Epizyme, Inc. とエピジェネティック酵素EZH2をターゲットとするがん治療に関する戦略的提携契約を締結

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、米国のEpizyme, Inc.(Cambridge, MA, USA、社長:Robert Gould、以下 Epizyme)と、エピジェネティック酵素であるEZH2をターゲットとする遺伝的起因によるリンパ腫やその他のがん治療に関する研究、開発、販売に関するグローバルな戦略的提携契約を締結した、と発表しました。

当社は、Epizymeが有する独自の創薬プラットフォーム、EZH2の役割を同定する最先端の技術力、標的とするエピジェネシスの1つであるヒストン・メチルトランスフェラーゼ(HMTs)に対する強力かつ選択的な新規低分子阻害剤に関する創薬力などに基づき、エピジェネティック治療薬の創薬パートナーとしてEpizymeとの戦略的提携契約を行うこととしました。

本契約により、当社は、Epizymeに対して、契約一時金、プロジェクトの進捗に応じたマイルストーン、ロイヤルティを支払うこととなります。また、Proof of Concept (POC:創薬概念の検証)に至るまでの研究開発費用を負担します。Epizymeは、米国での共同商業化に関するオプション権を有しています。なお、本契約の発効日は2011年4月1日となります。

ヒトのがんにおける近年の遺伝子レベルでの理解の進歩は著しいものがあります。当社が2010年12月に設立した研究開発子会社であるH3 Biomedicine Inc.による、がん細胞の遺伝子変化そのものに関わるゲノム情報から創薬標的を同定するというジェネティックなアプローチと、Epizyme の保有するHMTsをターゲットとしたがん細胞における遺伝子機能の選択的な活性化・不活性化に関わるエピジェネティックスに基づく創薬アプローチという複数の最先端の技術を活用することにより、疾患固有のターゲットの同定が可能となり、当社のターゲットバリデーション力が大きく向上することにつながります。そして、これらはがん患者様の個別化医療(Personalized Medicine)に向けた当社の新規化合物創出力を、より充実させるものと期待しております。

当社は、がん領域を重点領域と位置づけ、新規抗がん剤や支持療法に用いられる薬剤の開発に注力しています。本契約により、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、より一層貢献することをめざしてまいります。

以上

[参考資料としてEpizyme, Inc. エピジェネティックス、EZH2、H3 Biomedicine Inc. について添付しています]

<参考資料>

1. Epizyme, Inc.について

Epizyme, Inc.は、遺伝的要因によるがん患者様に対する新規標的治療薬の新しいクラスであるヒストン・メチルトランスフェラーゼ(HMTs)に対する低分子阻害剤の創薬、開発に専念しています。HMTにおける遺伝子変化は、がんを含めて多種のヒト疾患の根本原因と強く関連しています。Epizyme, Inc.の患者様主導アプローチは、従来のアプローチに比べより迅速に低予算で、より優れた治療薬を創出することによる、個別化医療の将来を表すものです。

2. エピジェネティックスについて

エピジェネティックス(epigenetics)とは、遺伝子機能の選択的な活性化・不活性化のための機構の一種で、DNA の塩基配列の変化を伴わずに細胞分裂後も継承される遺伝子機能の変化のしくみ、またはそれを研究する学問領域を指します。また、ゲノムのエピジェネティックス状態の総体を「エピゲノム(epigenome)」と呼びます。

3. EZH2 について

EZH2はポリコームタンパク質とよばれる遺伝子発現調節タンパク質複合体の一員としてエピジェネティックな遺伝子発現調節に関与しています。EZH2はヒストンH3コアタンパク質の27番目のリジンをメチル化し、その領域にある遺伝子の転写を抑制します。

4. H3 Biomedicine Inc. について

2010年12月、米国マサチューセッツ州ケンブリッジに設立した、がんのゲノム情報と先端創薬化学を活用し、次世代のがん治療薬の創出を目的とした研究開発子会社です。がん患者様の遺伝子的特徴に基づいた個別化医療を可能にする創薬標的の同定を行い、これら創薬標的に対して、現代創薬化学の進歩に基づく技術を活用し、安全性と有効性の高い新規化合物を創出するという研究方針に基づき、ブレイクスルーとなるがん治療薬の創出をめざします。

がん患者様の個別化医療に向けた新規化合物創出力の充実