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- 2025年7月22日
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、7月27日から31日までカナダ・トロントおよびバーチャルで開催されるアルツハイマー病協会国際会議2025(AAIC2025)において、抗Aβプロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名、製品名「レケンビ®」、米国ブランド名「LEQEMBI®」)および抗MTBRタウ抗体etalanetug(一般名、開発コード:E2814)をはじめとする当社のアルツハイマー病(AD)パイプラインに関する最新研究成果について、口頭発表21演題、ポスター発表24演題を発表することをお知らせします。また当社はシンポジウム3件を主催すると共にレカネマブの製品シアターを2件行います。
レカネマブに関する主な口頭発表
- ・4年間の長期投与データ(7月30日午前8:00~8:45、カナダ東部夏時間・以下同様): 「Developing Topics セッション:革新的な治療アプローチ」において、早期ADを対象とした臨床第Ⅲ相Clarity AD非盲検長期継続投与試験(OLE)におけるレカネマブの4年間の長期投与の結果を発表します。
- ・皮下注射による維持療法(7月30日午前9:00~10:30):「Featured Researchセッション」において、レカネマブの継続治療のための新規かつ簡便な選択肢となる可能性がある皮下注射製剤による維持投与に関するデータを発表します。
- ・実臨床における症例研究(7月27日午前9:00~10:30):「Developing Topicsセッション」において、レカネマブの承認から2年が経過した米国の様々な実臨床により得られた症例研究と当事者様の治療パスウェイを紹介します。
レカネマブに関する主なポスター発表
- ・7月28日ポスター発表(午前7:30~午後4:15)において、脳脊髄液(CSF)中のAβプロトフィブリルを測定するために開発された新規高感度免疫測定法を用いたClarity AD試験で採取したサンプルの分析結果を発表します。
E2814に関する主な口頭発表
- ・「Featured Researchセッション」において(7月30日午後4:15~5:45)、抗タウ抗体etalanetug(E2814)と基礎療法としてのレカネマブを用いた優性遺伝性AD当事者様を対象としたDIAN-TU-001 NexGen試験におけるベースライン特性および6カ月間のレカネマブ治療によるアミロイドPETおよび安全性への影響に関する予備的な結果を発表します。
エーザイのチーフクリニカルオフィサーであるLynn Kramer, M.D.は、「AAIC2025において、レカネマブのOLEにおける長期的な知見、実臨床の症例研究、そしてADの治療継続を容易にする可能性がある皮下注射製剤と投与レジメンの結果を発表します。また、ADの進行抑制や予防を検討するためのレカネマブとetalanetugの併用療法DIAN-TU-001 NexGen試験の予備的な結果も発表します。デュアル アクションを有するレカネマブについて様々な臨床現場での使用経験を積み重ねるとともに、ADの診断と治療を改善するための新たな道を探求し続ける中で、私たちは未来に希望を抱いています。プラーク沈着前に始まり、プラーク除去後も継続する進行性の神経毒性プロセスを有する疾患であるADの当事者様とそのご家族のために、私たちは引き続き尽力してまいります」と述べています。
主なFeatured Researchセッション
Featured Researchセッション#1-31-FRS-A:実臨床における抗Aβ療法:リアルワールドエビデンスと導入の検討 (アブストラクト:103048)
7月27日(日)午後4:15~5:45(カナダ東部夏時間・以下同様)
セッションプログラム |
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報告された結果に基づくレカネマブとドナネマブのARIA結果の間接的な治療間の比較 |
Featured Researchセッション#4-13-FRS-C:維持投与のためのレカネマブ皮下注射製剤:早期ADの継続治療における新規の簡便な選択肢となる可能性
7月30日(水)午前9:00~10:30
セッションプログラム |
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レカネマブ皮下注射製剤の開発:レカネマブ皮下注射製剤と静注製剤の同等性の確立(アブストラクト:104694) |
早期ADにおける維持投与のためのレカネマブ皮下注射製剤(アブストラクト:104693) |
レカネマブ皮下注射製剤の臨床および薬理プロファイル(アブストラクト:104691) |
レカネマブ皮下注射製剤:予想されるベネフィットと治療における位置づけ(アブストラクト:104695) |
Featured Researchセッション#4-13-FRS-B:優性遺伝AD当事者様における抗タウ抗体Etalanetug(E2814)とレカネマブの併用:DIAN-TU-001 NexGen試験のベースライン特性とレカネマブ6カ月投与時のアミロイドPETおよび安全性への影響の予備的な評価
7月30日(水)午後4:15~5:45
セッションプログラム |
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DIAN-TU-001試験(Tau NexGen)の理論的根拠と被験者登録の経験(アブストラクト:105298) |
DIAN-TU-001試験におけるベースライン時の被験者の臨床的特性(アブストラクト:105299) |
優性遺伝ADに対する第II/III相DIAN-TU-001 Tau NexGen試験におけるベースライン時の被験者の画像特性(アブストラクト:105301) |
優性遺伝ADに対するレカネマブ投与:DIAN-TU-001 Tau NexGen試験の開始6カ月後におけるアミロイドPETの結果(アブストラクト:105303) |
DIAN-TU-001 Tau NexGen試験における投与開始6カ月のレカネマブの安全性(アブストラクト:105304) |
主なDeveloping Topicsセッション
リアルワールドデータ (アブストラクト:108809)
7月27日(日)午前8:00~8:45
セッションプログラム |
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当事者様、ケアパートナー、医療従事者専門家の早期AD用のレカネマブ皮下投与オートインジェクターに関する意見 |
レカネマブ承認から2年:米国の多様な臨床現場におけるリアルワールド症例シリーズと当事者様の治療パスウェイに関する知見(アブストラクト:108605)
