日本において、抗がん剤「レンバチニブ」の新薬承認申請を世界に先駆けて提出

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、本日、日本において自社創製の新規抗がん剤「レンバチニブメシル酸塩」(一般名、以下「レンバチニブ」)について、甲状腺がんに係る適応で新薬承認申請を行ないましたのでお知らせします。当社は、レンバチニブについて国際共同治験により開発を実施してきましたが、この度、世界に先駆けて日本で承認申請を行ないました。

レンバチニブは、血管新生や腫瘍増殖に関わるVEGFR、FGFR、PDGFRα、KIT、RETなどの受容体チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な新規結合型選択的チロシンキナーゼ阻害剤です。

本承認申請に用いた臨床第Ⅲ相試験(SELECT試験:Study of E7080 “LEnvatinib” in Differentiated Cancer of the Thyroid)は、過去13カ月以内に画像診断により病勢進行が確認され、VEGF受容体を標的とする薬物による治療歴が1レジメン以内である放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんの患者様392人を対象とした、多施設共同、無作為化、二重盲検による、プラセボとの比較試験として実施されました。

本試験において、レンバチニブ投与群はプラセボ投与群に比べ、主要評価項目である無増悪生存期間(progression free survival: PFS)を統計学的に有意に延長しました(ハザード比0.21、p<0.0001)。レンバチニブ投与群において報告された主な有害事象は、高血圧、下痢、食欲減退、体重減少、嘔気でした。また、Grade 3以上(有害事象共通用語規準)の主な有害事象は、高血圧、タンパク尿、体重減少、下痢、食欲減退でした。

日本においては、甲状腺がんの患者様の数は約13,000~29,000人と推定されています。甲状腺がんの多くは治療可能ですが、進行した甲状腺がんの治療選択肢が限られているため、未だアンメット・メディカル・ニーズが高い疾病の一つです。

レンバチニブは、日本、米国、欧州の各当局より甲状腺がんに関わる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。欧州・米国における本剤の承認申請は、2014年度第2四半期中に予定しています。また、当社はレンバチニブに関して、肝細胞がんを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験、およびその他のがん腫を対象にした複数の臨床第Ⅱ相試験を実施しています。

当社は、レンバチニブによるがん治療の可能性を引き続き追求し、甲状腺がんを含むがん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. レンバチニブ(E7080)について

自社創製のレンバチニブは、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体VEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)、VEGFR3(FLT4)をはじめ、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体PDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍増殖に関与する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤であり、特に、VEGF受容体に加えてFGF受容体のRTK活性を同時に阻害するという点で、ファーストインクラスの資質を有する薬剤と期待しています。現在、甲状腺がんでの開発に加え、肝細胞がん(フェーズⅢ)、非小細胞肺がん(フェーズⅡ)などの複数のがん腫を対象に臨床試験が進行中です。レンバチニブは日本(2012年8月、甲状腺がん)、米国(2012年12月、局所進行性または転移性甲状腺乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん)、欧州(2013年4月、甲状腺乳頭がんおよび濾胞がん)の各当局より甲状腺がんの治療に関わる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

2. SELECT試験について

SELECT(Study of E7080 “LEnvatinib” in Differentiated Cancer of the Thyroid)試験は、過去13カ月以内に画像診断により病勢進行が確認され、VEGF受容体を標的とする薬物による治療歴が1レジメン以内である放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんの患者様を対象に、レンバチニブ(24mg)またはプラセボを1日1回経口投与する(レンバチニブ投与:プラセボ投与 = 2:1)、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床第Ⅲ相試験として実施されました。本試験は、SFJファーマシューティカルズとの提携のもと当社が実施し、本試験には欧州、米州および日本を含むアジア地域の100以上の施設が参加し、392人の患者様が登録されました。

本試験では、主要評価項目である無増悪生存期間(progression free survival: PFS)において、レンバチニブ投与群がプラセボ投与群に比較して統計学的に有意な延長を示しました(ハザード比0.21(99%信頼区間 = 0.14-0.31、p<0.0001))。PFSの中央値はレンバチニブ投与群で18.3カ月、プラセボ投与群で3.6カ月でした。また、副次評価項目である奏効率(完全奏効および部分奏効の割合)については、レンバチニブ投与群で64.8%、プラセボ投与群で1.5%となり、特に、レンバチニブ投与群では、完全奏効が1.5%(4例)確認されました(プラセボ投与群では0例)。レンバチニブ投与群の奏効までの期間の中央値は2.0カ月でした。同じく副次評価項目である全生存期間については、両投与群ともに中央値に達していません。本試験において報告された主な有害事象は高血圧(67.8%)、下痢(59.4%)、食欲減退(50.2%)、体重減少(46.4%)、悪心(41.0%)でした。また、Grade 3以上(有害事象共通用語規準)の主な有害事象は、高血圧(41.8%)、タンパク尿(10.0%)、体重減少(9.6%)、下痢(8.0%)、食欲減退(5.4%)でした。

3. 甲状腺がんについて

甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じるがんの一種です。男性より女性に多く発症します。最も多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾胞がん(ヒュルトレ細胞がんを含む)は、分化型甲状腺がん(Differentiated Thyroid Cancer: DTC)として分類され、甲状腺がんのおよそ95%を占めます。その他、未分化がん(頻度:3~5%)、髄様がん(頻度:1~2%)があります。分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射性ヨウ素療法で治療できる一方、これらの治療に反応しない少数の患者様もいます。

4. SFJグループの概要

SFJファーマ株式会社を含むSFJファーマシューティカルグループ(以下、SFJ)は、世界のトップの製薬・バイオテク企業にユニークな共同開発提携モデルを提供しているグローバル医薬品開発会社です。SFJは、経済的強みと医薬品開発専門家によるコアチームを有しており、製薬・バイオテク企業のもっとも有望な医薬品開発プログラムに対する資金の負担や、臨床開発・薬事承認までの管理業務の提供について高度にカスタマイズされた提携モデルを提供しています。