ドイツにおいて公的医療保険中央連合会との合意に基づき抗てんかん剤「Fycompa®」の販売を12月に再開

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、ドイツ医薬品販売会社であるEisai GmbH(所在地:フランクフルト)が、抗てんかん剤「Fycompa®」(一般名:ペランパネル、日本製品名「フィコンパ®」)について、公的医療保険中央連合会(GKV-Spitzenverband)と償還価格に関して合意し、2017年12月1日よりドイツでの「Fycompa」の販売を再開することをお知らせします。

当社は、販売承認後のドイツ連邦合同委員会(G-BA)による保険償還に向けた追加有用性評価において、本剤の有用性ならびに革新性が適切に認められなかったことを受け、2013年からドイツでの本剤の販売を一時中断するとともに、ドイツの患者様が継続的に治療を受けられるよう、2016年3月まで無償の患者様支援プログラムにより本剤を提供してきました。2016年4月以降は、代替手段として並行輸入スキームにより本剤が供給されています。

その後、追加有用性評価制度の一部改正に基づき、2014年5月に追加有用性再評価の申請をG-BAに対して行ったものの、同年11月にG-BAは改めて追加有用性が証明できない旨の決定を行いました。2017年5月にさらなる制度改正がなされ、公的医療保険中央連合会との償還価格交渉が可能となり、このたびの本合意に至りました。

「Fycompa」は、当社筑波研究所で創製されたファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。グルタミン酸によるシナプス後AMPA受容体の活性化を高選択的かつ非競合的に阻害する唯一の薬剤で、神経の過興奮を抑制します。欧州において、2012年7月に「12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法」について、2015年6月に「12歳以上の特発性全般てんかん患者様の強直間代発作(二次性全般化発作を除く)に対する併用療法」について承認を取得しています。

てんかんは、世界的にも最もよく見られる神経疾患であり、ドイツには50万人を超えるてんかん患者様がいると推定されています。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず1、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患であり、新たな作用機序を持つ革新的新薬が強く望まれています。当社は今回の合意に基づき、革新的新薬を望まれているドイツのてんかん患者様に向けて「Fycompa」の販売を再開し、多くの患者様へ貢献できることを大変喜ばしく思います。

以上

<参考資料>

1. 「Fycompa」(一般名:ペランパネル、日本製品名「フィコンパ」)について

「Fycompa」は、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後AMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。「Fycompa」は1日1回就寝前に経口投与するタイプの錠剤です。さらに、新たな剤形として経口懸濁液の承認を米国で取得し、販売しています。

本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法について、日本、米国、欧州、アジアなど55カ国以上で承認を取得しています。さらに本剤は、全般てんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法について、日本、米国、欧州、アジアなど45カ国以上で承認を取得しています。また、米国においては、単剤療法として、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に係る適応での承認も取得しています。

本剤について、部分発作または強直間代発作を有する小児てんかん患者様を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験、レノックス・ガストー症候群に伴うてんかん発作を有する患者様を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験を実施しています。また、日本では、部分てんかん単剤療法に対する臨床第Ⅲ相試験を実施しています。

2. ドイツ連邦合同委員会(G-BA)追加有用性評価と保険償還について

2011年1月に施行された医薬品市場再編法(AMNOG)により、ドイツで発売された全ての新薬はG-BAによる追加有用性評価を受けることが義務付けられ、この評価に基づく価格交渉を経て、発売後1年以内に償還価格が決定されることになりました。G-BAからの委託を受けたドイツ医療サービス評価研究所(IQWiG)は、製薬企業が提出した追加的有用性を示すデータ(benefit dossier)をもとにG-BAが選んだ比較治療薬に対する追加有用性の有無とそのレベルを評価します。IQWiGの評価に対して製薬企業にはヒアリングによるコメントの機会が与えられ、G-BAが当該薬剤に対する有用性の証明がされているか否かを最終判断します。

G‐BAによる追加有用性が認められた場合には、公的医療保険中央連合会(GKV-Spitzenverband)との価格交渉段階に進み、G-BAによって設定された有用性レベルに基づき償還価格が決定されます。一方、追加有用性が認められないもしくは証明されていないと判断された薬剤には、原則参照価格が適用され、ジェネリック等の最も安価な既存の治療薬と同レベルの価格に設定されていました。

2017年5月に施行された医薬品供給強化法(AM-VSG)に基づき、G-BAによって追加有用性が証明されていないと判断されている薬剤についても、新たな償還価格交渉を開始することが可能となりました。