「LEQEMBI®」(レカネマブ)、早期アルツハイマー病治療剤として、カナダ保健省より承認を取得カナダにおけるレカネマブの適応は、アミロイド病理が確認されたApoEε4が非保有またはヘテロ接合体である成人におけるアルツハイマー病による軽度認知障害または軽度認知症の治療

エーザイ株式会社

バイオジェン・インク

  

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:Christopher A. Viehbacher、以下 バイオジェン)は、このたび、ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体モノクローナル抗体「レケンビ®」(一般名:レカネマブ)について、「アミロイド病理が確認されたApoEε4*が非保有またはヘテロ接合体である成人におけるアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害または軽度認知症(早期AD)の治療」を適応として、カナダ保健省より条件付き承認(NOC/c:Notice of Compliance with Conditions)を取得したことをお知らせします。本剤は、ADの根本原因を標的とした、カナダで承認された初めての早期AD治療剤となります。

 

 「レケンビ」は、ADにおける可溶性Aβ凝集体(プロトフィブリル**)に選択的に結合するとともに、Aβプラークの主要構成成分である不溶性Aβ凝集体(フィブリル)にも結合し、脳内のAβプロトフィブリルおよびAβプラークを減少させると考えられています。本剤はADの進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを実証し、承認された世界で初めての治療薬です。「レケンビ」は、これまでに日本、米国、欧州(EU)、中国、韓国、台湾、サウジアラビアなど51の国と地域で承認を取得し、9カ国で承認申請を行っています。

 

 今回の承認は、エーザイが実施した大規模グローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験において「レケンビ」は主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました1,2。今回の承認は、臨床的有用性を検証する追加データの提出を条件としており、エーザイは、実際の臨床の現場で得られた臨床評価データを提出する予定です。

 

 ADは認知症の中で最も多く、認知症全体の60~80%を占めています3。カナダにおける認知症の当事者様は2025年1月1日時点で77.1万人以上と推計され、2030年には約100万人、2050年には170万人以上に増加すると予測されています4。また、認知症の当事者様への家族や友人の介護の時間は年間で29万人のフルタイム雇用に相当し、2050年には69万人に増加すると予測されています4

 

 レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。カナダにおいては、エーザイ・リミテッドが販売および情報提供活動を行います。エーザイとバイオジェンは医療関係者をはじめとする関係者の方々と協働し、ADの早期治療に向けて全力を尽くしてまいります。

 

* ApoE(アポリポプロテインE)は、人間の脂質代謝に関与するタンパク質で、ADに関与していると考えられています。ApoEε4遺伝子を1つだけ持つ人(ヘテロ接合体)やApoEε4 遺伝子を持たない人(非保有者)は、ApoEε4 遺伝子を2つ持つ人(ホモ接合体)よりもARIAを発症する可能性が低くなります5

** プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります6。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています7

 

以上

  

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  

<参考資料>

  1. 1.    レケンビについて

 「レケンビ」(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。

 

 「レケンビ」の承認は、エーザイが実施した大規模グローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験において「レケンビ」は主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました1,2。主要評価項目は、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)であり、「レケンビ」はCDR-SBにおける18カ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制しました。また、副次評価項目の一つである、衣服の着脱、食事、地域活動への参加など当事者様が自立して生活する能力を介護者が評価するAD Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment(ADCS MCI-ADL)においては、プラセボと比較して37%の統計学的に有意なベネフィットが認められました。なお、「レケンビ」投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒でした。

 

 「レケンビ」は、ADによる軽度認知障害または軽度認知症に係る適応で、日本、米国、欧州(EU)、中国、韓国、台湾、サウジアラビアなど51の国と地域で承認を取得し、9カ国で申請を行っています。18カ月間の隔週投与による初期治療後の4週に1回のIV維持投与について、米国、中国等において承認を取得し、5つの国と地域で申請中です。「レケンビ」のこれらの国における承認は、エーザイが実施したグローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータ等に基づくものであり、本試験でレカネマブは主要評価項目とすべての主要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました1, 5。米国において、2025年8月に皮下注射製剤「LEQEMBI IQLIK」による維持投与の承認を取得し、2025年9月に「LEQEMBI IQLIK」による初期治療からの投与を可能とする段階的申請も開始しました。

 

 2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

 

  1. 2.    エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

 

  1. 3.    エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

 2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

 

  1. 4.    エーザイ株式会社について

 エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントXLinkedInFacebookでも情報公開しています。

 

  1. 5.    バイオジェン・インクについて

 1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。

 バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体XLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

 

 

Biogen Safe Harbor

This news release contains forward-looking statements, including about the potential clinical effects of lecanemab (LEQEMBI); the potential benefits, safety and efficacy of LEQEMBI; potential regulatory discussions, submissions and approvals and the timing thereof; the treatment of Alzheimer's disease; the anticipated benefits and potential of Biogen's collaboration arrangements with Eisai; the potential of Biogen's commercial business and pipeline programs, including  lecanemab; and risks and uncertainties associated with drug development and commercialization. These statements may be identified by words such as "aim," "anticipate," "believe," "could," "estimate," "expect," "forecast," "intend," "may," "plan," "possible," "potential," "will," "would" and other words and terms of similar meaning. Drug development and commercialization involve a high degree of risk, and only a small number of research and development programs result in commercialization of a product. Results in early-stage clinical studies may not be indicative of full results or results from later stage or larger scale clinical studies and do not ensure regulatory approval. You should not place undue reliance on these statements.

 

These statements involve risks and uncertainties that could cause actual results to differ materially from those reflected in such statements, including without limitation unexpected concerns that may arise from additional data, analysis or results obtained during clinical studies; the occurrence of adverse safety events; risks of unexpected costs or delays; the risk of other unexpected hurdles; regulatory submissions may take longer or be more difficult to complete than expected; regulatory authorities may require additional information or further studies, or may fail or refuse to approve or may delay approval of Biogen's drug candidates, including lecanemab; actual timing and content of submissions to and decisions made by the regulatory authorities regarding lecanemab; uncertainty of success in the development and potential commercialization of lecanemab; failure to protect and enforce Biogen's data, intellectual property and other proprietary rights and uncertainties relating to intellectual property claims and challenges; product liability claims; and third party collaboration risks, results of operations and financial condition. The foregoing sets forth many, but not all, of the factors that could cause actual results to differ from Biogen's expectations in any forward-looking statement. Investors should consider this cautionary statement as well as the risk factors identified in Biogen's most recent annual or quarterly report and in other reports Biogen has filed with the U.S. Securities and Exchange Commission. These statements speak only as of the date of this news release. Biogen does not undertake any obligation to publicly update any forward-looking statements.

  

  

参考文献