ブラジルで初めての販売製品となる抗がん剤「ハラヴェン®」を新発売ラテンアメリカにおける事業を本格展開

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、当社のブラジル医薬品販売会社Eisai Laboratórios Ltda.(所在地:サンパウロ州、以下 エーザイ・ブラジル)が、抗がん剤「ハラヴェン®」(一般名:エリブリンメシル酸塩)を新発売しましたのでお知らせします。本剤は、当社グループがブラジルをはじめとするラテンアメリカで自社販売する初めての製品となります。

本剤は、当社が自社創製・開発した新規抗がん剤であり、現在、日本、米国、欧州をはじめとする50カ国以上で承認を取得しています。ブラジルにおいては、2013年5月、「アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2種のがん化学療法による前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん」に係る適応で承認を取得し、その後発売の準備を進めてきました。ブラジルでは、毎年約67,000人の女性が新たに乳がんを罹患する一方、約16,000人の方が乳がんが原因で亡くなっています1

ブラジル医薬品市場の規模は、2013年には307億米ドル(約3.0兆円)、現地通貨ベースの成長率は+16%であり、世界で6位となっています2。今後も2桁の高い成長率を維持し、2018年には米国、日本、中国に次いで世界第4位の市場となると予想されています3。当社は、2011年4月にラテンアメリカにおける最初の医薬品販売拠点としてエーザイ・ブラジルを設立し、製品の申請作業等を進めてきました。ブラジルでは、今回新発売した「ハラヴェン」のほか、現在抗がん剤「Gliadel®」(日本製品名:「ギリアデル®」)、抗てんかん剤「Fycompa®」および「イノベロン®」、肥満症治療剤「BELVIQ®」を申請中です。

当社は、ブラジルの患者様に「ハラヴェン」をはじめとする革新的医薬品をお届けするため、製品ラインアップおよび販売体制の充実をはかり、当地域の患者様とご家族のベネフィット向上に貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. ブラジル医療制度について

ブラジル憲法では健康は全ての国民の権利と定められており、1990年に導入された税金を財源とする「普遍的医療制度」(SUS: Sistema Único de Saúde)を通じて、原則的に全国民が公的医療を無償で受けることができます。しかし、財政難によりSUSで提供される薬剤や医療サービスが限られているため、国民の約4分の1が民間医療保険に加入し、医療費の約60%が民間医療保険によって賄われています。

2. ラテンアメリカにおける事業展開について

当社は、ロシア、ブラジル、メキシコ、カナダ、オーストラリア、中東の6つの国/地域をストラテジックマーケットとして位置付け、これらの国/地域での事業基盤構築、拡充をはかっています。これらのストラテジックマーケットの中でも、今後も高い成長が見込まれるラテンアメリカの中核であるブラジルおよびメキシコは最重点マーケットと位置づけています。このたび、ブラジルにおいて本格的な事業を開始したことに加え、メキシコにおいても2011年8月に医薬品販売会社設立し、「ハラヴェン」、「Fycompa」など7製品を申請中であり、2014年度中の自社販売開始をめざしています。

3. 「ハラヴェン」(一般名:エリブリンメシル酸塩)について

「ハラヴェン」は、新規の作用機序を有するハリコンドリン系微小管ダイナミクス阻害剤です。1985年、日本の三浦半島沖で採取した海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から単離されたハリコンドリン類の全合成類縁化合物であり、微小管の短縮(脱重合)には影響を与えずに伸長(重合)のみを阻害し、さらにチューブリン単量体を微小管形成に関与しない凝集体に変化させる作用を有しています。

本剤は、乳がんについて2010年11月に最初の承認を米国で取得し、これまでに欧州、日本、アジア諸国等、55カ国以上で承認を取得しています。2014年6月には欧州において、「1レジメン以上の前治療歴のある局所進行または転移性乳がん(術後または再発後にアントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤による治療歴を有すること)」の追加適応を取得しました。また、軟部肉腫などの他のがん腫についても開発を進めています。

ブラジルにおける本剤の承認は、アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む前治療歴のある進行または再発乳がん患者様762人を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(EMBRACE試験)の結果を基に評価されました。本試験において、「ハラヴェン」投与群は主治医選択治療群と比較し、全生存期間を2.5カ月間延長しました(全生存期間:13.1カ月 対 10.6カ月、ハザード比:0.81、p値:0.041)。また、当社は欧州と米国の審査当局からの依頼によりプロトコールの規定に加えてEMBRACE試験の結果をアップデートしました。その最新の解析データでは、「ハラヴェン」投与群で主治医選択治療群に比べて2.7カ月間の全生存期間の延長が認められました(全生存期間:13.2カ月 対 10.5カ月、ハザード比:0.81、p値:0.014)。「ハラヴェン」投与群で高頻度(頻度25%以上)に認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球減少、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足等のしびれ)、悪心、便秘でした。この中で、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少です。また「ハラヴェン」投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)でした。

出典