します。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン (UCL)

当社は、1990年にUCLと共同研究契約を締結し、1993年に設立したUCL内エーザイロンドン研究所において脳神経系の基礎研究を進めてきました。2012年からはUCLに蓄積された広範な知識を活用し、神経変性疾患に対する革新的な医薬品の創出を目的とした共同研究に発展させました。現在、抗MTBRタウモノクローナル抗体であるE2814の臨床第II相試験が進行中です。

慶應義塾大学

2017年より慶應義塾大学と連携しています。本共同研究では、慶應義塾大学が有するコホート研究の詳細な分析を通じて、ADの新規薬物標的の発見に焦点を当てています。

セントルイス・ワシントン大学

本共同研究は、セントルイス・ワシントン大学で利用可能な最先端の技術を利用して、神経変性疾患の新しいコンセプトを確立することを目的として、2022年に開始しました。

NEURii

2023年に、エジンバラ大学、LifeArc、Health Data Research UK、Gates Venturesと協力し、共同研究「NEURii」を開始しました。英国に蓄積された膨大な医療健康データを活用して、認知症のデジタル診断・治療法を開発することを目標にしています。

BioArctic AB

2005年以来、レカネマブの創薬に焦点を当て、BioArctic ABとの共同研究を続けています。両社の強みを活かしたコラボレーションの結果、レカネマブは、2023年にアルツハイマー病治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)よりフル承認を取得しました。

シスメックス株式会社

2016年からADの血液ベースの診断検査の開発を目的としてシスメックスと提携しています。共同の取り組みにより、2022年に体外診断薬(IVD)の承認を取得することに成功しました。この成果は、当事者にやさしいAD診断ツールの普及における重要なマイルストンになります。

これらの志を同じくする研究機関や企業と協力することで、神経変性疾患の包括的理解と創薬力の向上を常に目指しています。

リーダーシップ

木村 禎治

木村 禎治

エーザイ株式会社 上席執行役員 Deep Human Biology Learning (DHBL)オフィス アカデミア・インダストリーオフィサー

2022年10月からエーザイ株式会社DHBLオフィス アカデミア・インダストリアライアンスオフィサーを務め、プレシジョンメディシン具現化のための診断薬企業との提携、デジタル治療を含む創薬パイプライン充実を指向した外部知の取り組みを進めています。
1987年にエーザイの化学系研究者としてキャリアをスタートしました。以降、複数の中枢神経系創薬プロジェクトに携わり、アルツハイマー病疾患修飾型薬剤を始め中枢神経疾患における複数の候補化合物の創出に貢献しました。2007年に創薬第一研究所化学系統括課長に就任し、医薬品化学研究をリードし、アルツハイマー病の疾患修飾型薬剤や不眠症治療薬を創出しました。
2010年にニューロサイエンス創薬ユニット グローバル探索研究部長に就任し、2013年にはニューロサイエンス&ジェネラルメディスン創薬ユニット デピュティプレジデント兼グローバル探索研究部長として、特にアルツハイマー病、てんかん、睡眠領域の神経科学に焦点を当てたグローバルの中枢神経系創薬業務を担当しました。この間、多面的な切り口からのレカネマブを代表とするアルツハイマー病疾患修飾剤の創製や、抗てんかん薬ペランパネルの効能拡大や不眠症治療薬レンボレキサントの創製を行い、エーザイの中枢神経領域のポートフォリオの拡大に貢献しました。2016年から6年間ニューロロジービジネスグループ チーフディスカバリーオフィサーとして、中枢神経疾患研究を行っているグローバル4拠点におけるすべての創薬活動を統括しました。
学歴は、1985年に京都大学薬学部薬学科を卒業、1987年には京都大学薬学研究科修士課程を修了しました。さらに、1993年に京都大学大学院薬学研究科にて博士学位(Ph.D.)を取得しました。また、1995年から2年間米国スクリプス研究所にて客員研究員を務めました。

水井 佳治

水井 佳治

エーザイ株式会社 執行役員 DHBLオフィス コラボレーション&インキュベーション部長、Eisai Innovation, Inc.社長

2022年10月よりエーザイ株式会社のDHBLオフィスのコラボレーション&インキュベーションの責任者を務めており、科学とビジネスをコラボレーションあるいはインキュベートする外部パートナーを見つけることに率先して取り組んでいます。最終的には技術や資産をエーザイに取り込むことを目指しています。
1990年にエーザイの循環器疾患部門で生物学者としてのキャリアをスタートしました。その後、複数の創薬プロジェクトに貢献し、複数の疾患治療領域に新しい標的とモジュレーターを提供する生物学の取り組みを主導しました。2008年に、次世代ユニットの革新的生物学責任者に昇進し、腫瘍学および神経学の初期創薬に貢献しました。
2011年に新たながんゲノムカンパニーH3 Biomedicine Inc.を設立するため米国ケンブリッジに赴任し、がん領域の創薬を主導しました。2016年にオンコロジー ビジネス グループの 事業開発のグローバル責任者に任命され、複数の取引に貢献しました。2019年にケンブリッジにEisai Innovation, Inc.を設立し、社長に就任しました。グローバルでバイオテクノロジースタートアップへの投資を開始しています。
学歴は、1988年に九州大学農学部農芸化学科を卒業、1990年には九州大学農学研究科修士過程を終了しました。さらに、2002年に九州大学大学院農学研究科にて博士学位(Ph.D.)を取得しました。

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