中等度・高度アルツハイマー型認知症に対する高用量製剤「アリセプト®錠23mg」米国で承認を取得

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、同社の米国子会社であるエーザイ・インクが、7月23日(米国時間)、米国食品医薬品局(FDA)より、中等度・高度アルツハイマー型認知症(AD)の治療剤である、1日1回投与の高用量製剤「アリセプト®錠23mg」(一般名:ドネペジル塩酸塩)の承認を取得した、と発表しました。米国では65歳以上の高齢者のうち約510万人の患者様がADに罹患していると言われており、そのうち約360万人が中等度・高度AD患者様です。「アリセプト®錠23mg」は、中等度・高度AD患者様に新たな治療選択肢を提供する薬剤です。

今回の承認は、1,467名の中等度・高度AD患者様を対象とした実薬対照比較試験(326試験)のデータに基づいており、「アリセプト®錠23mg」は認知機能の評価において、「アリセプト®錠10mg」に優る有効性を示しました。本試験は、高度に障害された認知機能を評価するSIB(Severe Impairment Battery)と、全般的な臨床症状の変化を評価するCIBIC plus(Clinician's Interview-Based Impression of Change Plus Caregiver Input)の2つを主要評価項目として実施されました。その結果、「アリセプト®錠23mg」は「アリセプト®錠10mg」に比べ、SIBにおいて統計学的に有意な効果を示しました。一方、CIBIC plus においては統計学的な有意差を示すレベルには到っておりません。SIB(高得点ほど改善)は、23 mg投与群で2.6±0.58、10mg投与群で0.4±0.66、その差は2.2 (p=0.0001)、一方CIBIC plus(低得点ほど改善)は、23mg投与群で4.23±1.07、10mg投与群で4.29±1.07、その差は0.06 (p=0.1789) でした。

この試験で観察された有害事象(5%以上)は、アセチルコリン・エステラーゼ阻害剤に一般的に見られる吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振などの消化器系症状が主なものでした。

ADは、認知機能に影響を及ぼす退行性疾患で、加齢が最も大きなリスク・ファクターと考えられており、65歳以上では5年ごとにAD患者様数が2倍になると言われています。米国では、2050年までにAD患者様が約1,350万人までに増加し、そのうち、約77%(1,040万人)が中等度もしくは高度まで進行すると推定されています。このように、高齢化の進行にともないADに対する価値ある治療薬を開発することが、これまで以上に重要となっています。

なお、今回の承認により「アリセプト®錠 23mg」に関しては、3年間のデータ保護期間が付与されることになります。

「アリセプト®錠23mg」の販売はエーザイ・インクが、アリセプト・ブランドにおけるパートナーである米国ファイザー社のプロモーション協力を得て行います。

今回の「アリセプト®錠23mg」の承認取得は、軽度から高度までのAD患者様とその介護者の方々に、「アリセプト®」の5mg、10mg、23mgという複数の規格・剤形をもって、新たな治療選択肢をお届けする当社のコミットメントを示すものです。当社は、これまでの経験を活かし、AD患者様とその介護者の方々のさらなるQOL向上につとめてまいります。

以上

[参考資料として326試験の概要、用語解説、アリセプト®についての製品情報を添付しています]

<参考資料>

1. 326試験について

米国FDAへの申請は、326試験をベースとしており、2010年度のICAD (The Alzheimer's Association International Conference on Alzheimer's Disease)でそのデータの概要が発表された。同学会ではSIB、 CIBIC plus の全症例、安全性などに関して報告された。

試験概要:

  • 1)
    二重盲検、無作為化、実薬対照比較試験
  • 2)
    3カ月以上「アリセプト®錠10mg」の投与を受けた中等度・高度AD患者様1,467名がエンロール
  • 3)
    「アリセプト®錠23mg」と既存製品「アリセプト®錠10mg」の比較試験
  • 4)
    主要評価項目: SIBとCIBIC plus
  • 5)
    両主要評価項目について、試験開始時点から24週目までの患者様の総合評価点変化を計算した

試験結果:

  • 1)
    SIBにおける総合評価点の変化は、10mg投与群0.4±0.66に対して、23mg投与群2.6±0.58 (Intent-to- Treat Analysis (ITT解析)、p=0.0001)であった(高得点ほど改善)
  • 2)
    CIBIC plus総合評価点数の変化は、10mg投与群4.29±1.07に対して、23mg投与群4.23±1.07(ITT解析、 p=0.1789)であった (低得点ほど改善)
  • 3)
    高頻度(5%以上)で生じた有害事象の23mg投与群 :10mg投与群は、吐き気(11.8%:3.4%)、嘔吐(9.2%:2.5%)、下痢(8.3%:5.3%)、食欲不振(5.3%:1.7%)など、アセチルコリン・エステラーゼ阻害剤に一般的に見られる消化器系症状が主なものであった

2.SIB (Severe Impairment Battery)

高度に障害された認知機能を評価するための検査。社会的相互行為、記憶、見当識、注意、実行、視空間能力、言語、構成、名前への志向の9項目から構成され、患者との面接により評価する。得点の範囲は100~0点(正常→重度)である。

3.CIBIC plus (Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input)

患者及び介護者との面接により、全般的な臨床症状の変化を評価するための検査。状態のあらまし、認知機能、行動、日常生活動作能力の4領域の患者の状態を、「1.大幅な改善」~「7.大幅な悪化」及び「判定不能」で評価する。

4.「アリセプト®」について

「アリセプト®」は当社が独自に創製したアセチルコリン・エステラーゼ阻害剤であり、1996年11月に世界に先駆け米国で承認された。神経伝達物質のアセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリン・エステラーゼを阻害することにより、脳内アセチルコリン量を増加させ、認知症症状の進行を抑制する薬剤。現在90カ国以上で承認されており、最も汎用されている認知症治療剤。米国において、FDAから承認された軽度・中等度・高度の全てのステージをカバーする唯一のAD治療薬である。現在、米国では、錠剤(5mg、10mg)、口腔内崩壊錠(5mg、10mg)が販売されている。高用量の新規製剤「アリセプト®錠23mg」は、8月初旬に新発売される予定。「アリセプト®」の米国での販売はエーザイ・インクが、米国ファイザー社のプロモーション協力を得て行なっている。