抗がん剤タゼメトスタットが日本において、がん化学療法後に増悪したINI1陰性の切除不能な類上皮肉腫を対象として、厚生労働省より希少疾病用医薬品に指定

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、EZH21阻害剤タゼメトスタット臭化水素酸塩(一般名、製品名:「タズベリク®錠200mg」、以下 タゼメトスタット)について、がん化学療法後に増悪したINI1※2陰性の切除不能な類上皮肉腫を対象として、厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されたことをお知らせします。

 

 類上皮肉腫は、希少がんである悪性軟部腫瘍の一種です。悪性軟部腫瘍における類上皮肉腫の割合は約1%であるとされ1、日本において2006年から2015年の10年間に国内の主要な病院から登録された症例数は174例でした2。類上皮肉腫では90%以上でEZH2の抑制因子であるINI1の欠損が認められています3。その結果、EZH2が活性化され、発症および悪性化に至ると考えられています。類上皮肉腫の治療選択肢は限られており、アンメット・メディカル・ニーズが極めて高い疾患です。

 

 タゼメトスタットは、日本において、2021年6月に「再発又は難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」の適応で承認を取得しています。   がん化学療法後に増悪したINI1陰性の切除不能な類上皮肉腫については、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院が主導しているタゼメトスタットの臨床第Ⅱ相医師主導治験(A phase II trial of Tazemetostat for patients with unresectable or metastatic epithelioid sarcoma: TAZETTA試験)が進行中です。

 

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた画期的な新薬創出をめざしています。世界のがん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

以上

 

※1 ヒストンメチル基転移酵素の一種で、ヒストンH3の27番目のリジン残基(H3K27)をメチル化することで、遺伝子発現を制御するタンパク質です。

※2 SWI/SNFクロマチン複合体(クロマチン構造を変化させて遺伝子の働きを調節するタンパク質複合体)を構成するタンパク質の一つで、遺伝子発現の調節に関与しています。


 <参考資料>

1. タゼメトスタット臭化水素酸塩(一般名、製品名:「タズベリク錠200mg」)について

 タゼメトスタットは、当社と、Ipsenの子会社であるEpizyme, Inc.の提携契約に基づき、同社が独自に持つ創薬プラットフォームを活用して共同で研究開発を行ってきたEZH2を標的とするファースト・イン・クラスの経口低分子阻害剤です。本剤はEZH2を選択的、かつS-アデノシルメチオニン(メチル基供与体)と競合的に阻害することでH3K27のメチル化を抑制し、がん関連遺伝子の発現を制御します4。本剤の開発および商業化について、日本においては当社が独占的権利を有しており、2021年6月に「再発又は難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」の適応で承認を取得しています。米国においては、Epizyme, Inc.が開発を継続しており、以下の承認された適応において販売しています。2020年1月に「成人または16歳以上の小児における根治切除不適応の転移性または局所進行性類上皮肉腫」、同年6月には、「少なくとも2レジメン以上の前治療歴があり、FDAが承認したEZH2遺伝子変異の検査で陽性と診断された成人の再発・難治性の濾胞性リンパ腫」、および「他に治療手段がない成人の再発・難治性の濾胞性リンパ腫」の適応で迅速承認を受けています。本剤は、2025年3月に中国本土において、「成人のEZH2遺伝子変異陽性、かつ少なくとも2種類の全身療法治療歴のある再発性または難治性濾胞性リンパ腫」の適応で、条件付きで承認されています。

 

1 Asano N et al. Prognostic Value of Relevant Clinicopathologic Variables in Epithelioid Sarcoma: A Multi-Institutional Retrospective Study of 44 Patients. Ann Surg Oncol. 2015;22(8):2624–32.

https://link.springer.com/content/pdf/10.1245/s10434-014-4294-1.pdf.

2 国立研究開発法人国立がん研究センターHP

類上皮肉腫患者を対象としたEZH2阻害薬(E7438)の全国4施設共同第2相医師主導治験開始

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2023/0622/index.html. Last accessed: July 2025.

3 Hornick JL et al. Loss of INI1 expression is characteristic of both conventional and proximal-type epithelioid sarcoma. Am J Surg Pathol. 2009 Apr;33(4):542–50.

https://journals.lww.com/ajsp/abstract/2009/04000/loss_of_ini1_expression_is_characteristic_of_both.8.aspx.

4 Sarah K. Knutson, Satoshi Kawano, Yukinori Minoshima, et al. Selective Inhibition of EZH2 by EPZ-6438 Leads to Potent Antitumor Activity in EZH2-Mutant Non-Hodgkin Lymphoma. Molecular Cancer Therapeutics. 2014 Apr; 13(4):842–854.

https://aacrjournals.org/mct/article/13/4/842/91698/Selective-Inhibition-of-EZH2-by-EPZ-6438-Leads-to.