E7389、前治療歴の多い進行乳がん患者に抗腫瘍効果を示すフェーズⅡ試験で、グレード3、4の末梢神経障害発生率の低さを含む、良好な忍容性プロファイルであったことをASCOで発表

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)が開発中である、がん化学療法剤E7389 (eribulin mesylate)は、多施設フェーズⅡ試験において、前治療歴の多い局所進行性または転移性乳がんに対する抗腫瘍効果を示しました。本試験においては、グレード3(高度)の末梢神経障害の発生率が低い上、グレード4(生命を脅かすまたは活動不能)は認められず、E7389が扱いやすい忍容性プロファイルを有することが認められました。この臨床試験成績は、シカゴで開催される第44回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology、以下ASCO)年次総会において、6月2日(月)午後2時(米国現地時間)より発表されます。(抄録番号1084)

この結果について、ワイルコーネル医科大学(米国ニューヨーク市)の治験責任医師であるLinda T. Vahdat医師は「既に複数の抗がん剤治療を受けたことのある進行性乳がん患者には治療法の選択肢が限られていることを考えると、アントラサイクリン、タキサン、カペシタビンなどを含む、中央値で4種類の前治療を受けた患者を対象に実施された、本試験でのE7389の抗腫瘍効果には期待が持てます。」と語っています。

<211試験について>

211試験は、E7389の有効性、安全性を評価するために行ったフェーズⅡ、非盲検、単群試験です。試験の対象は、前治療としてアントラサイクリン、タキサン、カペシタビンなどの投与を受けていた局所進行性または転移性乳がん患者で、直近の治療を受けて6ヵ月以内に病状悪化が記録された、難治症例です。

本試験の登録患者299例のうち、291例にE7389が投与されました。患者の年齢幅は26~80歳で、中央値は56歳でした。E7389の投与は、21日を1サイクルとし、1日目と8日目に1.4mg/m2を2~5分で静脈内投与を行っています。患者へのE7389投与サイクル数は1~27サイクルで、中央値で4サイクルでした。本剤では、過敏症を予防するための前投薬の必要はありません。

主要な対象患者基準を満たした患者数は269例で、その中で、E7389を中央値で4サイクル投与した患者の第三者評価による奏功率(Overall Response Rate、以下ORR)は9.3%(全例が部分奏功[Partial Responses、以下PR]、95%信頼区間[Confidence Interval、以下CI]は6.1~13.4%)で、治験責任医師が評価したORRは14.1%(1例が完全寛解[Complete Responses、以下CR]、95%CIが10.2~18.9%)でした。患者のほぼ半数(46.5%)が、E7389を投与した後、病勢安定[Stable Disease、以下SD]を示し、臨床的有用性([Clinical Benefit Rate, 以下CBR]、CR+PR+SDが6ヵ月以上)は17.1%(95%CIが12.8~22.1%)でした。

奏功期間は42~258日で、中央値は4.2ヵ月(126日、95%CIが86~147)でした。無増悪生存期間[Progression-Free Survival、以下PFS]は1~398日で、中央値は2.6ヵ月(78日)。全生存期間[Overall Survival、以下OS]は19~604日で、中央値は10.3ヵ月(315日、95%CIが279~350)でした。6ヵ月PFSとOS率は、それぞれ16.0%(95%CIが8.6~17.0)と72.3%(95%CIが66.9~77.6)でした。

安全性解析では、E7389の投与患者全員291例を対象としています。最も高い頻度で報告されたグレード3(高度)またはグレード4(生命を脅かすまたは活動不能)の有害事象は、好中球減少(好中球数が減少した状態)が54%、発熱性好中球減少が5.5%、白血球減少(白血球数が減少した状態)が14%、および脱力感/疲労感(10%、グレード4は認められず)でした。グレード3の末梢神経障害(日常生活に支障がある)が、患者の5.5%に報告されました。しかし、グレード4(生命を脅かす、活動不能/動作不能)の末梢神経障害は報告されませんでした。また、グレード2以下の末梢神経障害を有していた患者も本治験に登録されていますが、グレード2の末梢神経障害とその悪化との相関は認められませんでした。

本治験の治験医師である、テキサス癌協会、ベイラーサーモンス癌センター(米国テキサス州)のJoanne Blum医師は「本試験においてE7389は、特に末梢神経障害の発生率の低いことから、良好な忍容性プロファイルを有すると考えられます。神経障害が報告された症例は、いずれも日常生活に障害を来すものではなく、E7389が承認されれば、進行性乳がんの治療に有力な手段が加わることになります」と述べています。

[参考資料として、E7389の説明を添付しております]

<参考資料>

E7389 (erybulin mesylate)について

E7389は、新たな化学療法剤の候補として当社が開発中の新規化合物です。E7389は、細胞分裂など様々な細胞内プロセスに関与する微小管の伸長を阻害します。E7389は、1992年にクロイソカイメンから初めて単離された天然化合物ハリコンドリンBの合成類縁体です。

以上