生物多様性保全

方針・基本的な考え

エーザイグループは、グローバルに展開するヘルスケア企業として「エーザイ・ネットワーク企業(ENW)環境方針」を定め、地球環境の保全を重視した企業活動を展開しています。環境行動指針に「6. 生物多様性の保全に配慮した事業活動を展開し、自然共生社会の実現に貢献します。」と明記し、生物多様性保全の取り組みをグローバルに推進しています。

エーザイグループは、天然資源など生物多様性のもたらす恵みを利用して事業活動を行っています。自社創製の抗がん剤「ハラヴェン」は天然物のクロイソカイメンに由来するなど、生物多様性の保全は持続的に事業活動を行う上で重要な課題となっています。そのため、2020年8月に制定した「生物多様性指針」では、すべての従業員が生物多様性の重要性を認識し、生物多様性に関する社会的責任を果たすことを目的に、エーザイグループとして取り組む基本理念および基本方針を定めています。

生物多様性指針

基本理念

エーザイグループは、生物多様性により生み出される自然の恵みに感謝し、生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用に努めます。事業活動における生物多様性への影響に配慮し、地球環境との調和に基づく自然共生社会の実現に貢献します。

基本方針

  1. 事業活動による生物多様性への影響についてグループ企業はもとより、サプライチェーン全体で把握するよう努め、生物多様性の保全を重視した企業経営を行います。
  2. 温室効果ガス排出抑制や化学物質排出に伴う環境汚染防止、廃棄物の適正処理および資源の有効活用を積極的に推進し、生物多様性に悪影響を及ぼす環境負荷の低減に努めます。
  3. 遺伝資源を含めた生物資源の公正利用など国際的な法令や取り決めを遵守した事業活動を展開し、その持続可能な利用に努めます。
  4. 生物多様性の保全に関する社員の意識向上に努め、国内外ステークホルダーズとの連携・協調による生物多様性を育む社会作りに貢献します。
  5. 生物多様性の保全に関する会社情報を積極的に開示します。

目標・アクション

生物多様性関係性マップ

2022年12月カナダ・モントリオールにおいて、生物多様性条約締約国会議COP15)が開催されました。2030年までに陸・海域の30%以上を健全な生態系として保全する「30by30目標」が採択され、ビジネスにおける生物多様性への影響把握と保全活動の促進がいっそう求められています。
2022年度、事業活動がどのように生物多様性に依存し、影響を与えているかを把握するため、一般社団法人 企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)が開発した「企業と生物多様性の関係性マップ®」を参考に事業活動と生物多様性の関係を整理しました(下図)。その結果、現時点では生物多様性に与えるリスクはないものの、中長期的なリスクとして以下の2点を特定しました。

  1. 操業地における水域・大気等への有害物質排出による、近隣地域の生物多様性への影響
  2. 製品の使用により排出される廃棄物の環境全体への影響(例:海洋プラスチック問題)

生物多様性中期目標の設定

エーザイグループは、生物多様性保全活動を推進するため、従来の取り組みに加え、以下に示す中期目標を新たに設定しました。事業活動に基づく生物多様性への影響を継続的に把握し新たな活動に取り組んでいきます。

  • 2025年

    主要な事業所で操業地の近隣における重要な種を1つ以上特定し、保全活動に着手する。(主要13事業所中10事業所以上)

  • 2030年
    ①主要な事業所すべてで操業地における重要な種の保存活動が開始され、7事業所以上の場所でその種が保存・維持されている
    ②製品パッケージ等への環境に配慮した素材の導入(複数品目への導入)

*主要な事業所は以下の通りです
川島工場、筑波研究所、鹿島事業所、神戸研究所、EAファーマ株式会社福島事業所、蘇州工場(中国)、本渓工場(中国)、ボゴール工場(インドネシア)、バイザッグサイト(インド)、欧州ナレッジセンター(英国)、エクストンサイト(米国)、ボルチモア工場(米国)、G2D2(米国)

体制・システム

エーザイグループでは、取締役会の監督の下、環境安全担当執行役が委員長を務める全社環境安全委員会を設置し、環境保全に関連した重要事項の審議・決定を行っています。温室効果ガスの排出削減や資源の有効利用などグローバルな活動を推進するとともに、国内外における環境リスクの把握やその対策の確立に向けた活動強化に取り組んでいます。本委員会で審議された内容のうち、全社に関わる重要な環境課題については、業務執行部門の最高意思決定機関である執行役会に報告、議論、決議され、実行に移されます。また、全社環境安全委員会で決議された事項については、国内ENW環境安全協議会およびグローバルエーザイカーボンニュートラル情報交換会において、国内外のグループ企業と情報共有し、連携して取り組んでいます。

エーザイグループ各事業所では、独自の環境マネジメント体制を構築し、環境活動を推進しています。国内主要生産拠点および蘇州工場(中国)、バイザッグサイト(インド)では、ISO14001取得に基づく活動を行っており、環境教育、環境リスク対応を目的とした教育訓練の実施など、意識面からの向上を図っています。さらに、環境関連法や条例・協定の遵守はもとより、内部監査専門組織による定期的な環境関連監査により、課題の発見・解決に努めています。

環境マネジメント推進体制

ISO14001認証取得事業所

  • エーザイ株式会社 川島工場、鹿島事業所
  • EAファーマ株式会社 福島事業所
  • 衛材(中国)薬業有限公司 蘇州工場
  • エーザイファーマシューティカルズインディア, Pvt. Ltd. バイザッグサイト

具体的な取り組み

PTP(press through pack)シート端材のリサイクル

医薬品の包装においては、主にプラスチックとアルミからなるPTPシート(右図)を利用することがあります。このPTPシートを作成する過程において、端材等のプラスチックごみが排出されます。これまで、当社の川島工場では、このプラスチックごみに関して、主に焼却処分による熱リサイクル(焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用するリサイクル手法)を行ってきました。
当社は、2024年4月より、川島工場の所在地である各務原市の取り組みに賛同し、「かかみがはらSDGsパートナー」の登録企業となりました。パートナー企業として、他のSDGsパートナー参加企業等と連携し、PTPシート端材をリサイクルできる仕組みを構築して、焼却によるCO2の排出量を削減するとともに、リサイクルされたプラスチック用品等を各務原市内に普及させ、循環社会の形成に取り組んでいきます。

PTPシート

イメージ図

植樹

川島工場では、1966年3月に操業を開始して以来、「All for Patients and Nature」のコンセプトのもと、事業所内の自然環境の保全に努めています。総敷地面積約47万㎡のうち、緑化率は約50%であり、クロマツを含む約30,000本の樹木を維持・管理しています。敷地内にある内藤記念くすり博物館の薬草園では、約700種の薬用および有用植物を栽培・管理しており、中でも環境省レッドリストに指定されている絶滅危惧種(準絶滅危惧種含む)のうち全38種の保護に取り組んでいます。2022年度はこの内の5種を増殖しました。

また、鹿島事業所では、は計画的な植栽管理を行うとともに、敷地内の樹木を増やすための植樹を進めています。バイザッグサイト(インド)では、環境啓発促進のための植林プログラムを継続的に実施しており、2022年度は事業所内に新たに2,000本の植樹を行いました。

薬草園にて保護している絶滅危惧種の一部
(左:ゴマノハグサ 右:コトウカンアオイ)

植林の様子(左:鹿島事業所 右:バイザッグサイト)