アボット ジャパン株式会社、エーザイ株式会社ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ®」日本において若年性特発性関節炎に関する追加適応および新製剤の承認を取得

アボット ジャパン株式会社
エーザイ株式会社

アボット ジャパン株式会社(医薬品事業部本社:東京都、代表取締役社長:ゲリー・エム・ワイナー)とエーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役社長兼CEO:内藤晴夫)が、日本で共同開発を進めてきたヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ®皮下注40mgシリンジ0.8mL」(一般名:アダリムマブ)について、このたび、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎に関する効能・効果と用法・用量の追加承認を取得しました。

また、本適応の追加承認に合せて、体重の少ない患者様向けの新製剤「ヒュミラ®皮下注20mgシリンジ0.4mL」も製造販売承認を取得しました。今後薬価収載の手続きを経て、発売する予定です。

本剤はヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体であり、炎症反応に関わる中心的なサイトカインであるTNFαを中和することにより、効果を発揮します。日本において「ヒュミラ®」は、製造販売承認はアボット ジャパンが取得し、アボット ジャパンとエーザイによる1ブランド1チャネル2プロモーション方式で共同プロモーションを行っており、販売はエーザイが担当しています。

若年性特発性関節炎は、16歳未満で発症し、少なくとも6週間継続する原因不明の関節炎を主病変とする慢性疾患であり、小児の人口10万人に8.79人の割合で発病すると推定されています。患者様においては、通院などにより学業への影響が生じ、進学・就職など将来設計にも影響を及ぼしているといわれています。

日本で実施した、既存治療で疾患活動性のコントロールが困難であり、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者様25例を対象とした、ヒュミラ単独およびヒュミラとメトトレキサート併用治療の臨床試験において、海外臨床試験と同様、臨床症状の改善などを示し、良好な忍容性が認められました。

両社は、「ヒュミラ®」を若年性特発性関節炎の新たな治療剤として提供することにより、患者様のQOL向上に貢献してまいります。

以上

[参考資料として、製品概要、臨床試験概要、用語解説、エーザイおよびアボット社の取組みについて添付しています]

本件に関する問い合わせ先

<参考資料>

1.製品概要(下線部が今回の承認部分)

■効能・効果

ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.4mL

既存治療で効果不十分な下記疾患

多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎

ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.8mL

既存治療で効果不十分な下記疾患

関節リウマチ
尋常性乾癬,関節症性乾癬
強直性脊椎炎
多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎

中等症又は重症の活動期にあるクローン病の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)

■用法・用量

関節リウマチ
通常, 成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として40mgを2週に1回, 皮下注射する.なお, 効果不十分な場合, 1回80mgまで増量できる.

尋常性乾癬及び関節症性乾癬
通常, 成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として初回に80mgを皮下注射し, 以後2週に1回, 40mgを皮下射する.
なお, 効果不十分な場合には1回80mgまで増量できる.

強直性脊椎炎
通常, 成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として40mgを2週に1回,皮下注射する.なお, 効果不十分な場合, 1回80mgまで増量できる.

多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎
通常, アダリムマブ(遺伝子組換え)として, 体重15kg以上30kg未満の場合は20mgを, 体重30kg以上の場合は40mgを2週に1回、皮下注射する.

クローン病
通常, 成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として初回に160mgを, 初回投与2週間後に80mgを皮下注射する. 初回投与4週間後以降は, 40mgを2週に1回, 皮下注射する.

2.若年性特発性関節炎における「ヒュミラ®」の臨床試験について

若年性特発性関節炎(Juvenile idiopathic arthritis: 以下、JIA)における「ヒュミラ®」の臨床試験は、以下の国内試験と海外試験の2試験です。いずれの試験も、既存治療で疾患活動性のコントロールが困難な多関節に活動性を有する4~17歳までのJIA患者を対象に実施され、有効性はACR Pedi 30* を用いて検討しました。

(*ACR Pedi 30:JIAコアセット基準6項目(①医師による疾患活動性の総合評価、②家族または被験者による全身状態総合評価、③活動性関節炎、④可動域制限、⑤小児の健康評価に関する質問票、⑥CRP)のうち、少なくとも3項目で30%以上の改善が認められ、かつ30%以上の悪化が1項目以内であった被験者の割合)。

  • 1)
    国内臨床試験(M10-240)

    M10-240試験は、多施設共同、単用量、非盲検、第Ⅲ相試験です。本試験では、非ステロイド性抗炎症薬及びメトトレキサート(以下、MTX)等の既存治療で疾患活動性のコントロールが困難な多関節に活動性を有するJIA患者25例(MTX併用例;20例、MTX非併用例:5例)を対象に、アダリムマブ(体重30 kg未満の被験者;20 mg、体重30 kg以上の被験者;40 mg)を隔週皮下投与しました。

    その結果、主要評価である投与16週時のACR Pedi 30反応率はMTX併用例で90.0%、MTX非併用例で100%であり、海外で実施されたDE038試験の試験結果と大きな差はありませんでした。また、安全性に特に問題となるものは認められず、良好な忍容性を示しました。

  • 2)
    海外臨床試験(DE038)

    DE038試験は、多施設共同、プラセボ対照、二重盲検、第Ⅲ相試験です。本試験では、多関節に活動性を有するJIA患者を対象に、MTX併用又は非併用の2群に分け、全例にアダリムマブ(体表面積あたり24 mg/m2、最大40 mgまで)を16週間隔週皮下投与し、ACR Pedi 30に達した被験者を対象に二重盲検下でアダリムマブ又はプラセボを32週間投与し、本剤の有効性、安全性及び薬物動態を検討しました。

