アルツハイマー型認知症の原因とされる神経毒性を有するプロトフィブリルをターゲットとする新規モノクローナル抗体BAN2401臨床試験を開始

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫、以下 エーザイ)は、このたび、次世代のアルツハイマー型認知症治療薬として期待される新規モノクローナル抗体BAN2401について、米国で患者様を対象とした臨床試験を開始した、と発表しました。

BAN2401は、アルツハイマー型認知症を惹起させる因子の一つと考えられている、アミロイド毒性凝集体である可溶性プロトフィブリルに選択的に結合して無毒化、脳内からこれを除去する世界で初めてのモノクローナル抗体です。本抗体による治療アプローチは、疾患の進行を停止させる可能性が期待されています。

当社は、本抗体について、2007年12月にバイオアークティック・ニューロサイエンス社(本社:スウェーデン、ストックホルム、社長:パー・ゲレルフォルス、以下 バイオアークティック社)とのライセンス契約により、全世界におけるアルツハイマー型認知症を対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を獲得しました。

本試験(臨床第Ⅰ相試験)の主要な目的は、80名以上の軽度・中等度アルツハイマー型認知症患者様において、安全用量の範囲を決定することと、アルツハイマー型認知症のバイオマーカーに対する影響を評価することです。

1970年代に世界初の治療用モノクローナル抗体が開発されて以来、各種疾患の治療におけるモノクローナル抗体の役割は大幅に拡大してきました。特に、ここ数年では、神経学的疾患の治療における利用が増加しています。

今回のBAN2401の臨床試験開始は、アルツハイマー型認知症に対するモノクローナル抗体によるアプローチという新たな薬物療法の創出において大きな前進となります。今後の順調な臨床研究の進行を前提として、2015~2016年頃の新薬承認申請をめざします。

当社は、アルツハイマー型認知症に対する薬物療法の分野において、「アリセプト®」により新たな薬物治療法を創出し、米国での高用量製剤「アリセプト®錠23mg」の発売で、より有用性の高い治療手段を提供してまいりました。今後も、新規作用機序の治療剤や新剤型の開発を、自社および他社との提携を通して進めることで、アルツハイマー型認知症患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

以上

[参考資料としてBAN2401、バイオアークティック社の概要を添付しています]

<参考資料>

1.BAN2401について

最近の研究によると、ベータ・アミロイド(Aβ)の凝集過程変化における中間体(Aβプロトフィブリル)が神経変性過程を誘発・促進すると示唆されています。ウプサラ大学のランフェルト教授により、Aβプロトフィブリルは神経毒であることが証明されています。バイオアークティック社は、エーザイと共同して、このAβプロトフィブリル神経毒物質を特異的に認識する抗体の開発を行ってきましたが、BAN2401は、Aβプロトフィブリルを選択的に認識・除去するヒト化モノクローナル抗体です。

エーザイは、BAN2401の全世界におけるアルツハイマー型認知症を対象とした研究・開発、製造、販売に関する権利を保有しており、バイオアークティック社は、北欧諸国における本抗体の販売に関する権利を有しています。

アミロイド 前駆体タンパク質

2.バイオアークティック・ニューロサイエンス社について

バイオアークティック・ニューロサイエンス社は、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などのように、誤って折り畳まれたタンパク質を原因とする疾患に対する、治療用モノクローナル抗体の開発における独自の技術を有する、バイオファーマ企業です。

バイオアークティック社の詳細についてはwww.bioarctic.seをご覧下さい。