7月27日(日)午前9:00~10:30
セッションプログラム |
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米国における早期AD当事者様に対するレカネマブのリアルワールドでの使用:症例シリーズレビュー(アブストラクト:108599) |
人種、民族、地理的多様性を考慮したレカネマブのリアルワールドにおける使用(アブストラクト:108602) |
APOE ε4ホモ接合体および抗血栓療法を受けている当事者様におけるレカネマブの実際の使用(アブストラクト:108603) |
早期ADにおけるレカネマブに対する医師の満足度:米国の処方医によるリアルワールドでの考察(アブストラクト:108605) |
米国の早期AD当事者様におけるレカネマブ治療パスウェイに関するリアルワールドデータ(アブストラクト108606) |
米国の早期AD当事者様に対するレカネマブ治療パスウェイでの血液バイオマーカー(アブストラクト108607) |
革新的な治療法 (アブストラクト108905)
7月30日(水)午前8:00~8:45
セッションプログラム |
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早期ADにおけるClarity AD試験OLE:48カ月治療の初期解析結果 |
その他のFeatured ResearchおよびDeveloping Topicsセッション
アセット/プロジェクト、 発表日時 | アブストラクト番号、タイトル |
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バイオマーカー |
Featured Researchセッション、#2-17-FRS-A/アブストラクト102560:ADにおける性別によるリスク・保護ファクター |
レカネマブ |
Developing Topicsセッション:タウバイオマーカー/アブストラクト108909 |
臨床試験 |
Featured Researchセッション、#4-26-FRS-A:AD臨床試験の強化のための統計モデルと機械学習の革新的な活用/アブストラクト99560 |
ポスター発表
アセット/プロジェクト、 発表日 | アブストラクト番号、タイトル |
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レカネマブ |
アブストラクト106273 |
レカネマブ |
アブストラクト108789 |
レカネマブ |
アブストラクト108918 |
レカネマブ |
アブストラクト102018 |
レカネマブ |
アブストラクト101001 |
レカネマブ |
アブストラクト101388 |
レカネマブ |
アブストラクト101400 |
E2814 |
アブストラクト102696 |
E2025 |
アブストラクト96834 |
バイオマーカー・イメージング |
アブストラクト106362 |
バイオマーカー |
アブストラクト99857 |
バイオマーカー |
アブストラクト107031 |
バイオマーカー |
アブストラクト106893 |
バイオマーカー |
アブストラクト102553 |
バイオマーカー |
アブストラクト100424 |
バイオマーカー |
アブストラクト99804 |
バイオマーカー |
アブストラクト107102 |
バイオマーカー |
アブストラクト99842 |
バイオマーカー |
アブストラクト105257 |
AD一般 |
アブストラクト108093 |
AD一般 |
アブストラクト107058 |
AD一般 |
アブストラクト107045 |
AD一般 |
アブストラクト97026 |
AD一般 |
アブストラクト107009 |
ポスターの閲覧時間は、発表日の7:30~16:15に設定されています。
エーザイ主催シンポジウム
アセット/プロジェクト、 発表日時 | タイトル |
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AD一般 |
徐々に進行するADの病理:複数の病態への対処による継続的なベネフィット |
AD一般 |
脳のロックを解除:ADを内側から探る |
AD一般 |
ブレインヘルスナビゲーター - ADの効率的かつ効果的な診断と臨床ケアの道筋を確保 |
レカネマブ製品シアター
アセット/プロジェクト、 発表日時 | タイトル |
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レカネマブ |
早期診断、早期治療:ADによるMCI当事者様を特定し、より大きなベネフィットを得る |
レカネマブ |
AD早期ケアのベストプラクティス:スクリーニングから長期治療までのプラン作成 |
製品シアターでは、レカネマブの実臨床経験に基づいた発表を行い、この治療法の使用に関するベストプラクティスや専門家のガイダンスを聞く機会が得られます。
<参考資料>
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- 1. レカネマブ(一般名、ブランド名「レケンビ」)について
レカネマブは、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています1。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています2。
レカネマブは、日本、米国、中国、欧州(EU)、韓国、台湾等、45の国と地域で承認を取得しており、11カ国で申請中です。2025年1月、米国において、静注(IV)維持投与に関する生物製剤一部変更申請(sBLA)が承認され、レカネマブは18カ月間の隔週投与による初期治療後、10mg/kgの4週に1回の維持投与レジメンへの移行を検討するか、もしくは10mg/kgの隔週投与レジメンを継続することができるようになりました。皮下注射製剤維持投与について、2025年1月に生物製剤承認申請(BLA)が米国食品医薬品(FDA)に受理され、PDUFAアクションデートは2025年8月31日に設定されました。
2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。
- 2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
- 3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。
参考文献
- 1. Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z
- 2. Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.