    その結果、主要評価項目であるMTX非併用例におけるアダリムマブ群の再燃率(43.3%)は、プラセボ群の再燃率(71.4%)に比べて統計学的に有意に低いものでした(p = 0.031)。副次的に評価したMTX併用例におけるアダリムマブ群の再燃率(36.8%)もプラセボ群(64.9%)に比べて統計学的に有意に低いものでした(p = 0.015)。また、安全性に特に問題となるものは認められず、良好な忍容性を示しました。

3.用語解説

  • 1)
    若年性特発性関節炎

    若年性特発性関節炎(JIA) は、16歳未満で発症する自己免疫疾患で、以前は若年性関節リウマチと呼称されていた小児期の慢性関節炎です。JIAは小児期のリウマチ性疾患(若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎・多発筋炎等)の中で最も頻度の高い疾患で、病因は不明ですが遺伝要因と環境要因が複雑に関わりあい発症する多因子性の疾患と考えられています。また、関節内ではTNFや他の炎症性サイトカインが過剰に産生され、成人の関節リウマチと同じ炎症過程を辿るといわれています。病態としては、関節が腫脹し、経過によっては関節の変形、拘縮を伴い、更に進行した関節では骨性強直となり、重症な関節障害を残す危険性があります。特に、発育途上にある年少期に発症した場合は、成長障害を残す危険性があります。JIAには、発熱や皮疹・心膜炎などの全身症状に伴い関節炎が現れる全身型と、関節炎が主症状である少関節型又は多関節型に大別されます。この他、症候性関節炎に分類される乾癬関連関節炎および付着部炎関連関節炎などがあります。JIAの治療の最大の目的は拘縮などの関節障害をいかにして予防するかが重要です。治療は薬物療法、理学療法、合併症、特に眼科的な合併症の早期発見と予防、学校生活などを中心とした社会生活の援助、しかも慢性に続く、痛みを伴うため、心理的療法など様々な方面からの治療が必要です。

    JIAの薬剤治療は関節に対する治療、関節外症候に対する治療、眼合併症に対する治療があります。その活動性が続く間は、副作用もあると考えられる薬を、いかに少量で、しかもより効果的に使用するかにかかっています。

    関節症状に対する第1選択薬は非ステロイド抗炎症薬で、非ステロイド抗炎症薬を2-3週間使用し、効果がなければ、抗リウマチ薬(メトトレキサート)を選択します。特にリウマトイド因子陽性の多関節型では関節障害が予想されますので、症状が進まないうちに早期から抗リウマチ薬を併用する必要があります。それでも効果がなければ生物学的製剤を選択します。

  • 2)
    TNFα

    TNF(腫瘍壊死因子:Tumor Necrosis Factor)とは、腫瘍細胞に対する傷害活性を有する因子として発見された細胞間相互作用を媒介するタンパク質(サイトカイン)の一つです。

    TNFαは、マクロファージ、リンパ球、血管内皮細胞など種々の細胞によって産生され、炎症反応を惹き起こしたり、増強したり、炎症細胞を活性化したりします。

  • 3)
    モノクローナル抗体

    単一株(モノクローン)の抗体産生細胞から得られた抗体で、抗原に対する結合親和性や特異性が均一の抗体です。

4.「ヒュミラ®」(海外製品名:HUMIRA®)について

「ヒュミラ®」は、日本において関節リウマチ(2008年4月)、尋常性乾癬および関節症性乾癬(2010年1月)、クローン病(2010年10月)、強直性脊椎炎(2010年10月)、若年性特発性関節炎(2011年7月)の承認を取得し、現在潰瘍性大腸炎などの効能・効果追加向けて、開発を進めています。

5.エーザイの抗体医薬への取り組み

エーザイは、従来からの強みである低分子化合物に加えて、バイオロジクス(生物学的製剤)分野へ積極的に取り組んでいます。特に、2007年4月に抗体医薬の研究開発を専門とする米国のバイオベンチャー企業であるモルフォテック社を買収し、同社独自の技術である「Human Morphodoma®」、「Libradoma™」を活用することにより、がん・関節リウマチ・感染症などに対する抗体医薬の創出に取り組んでいます。また、スウェーデンのバイオアークテック・ニューロサイエンス社との提携によるアルツハイマー病に対する抗体医薬の開発や、日本でアボット ジャパンとヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ®」の開発・販売を進めるなど、抗体医薬を通して患者様とご家族の皆様のQOL向上に貢献することを目指しています。

6.アボット社について

アボット社は、広範囲のヘルスケアに基盤を置く世界的規模の会社であり、グループ総従業員数約90,000 人を擁し、世界130 カ国以上で営業活動を行っています。その事業内容は医療用医薬品、栄養剤、医療機器、診断薬、診断機器の分野における研究・開発、製造、マーケティングそして販売と多岐にわたっています。日本国内では、従業員約2,800人がこれらのビジネスに関する販売とマーケティングに従事しており、東京、福井、千葉に拠点を置いています。アボット ジャパンのプレスリリースは、www.abbott.co.jp、アボット本社のプレスリリースは、www.abbott.com をご参照ください。

7.アボットの免疫分野への取り組み

アボットは、免疫疾患に対する新規治療薬の創薬と開発に力を注いでおります。1989年に創設したアボット生物科学研究所(米国マサチューセッツ州ウースター)では、自己免疫疾患の新規治療法の開発に向け、世界最高レベルの創薬活動と基礎研究を行っています。「ヒュミラ®」(海外製品名:HUMIRA®)に関する詳細や処方情報については、http://www.e-humira.jp/もしくはwww.HUMIRA.comをご覧ください。

以上