抗がん剤「レミトロ®」の承認条件(全例調査)解除について

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、抗がん剤「レミトロ®点滴静注用300μg」(一般名:デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え))について、T細胞性リンパ腫に係る適応の承認条件となっていた特定使用成績調査(全例調査)に関し、厚生労働省から解除の通達を受領したことをお知らせします。

 

 「レミトロ」は、2021年3月に「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」、「再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫」を効能・効果として承認され、その際の承認条件として「国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。」が付記されていました。

 

 今回の承認条件解除は、当社が厚生労働省に提出した全例調査における安全性および有効性  データ(安全性解析対象症例111例、有効性解析対象症例85例)に基づいて、本剤の適正使用に必要な措置が講じられていると判断されたことによるものです。

 

 当社は、引き続き「レミトロ」の適正使用の推進および情報提供に努め、患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層の貢献をしてまいります。

 

 

以 上

 

 <参考資料>

  1. 1.   「レミトロ点滴静注用300μg」(一般名:デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え))について

 本剤は、インターロイキン-2(IL-2)とジフテリア毒素の部分配列からなる融合タンパク質です。本剤は腫瘍細胞表面上のIL-2受容体と特異的に結合し、細胞内に移行したジフテリア毒素断片がタンパク質合成を阻害することによって、細胞死を誘導し抗腫瘍効果を示すと考えられています。

 当社は、本剤について日本とアジアにおける独占的な開発および販売権を保持しています。

 

  1. 2.    末梢性T細胞リンパ腫(Peripheral T-Cell Lymphoma: PTCL)について

 PTCLは、T細胞非ホジキンリンパ腫の一種で、中悪性度に分類されます。進行期になってから発見されることが多く、リンパ節の腫れやしこり、発熱、大量の寝汗、体重減少などの症状がみられます。PTCLのうち、未分化リンパ腫キナーゼ(Anaplastic Lymphoma Kinase: ALK)陽性未分化大細胞リンパ腫は、20~30歳代で発症し、予後が良く治癒しやすいという特徴がありますが、その他の病型では60歳前後に発症することが多く、予後不良となる場合や治療が難しい場合があり、依然として、アンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患の一つです。日本におけるPTCLの患者様数は7,000人未満と推計されています1

 

  1. 3.    皮膚T細胞性リンパ腫(Cutaneous T-Cell Lymphoma: CTCL)について

 CTCLは、さまざまな病型を持つ皮膚原発性の非ホジキンリンパ腫の一種です。免疫機構に関与するリンパ球の一つであるT細胞の一部ががん化して、皮膚病変が起こり、疼痛や掻痒感などによって患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を低下させます。CTCLは、一般的に悪性度の低いリンパ腫ですが、緩徐に進行し、数年から十数年かけて腫瘍期へと進展します。腫瘍期に移行した場合は悪性度が高くなり、予後不良となるため、依然としてアンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患の一つです。日本におけるCTCLの患者様数は4,000人未満と推計されています1

 

  1. 4.    特定使用成績調査(全例調査)結果について

 特定使用成績調査とは、製造販売業者等が診療において、小児、高齢者、妊産婦、腎機能障害または肝機能障害を有する患者様、医薬品を長期に使用する患者様、その他医薬品を使用する条件が定められた患者様における副作用による疾病等の種類別の発現状況並びに品質、有効性および安全性に関する情報の検出または確認を行う調査のことをいいます。

 本調査は、承認条件に基づき、「レミトロ」の使用実態下における安全性、有効性およびそれらに影響を与える要因を把握することを目的に、中央登録方式にて実施されました。症例登録は2021年5月から2022年9月までに投与を開始した全症例を対象とし、国内86施設から111例の症例が収集されました。安全性について、解析対象症例111例における主な副作用(発現割合10%以上)は、「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加」22.5%、「毛細血管漏出症候群」21.6%、「アラニンアミノトランスフェラーゼ増加」21.6%、「血小板数減少」15.3%、「肝機能異常」14.4%、「発熱」13.5%でした。

有効性について、解析対象症例85例(PTCL 70例、CTCL 15例)における奏効率は、PTCLにおいて15.7%、CTCLにおいて20.0%であり、全体の奏効率は16.5%でした。

  

1. 令和5年の人口動態統計・患者調査(厚生労働省政策統括官付参事官付保健統計室 )