「レンビマ®」(レンバチニブ)、ペムブロリズマブおよび肝動脈化学塞栓療法(TACE)との併用療法による切除不能な非転移性肝細胞がんに係る適応で、中国における承認を取得

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)は、このたび、自社創製のチロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、抗PD-1抗体ペムブロリズマブおよび肝動脈化学塞栓療法(Transarterial Chemoembolization:TACE)との併用療法による切除不能な非転移性肝細胞がんに係る適応で、中国国家薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことをお知らせします。

 

 本承認は、臨床第Ⅲ相LEAP-012試験の中間解析結果に基づいています。本試験結果は、2024年9月に開催された欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)年次総会2024で発表され1、2025年1月にThe Lancetに掲載されました2。本試験において、「レンビマ」とペムブロリズマブにTACEを加えた併用療法(本併用療法)は、TACE単独療法と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(Progression-Free Survival:PFS)について統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、病勢進行または死亡のリスクを34%減少させました(ハザード比[Hazard Ratio:HR]=0.66 [95%信頼区間(Confidence Interval:CI)、0.51-0.84];p=0.0002)2。PFSの中央値は、本併用療法群で14.6カ月(95% CI、12.6-16.7)であり、TACE単独療法群では10.0カ月(95% CI、8.1-12.2)でした2。本解析では、もう一つの主要評価項目である全生存期間(Overall Survival:OS)についても、本併用療法は、TACE単独療法と比較して改善傾向を示しました(HR=0.80 [95% CI、0.57-1.11];p=0.087)2

 

 本併用療法は237例の患者様に投与され、TACE単独療法は241例でした2。有害事象(Treatment- Emergent Adverse Events:TEAEs)は、本併用療法では99.6%(236例)、TACE単独療法では96.7%(233例)発生し、TEAEsにより両治験薬の投与が中止されたのは、それぞれ13.1%(31例)と4.1%(10例)でした2。グレード3、4または5のTEAEsは、本併用療法では82.3%(195例)で発生し、TACE単独療法では47.7%(115例)でした2。また、TEAEsによる死亡は、本併用療法で4.2%(10例)、TACE単独療法で2.5%(6例)でした2

 

 肝臓がんは、世界において、がん関連死亡の主な原因の一つです3。肝臓がんの新規罹患者数は、2022年に世界で86万5千人以上、中国で36万7千人以上と推定され、世界で75万7千人以上、中国で31万6千人以上が亡くなったとされており、新規罹患者数、死亡数共に、中国は世界の40%以上を占めると推定されています3,4。肝細胞がんは肝がんのうち、最も発生頻度の高いタイプのがんで、原発性肝がんの9割を占めるとされています5。TACEは長年にわたり、切除不能な非転移性肝細胞がん患者様に対する標準治療として使用されてきましたが、多くの患者様が1年以内に病勢進行となるため6,7,8,9、新たな治療選択肢が望まれていました。

 

 「レンビマ」単剤療法は、日本、米国、欧州、中国など80カ国以上において、切除不能肝細胞がんに係る適応で承認を取得しており、これまで多くの患者様貢献を果たしてきました。今回の承認により、「レンビマ」による中国における肝細胞患者様への貢献のさらなる拡大が期待されます。

 

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた画期的な新薬創出をめざしています。当社は、「レンビマ」によるがん治療の可能性を引き続き追求し、世界のがん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

 

 「レンビマ」について、当社は、2018年3月にMerck & Co., Inc., Rahway(北米以外ではMSD)とグローバルな共同開発と共同販促を行う戦略的提携契約を締結しています。

 

*TACE単独療法:TACE療法に加えて、「レンビマ」とペムブロリズマブに対応するプラセボ経口剤とプラセボ注射剤をそれぞれ投与

 

 

以上

  

<参考資料>

  1. 1. LEAP-012試験について

 本試験(ClinicalTrials.gov, NCT04246177)は、切除不能な非転移性肝細胞がんを対象として、「レンビマ」とペムブロリズマブにTACEを加えた併用療法をTACE単独療法と比較して評価する、多施設共同、無作為化、二重盲検の臨床第Ⅲ相試験です。主要評価項目は、合計で最大10個の標的病変を評価できるように一部調整したRECISTv1.1(固形がんに対する腫瘍径の変化を効果判定に用いる評価基準であり、本試験における肝内新病変は、LI-RADS5[CT/MRIを用いた肝細胞がんの画像診断基準]の基準を満たす必要がある)に基づく盲検下独立中央画像判定によるPFS、およびOSでした。副次評価項目は、上述のRECISTv1.1および modified RECIST(治療による腫瘍壊死の評価と生存腫瘍の評価を可能とした評価基準)に基づく盲検下独立中央画像判定による奏効率、病勢コントロール率、奏効期間、無増悪期間、modified RECISTに基づく独立中央画像判定によるPFS、ならびに安全性等でした。本試験では、480人の被験者様は、下記のように1:1で無作為に割り付けられました。

  • 「レンビマ」(12 mg [スクリーニング時の体重が60 kg以上の場合]または8 mg[スクリーニング時の体重が60 kg未満の場合]、1日1回経口投与)+ペムブロリズマブ(400 mg、6週ごと静脈内投与)+TACE(肝動脈化学塞栓療法の基本手順に従って実施)または、
  • プラセボ経口剤(1日1回)+プラセボ静注剤(6週ごと)+TACE

 すべての治験薬は、プロトコルで設定された中止基準を満たすまで投与されました。ペムブロリズマブの投与は「レンビマ」との併用で、最長で2年間(約18回の投与)とされました。2年の併用療法を終了した後に、「レンビマ」は、プロトコルで設定された中止基準を満たすまで、単剤療法としての投与が可能でした。

 

  1. 2. 「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性を示しました。「レンビマ」が取得している適応は以下のとおりです。

 

甲状腺がん

・ 単剤療法の適応(日本、米国、欧州、中国、アジアなどで承認を取得)

日本:根治切除不能な甲状腺癌

米国:局所再発、転移性、または進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん

欧州:成人での放射性ヨウ素治療抵抗性の進行性又は再発の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)

 

肝細胞がん

・ 単剤療法の適応(日本、米国、欧州、中国、アジアなどで承認を取得)

日本:切除不能な肝細胞癌

米国:切除不能な肝細胞がんに対する一次治療

欧州:進行性または切除不能な肝細胞がんの成人患者に対する一次治療

 

胸腺がん

・ 単剤療法の適応(日本で承認を取得)

日本:切除不能な胸腺癌

 

腎細胞がん(英国を除く欧州では、「Kisplyx®」の製品名で発売)

・ エベロリムスとの併用療法の適応(米国、欧州、アジアなどで承認を取得)

米国:1レジメンの血管新生阻害薬の前治療歴を有する成人での進行腎細胞がん

欧州:1レジメンの血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とした薬剤の前治療歴を有する成人での進行腎細胞がん

・ ペムブロリズマブとの併用療法の適応(日本、米国、欧州、アジアなどで承認を取得)

日本:根治切除不能又は転移性の腎細胞癌

米国:成人の進行腎細胞がんに対する一次治療

欧州:成人の進行腎細胞がんに対する一次治療

 

子宮内膜がん

・ ペムブロリズマブとの併用療法の適応(日本、米国、欧州、アジアなどで承認を取得)

日本:がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌

米国:治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有さない進行性子宮内膜がん

欧州:治療ラインに関わらず、プラチナ製剤を含む前治療中またはその後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な成人の進行性または再発性子宮内膜がん