抗がん剤「ファルレツズマブ」のプラチナ製剤感受性の再発卵巣がん患者様を対象とした 第Ⅲ相臨床試験の速報結果について

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、このたび、米国子会社であるモルフォテック・インクが創製した「ファルレツズマブ(一般名)」(開発番号:MORAb-003)に関して、プラチナ製剤感受性の初回再発卵巣がん患者様を対象とした、国際共同第Ⅲ相臨床試験(FAR131、MORAb-003- 004試験)の速報結果が得られましたので、お知らせします。

本試験は、プラチナ製剤感受性の初回再発卵巣がん患者様1,100人を対象として、その標準療法であるカルボプラチンおよびタキサン系薬剤に加えて、ファルレツズマブ1.25 mg/kg、2.5 mg/kg、またはプラセボを併用投与する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験として実施されました。

本試験の速報結果では、主要評価項目である「無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)」について、事前に定義した統計学的有意差の基準を満たしませんでした。しかし、探索的な解析において、一部のサブグループでPFSの延長が認められており、今後さらに詳細な解析を実施します。なお、安全性に関して、一部の患者様で抗体治療特有の免疫介在性反応が認められましたが、主な有害事象は、併用した化学療法剤に関連したものでした。当社は、本試験結果について精査した後、外部専門家および規制当局と協議の上、申請時期を含めた今後の開発方針を決定いたします。

当社は、引き続き再発卵巣がんを含むがん患者様とそのご家族に貢献すべく、ファルレツズマブによる治療の可能性を追求してまいります。

以上

[参考資料として、ファルレツズマブ、FAR131試験デザイン概要、卵巣がん、
エーザイのオンコロジー領域での取り組みについて添付しています]

<参考資料>

1. ファルレツズマブについて

ファルレツズマブは葉酸受容体の一つである葉酸受容体α(FRA)に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。FRAは卵巣がんやその他の上皮性がん細胞に多く発現していることが報告されています。モノクローナル抗体は、特異的ながん細胞を攻撃するように作られた人工的な免疫系タンパク質であり、がん免疫療法の一つの治療法となります。免疫療法は化学療法とは一線を画した治療選択肢を患者様に提供します。

2. FAR131試験デザイン概要

本試験は、プラチナ製剤感受性の初回再発卵巣がん患者様1,100人を対象とした、274施設による多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験です。本試験では、標準療法であるカルボプラチンおよびタキサン系薬剤(パクリタキセルまたはドセタキセル)に、ファルレツズマブを併用した際の有効性と安全性が評価され、主要評価項目には、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors : 固形がんに対する効果を判定する際に用いられる評価基準)による無増悪生存期間(PFS)が設定されました。

患者様は3つの群(ファルレツズマブ1.25 mg/kg、2.5 mg/kg、またはプラセボ)に無作為に割付けられ、標準療法を3週間ごとに6サイクル受ける間、ファルレツズマブまたはプラセボを週1回併用投与されました。また、標準療法6サイクル投与後も、増悪が認められるまで、ファルレツズマブまたはプラセボの投与が継続されました。

本試験には、外科的手術後の初回化学療法としてプラチナ製剤とタキサン系薬剤による治療で奏効したものの、その後に再発が確認された患者様が参加されました。また、初回化学療法の終了時から6カ月以上24カ月以内に再発し、加えて、カルボプラチンおよびタキサン系薬剤による治療を投与できることが条件とされました。

3. 卵巣がんについて

世界中で毎年約225,000人の患者様が卵巣がんと診断されており、約140,000人の患者様が、卵巣がんが原因で亡くなっています。卵巣がんの多くは上皮性卵巣がんであり、全体のほぼ90%を占めています。また、上皮性卵巣がんは、進行した段階で発見されることが多いのが特徴です。腫瘍縮小手術と化学療法により、多くの患者様で完全寛解が認められますが、多くの場合、再発することが報告されています。

4. エーザイのオンコロジー領域での取り組み

当社は、がん研究における意義ある革新をめざしており、前臨床探索研究並びに臨床開発研究において、低分子有機化合物と生物学的薬剤からなる多岐にわたるがん化学療法剤、ならびに支持療法剤を創出するグローバル事業基盤を確立しています。自社開発品では、「ハラヴェン®」の適応拡大に続き、モノクローナル抗体「ファルレツズマブ」、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤/マルチキナーゼ阻害剤「レンバチニブ」など、今後、がん関連疾患領域の製品の充実をはかっていきます。