PRISM BIOLAB株式会社とCBP/β-カテニン阻害剤と類縁化合物に関する共同研究開発契約を締結

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫、エーザイ)は、PRISM BioLab株式会社(本社:横浜市、社長:小路 弘行、PRISM社)とCBP/β-カテニン阻害剤である化合物(以下、本化合物)およびその類縁化合物に関するライセンスおよび共同研究開発契約を締結した、と発表しました。

本契約は、1) PRISM社は、本化合物、および本化合物を有効成分として含有し、ヒトの固形癌及び白血病の治療を適応症とする医療用医薬品についての、一部の国を除く全世界での開発・事業化に関する独占的ライセンス権(サブライセンス付与権付き)をエーザイに許諾する、 2) PRISM社は、本化合物の類縁化合物、および当該類縁化合物を有効成分として含有し、ヒトの固形癌及び白血病の治療を適応症とする医療用医薬品についての、一部の国を除く全世界での開発・事業化に関する独占的ライセンス権(サブライセンス付与権付き)を取得するオプション権をエーザイに許諾する、というものです。

本化合物は、PRISM社が保有するプラットフォーム技術である細胞内蛋白質-蛋白質相互作用阻害/制御化合物ライブラリーを用いて創出されたCBP/β-カテニン複合体形成を阻害する低分子化合物であり、ヒトでの第Ia/Ib相臨床試験が2011年3月から、米国において開始されました1)

遺伝子研究の進展にともない、がんに関与する蛋白質の同定が可能になってきています。それらのなかで、Wntシグナル伝達経路と発がんおよびがんの進展について、多くの研究がなされています。Wntシグナル伝達経路構成因子の1つであるCBP [CREB (cyclic AMP応答配列結合蛋白質) Binding Protein] は細胞外の刺激によって活性化される転写因子であるβ-カテニンに結合する転写補助因子です。Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の恒常的活性化は発がんの引き金になり、多くのがん細胞でこの経路の構成蛋白質に変異が見つかっています。その結果、この経路を阻害する物質の新規抗腫瘍薬としての可能性が検討され、低分子化合物、生物学的製剤などが阻害作用を有することが報告されています2), 3)

当社は、がん領域を重点領域と位置づけ、新規抗がん剤や支持療法に用いられる薬剤の開発に注力しています。本契約により、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、より一層貢献することをめざしてまいります。

以上

[参考資料としてPRISM BioLab株式会社、Wnt、β-カテニン、Wntシグナル伝達経路、当社のがんの取り組みについて添付しています]

<参考資料>

1. PRISM BioLab株式会社

PRISM BioLab株式会社は、2006年に設立された横浜を拠点とするベンチャー企業で、蛋白質-蛋白質相互作用を制御できる低分子化合物の創薬技術を用いた独創的な新薬の開発を行っています。

2. Wnt について

Wntとは、マウス乳がんウイルスによる乳がんの原因遺伝子の産物として同定されたということと、ショウジョウバエの体節形成にかかわる遺伝子との相同性から名づけられた体軸形成、中枢神経発生、器官形成にかかわる糖蛋白質です。 Wnt経路には、細胞分化・背側形成にかかわるWnt/β-カテニン経路、平面内細胞極性・原腸陥入運動にかかわるWnt/PCP経路、胚葉分離にかかわるWnt/Ca2+経路、筋新生の制御に関与する経路、などが知られています。

3. β-カテニン について

カテニンは細胞骨格関連蛋白質でα,β,γのサブクラスが知られています。β-カテニンは、カドヘリンを介した細胞接着や細胞骨格形成に重要な役割を果たすと同時に、Wnt シグナル伝達系の媒体として遺伝子発現調節にも関与しています。β-カテニンの発現量は、正常細胞では制御されていますが、様々な腫瘍で制御機構が低下し、細胞内β-カテニン量が増えていることが認められており、腫瘍組織の特徴の一つと考えられています4)

4. Wntシグナル伝達経路の模式図

上述された各因子の相互作用を模式化した図を、下記に添付します。(図中PRI-724はCBP/β-カテニン阻害剤)

Wntシグナル伝達経路の模式図

5. 当社のがんの取り組みについて

当社のオンコロジー研究機能は、1)Oncology PCU (Product Creation Unit)、2)Morphotek, Inc. 3)H3 Biomedicine Inc. などから構成されます。それぞれの機能の相互関係とおもな研究分野を示します。

当社のオンコロジー研究機能