新たなマテリアリティの特定
エーザイでは、企業理念の実現による中長期的な企業価値の最大化に向けて優先的に取り組む課題を明示するため、統合報告書2016よりマテリアリティを開示してきました。改善を重ねてきたマテリアリティは、社外のステークホルダーズの皆様から一定の評価をいただいていましたが、2022年6月に変更された定款に基づき、社会善を効率的に実現するために改めてマテリアリティを特定しました。
横軸は、従来の「エーザイの事業へのインパクト」から「エーザイの本源的企業価値(社会的インパクト+財務的価値)」に変更しました。社会善の効率的な実現に取り組むことで社会的インパクトを創出するとともに、財務的価値を得ることが重要であるととらえ、その考え方を新たなマテリアリティに反映しました。加えて、縦軸は、従来の「長期投資家にとっての関心」から「ステークホルダーズにとっての関心」に名称変更しました。本マテリアリティは、患者様とご家族、株主の皆様、社員などのすべてのステークホルダーズの皆様の長期の利益を創出することを目的としております。また、すべてのステークホルダーズの皆様の満足を企図して持続的に企業価値を最大化するためには、残余利益の受益者としての長期投資家にフォーカスすることが効率的であるという考え方*1に基づき、長期投資家の関心事を中心に特定し、優先的に取り組むという手法をとっております。これらの目的と手法は、従来から変更はございません。一方で、本マテリアリティは、長期投資家の利益のみならず、幅広いステークホルダーズの皆様の長期の利益を創出することを目的としていることを正しくご理解いただけるよう、縦軸の名称を変更しました。
上記2軸の考えに則り、15個のマテリアリティを特定しました。そのなかでも、ポジティブな社会的インパクトやPBRとの相関関係が確認され、かつ長期投資家を中心としたステークホルダーズにとっての関心が非常に高い5項目は、取り組みを加速することで当社の本源的価値を高めることができる特に重要なマテリアリティと位置づけ、2030年度を見据えた長期目標とKPI、リスクを設定しました。新たなマテリアリティおよび長期目標・KPI・リスクは、執行役会での審議・承認、取締役会での確認により決定しました。今後はその進捗に関するレビューを実施し、PDCAサイクルを回すことにより、確実な推進をめざします。なお、ビジネス環境や社会課題の変化を鑑み、毎年マテリアリティ分析を行います。アクションプランに沿った取り組みの進捗もレビューし、必要に応じマテリアリティやKPIを更新します。
*1 Value Maximization, Stakeholder Theory, and the Corporate Objective Function(Michael C. Jensen, 2001)
社会善を効率的に実現するための新たなマテリアリティの特定プロセス
hhcエコシステムを通して社会善を効率的に実現するためのマテリアリティ
1.認知症領域における社会善の実現 長期目標・KPI・リスク
※左右にスクロールできます
最終目標 | 人々の健常状態から高リスク、発症・治療、経過観察・予後までの全行程を支え、包み込む 認知症エコシステムを構築し、そのプロデューサーの役割を果たす
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2030年度目標とKPI |
アルツハイマー病(AD)になっても安心して暮らせる世界の実現
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2025年度目標とKPI |
LEQEMBIの早期実用化と価値最大化 • 5リージョン全てで承認ならびに保険償還を早期に実現し
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主なリスク |
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2.がん領域における社会善の実現 長期目標・KPI・リスク
※左右にスクロールできます
最終目標 | 革新的治療法の創出とアクセスの拡大による難治性がんの治癒ならびにがん発症の予測モデルに基く予防の実現
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2030年度目標とKPI |
レンビマに続く新規プロジェクトによる難治性がん患者様への貢献
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2025年度目標とKPI |
レンビマの価値最大化 • キイトルーダの併用療法で新たに6がん種8適応の取得をめざす
(非小細胞肺がん 1L*1・2L*2、子宮内膜がん1L、頭頚部がん1L・2L、肝細胞がん 1L TACE併用、食道がん1L、胃がん1L) • グローバルで年間約16万人*3に貢献し、年間製品売上5,000億円レベル*4をめざす |
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主なリスク |
• レンビマの新適応の開発、あるいは新規プロジェクトの開発計画が中止あるいは遅延し、期待していた収益が得られないリスク
• パートナーとの意見の相違が発生し、研究開発・生産・販売活動に遅延や非効率が生じるリスク
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*1 ファーストライン *2 セカンドライン *3 2022年度:約9万人 *4 成功確率調整前
3.グローバルヘルス領域における社会善の実現 長期目標・KPI・リスク
※左右にスクロールできます
最終目標 | 治療薬創出とアクセス拡大による制圧の実現、および医療較差是正への貢献
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2030年度目標とKPI |
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2025年度目標とKPI |
• LF - インドでのDEC錠無償提供や包括的取り組みによる制圧活動支援拡大・強化、他24カ国*2でMDA完了
- DEC錠の恩恵を約2,900万人が受け、約2,600億円/年の社会的インパクト創出
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主なリスク |
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*1 2023年3月末現在、21.3億錠を29カ国に提供 *2 2030年までのWHOのLF制圧目標に基づく
4.人財の価値最大化 長期目標・KPI・リスク
※左右にスクロールできます
最終目標 | 多様な人財の強みや特性の最大化がもたらすソリューションとイノベーションによる企業価値の増大
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2030年度目標とKPI |
hhc理念の浸透
社員のエンゲージメントの向上
• グローバルエンゲージメントサーベイでの高エンゲージメントの社員割合:90%以上 (2022年度実績:85%) 多様性確保に向けた女性活躍の推進
• エーザイ株式会社(日本)*1 女性経営職比率 30%(2022年度末実績:11.9%) 従業員インパクト 人財投資効率 87%
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2025年度目標とKPI |
hhc理念の浸透
社員のエンゲージメントの向上
• グローバルエンゲージメントサーベイでの高エンゲージメントの社員割合:90%以上 (2022年度実績:85%) 多様性確保に向けた女性活躍の推進
• エーザイ株式会社(日本)*1 女性経営職比率 15%(2022年度末実績:11.9%) 従業員インパクト 人財投資効率 82%
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主なリスク |
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*1 国内のグループ企業を除く
5.財務戦略 長期目標・KPI・リスク
※左右にスクロールできます
最終目標 | 中長期的な本源的企業価値(社会的インパクト+財務的価値)の最大化
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2030年度目標とKPI |
急成長の中で本源的企業価値(社会的インパクト+財務的価値)を最大化 • Impact on Equity 2倍レベル*1 • ROE 25%レベル、DOE 15%レベル
財務の堅牢性を高め、成長投資余力を確保
• 親会社所有者持分 1兆円超、親会社所有者持分比率 70%レベル、Net DER -0.3~0.3 |
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2025年度目標とKPI |
• LEQEMBIとDEC錠の拡大により、本源的企業価値(社会的インパクト+財務的価値)を拡大
Impact on Equity 0.65倍レベル*2 • 財務の健全性を確保しつつ最適資本構成を追求
親会社所有者帰属持分比率 60%レベル、Net DER −0.3~0.3、格付シングルAレベル • 安定配当と成長投資の両立
原則として複数年レベルでフリー・キャッシュ・フローの範囲内での配当を志向し、160円配当を維持 |
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主なリスク |
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*1 2030年度目標:社会的インパクト 約2兆円(米国 LEQEMBI 約1.7兆円、DEC錠 約2,800億円)/親会社所有者持分 1兆円超
*2 2025年度目標:社会的インパクト 約5,300億円(米国 LEQEMBI 約2,700億円、DEC錠 約2,600億円)/親会社所有者持分 約8,200億円