抗がん剤「レンビマ®」 韓国において承認を取得

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の新規抗がん剤「レンビマ®」(一般名、レンバチニブメシル酸塩)について、「進行性、局所再発又は転移性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん」の適応で、韓国の当局(韓国食品医薬品安全処)より承認を取得しましたのでお知らせします。韓国では2014年11月に「レンビマ」の承認申請を行っており、今回の承認によって、韓国は、日米欧についで「レンビマ」のアジアにおける最初の承認国となります。

韓国における承認は、グローバルで実施した分化型甲状腺がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験(SELECT試験)に基づくものです。本試験において「レンビマ」は、プラセボに対して無増悪生存期間を統計学的に有意に延長するとともに、高い奏効率を示しました1。主な副作用は、高血圧、下痢、疲労・無力症、食欲減退、体重減少、悪心でした。

「レンビマ」は、当社の筑波研究所で創製され、自社開発した新規抗がん剤です。腫瘍血管新生や腫瘍増殖に関わるVEGFR、FGFR、RET、KIT、PDGFRなどに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な分子標的治療薬であり、特に甲状腺がんの腫瘍血管新生と腫瘍増殖に関与するVEGFR、FGFRおよびRETを同時に阻害します。また、本剤は、VEGFR2とのX線共結晶構造解析から、新たな結合様式(タイプV)を有することが確認された薬剤であり、速度論的解析からは、標的分子に素早く結合し、強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されています2

本剤は、既に日本、米国、欧州にて発売されており、アジアでは、シンガポール、マカオ、香港、台湾、マレーシア、インドそしてインドネシアで承認申請中です。また、肝細胞がんを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験や、腎細胞がん、非小細胞肺がんなど複数のがんを対象にした臨床第Ⅱ相試験が進行中です。

韓国の甲状腺がんの新規診断患者数は、2012年で約33,000人、アジアにおいては、約144,000人と推定されています。甲状腺がんの多くは治療可能ですが、進行した甲状腺がんでは治療選択肢が限られているため、未だアンメット・メディカル・ニーズが高い疾病の一つです。

当社は、「レンビマ」を甲状腺がんの新たな治療選択肢として韓国の患者様にお届けするとともに、引き続き、アジアでの承認申請を進めてまいります。また、本剤によるがん治療の可能性をさらに追求し、がん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. 「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。特に甲状腺がんの増殖、腫瘍血管新生に関与するVEGFR、FGFRおよびRETを同時に阻害します。また、本剤は、VEGFR2とのX線共結晶構造解析から、新たな結合様式(タイプV)を有することが確認された薬剤であり、速度論的解析からは、標的分子に素早く結合し強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されています2

「レンビマ」は、米国では2015年2月から「局所再発又は転移性、進行性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん」の適応で販売しており、日本では2015年5月から「根治切除不能な甲状腺癌」を効能・効果として発売しています。欧州では2015年6月の英国販売を皮切りに、「成人での放射性ヨウ素治療抵抗性の進行性又は再発の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)」の適応で販売しています。加えて、現在、アジア諸国のほか、カナダ、ロシア、オーストラリア、ブラジル、メキシコなど世界各国で申請中です。

また、本剤に関しては、肝細胞がんを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験や、腎細胞がん、非小細胞肺がんなど複数のがんを対象にした臨床第Ⅱ相試験が進行中です。

2. SELECT試験について1

SELECT(Study of E7080 “LEnvatinib” in Differentiated Cancer of the Thyroid)試験は、過去13カ月以内に画像診断により病勢進行が確認され、VEGF受容体を標的とする薬物による治療歴が1レジメン以内である放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんの患者様を対象に、「レンビマ」(24mg)またはプラセボを1日1回経口投与する(「レンビマ」投与:プラセボ投与 = 2:1)、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床第Ⅲ相試験として実施されました。本試験は、SFJ Pharma Ltd.との提携のもと当社が実施し、本試験には欧州、米州および日本を含むアジア地域の100以上の施設が参加し、392人の患者様が登録されました。

本試験では、主要評価項目である無増悪生存期間(progression free survival: PFS)において、「レンビマ」投与群がプラセボ投与群に比較して統計学的に有意な延長を示しました(ハザード比0.21(99%信頼区間 = 0.14-0.31、p<0.0001))。PFSの中央値は「レンビマ」投与群で18.3カ月、プラセボ投与群で3.6カ月でした。また、副次評価項目である奏効率(完全奏効および部分奏効の割合)については、「レンビマ」投与群で64.8%、プラセボ投与群で1.5%となり、特に、「レンビマ」投与群では、完全奏効が1.5%(4例)確認されました(プラセボ投与群では0例)。「レンビマ」投与群の奏効までの期間の中央値は2.0カ月でした。同じく副次評価項目である全生存期間については、両投与群ともに中央値に達していません。「レンビマ」投与群において高頻度(頻度40%以上)に認められた副作用は、高血圧(67.8%)、下痢(59.4%)、疲労・無力症(59.0%)、食欲減退(50.2%)、体重減少(46.4%)、悪心(41.0%)でした。

3. 甲状腺がんについて

甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じるがんの一種です。男性より女性に多く発症します。最も多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾胞がん(ヒュルトレ細胞がんを含む)は、分化型甲状腺がん(Differentiated Thyroid Cancer: DTC)として分類され、甲状腺がんのおよそ95%を占めます。その他、未分化がん(頻度:3∼5%)、髄様がん(頻度:1∼2%)があります。分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射性ヨウ素療法で治療できる一方、これらの治療に反応しない少数の患者様もいます。

  • 1
    Schlumberger M, et al. Lenvatinib versus Placebo in Radioiodine-Refractory Thyroid Cancer. N. Engl. J. Med. 2015; 372, 621–630
  • 2
    Okamoto K, et al. Distinct Binding Mode of Multikinase Inhibitor Lenvatinib Revealed by Biochemical Characterization. ACS Med. Chem. Lett. 2015; 6, 89–94