アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PD™2025)において、レカネマブの長期実臨床データやバイオマーカーをはじめとするアルツハイマー病の最新成果を発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、抗Aβプロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名、製品名「レケンビ®」、米国ブランド名「LEQEMBI®」)をはじめとする当社のアルツハイマー病(AD)ポートフォリオに関する最新研究成果について、口頭発表6演題を含む合計16演題を、4月1日から5日までオーストリア・ウィーンおよびバーチャルで開催される「アルツハイマー・パーキンソン病学会(International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases and related neurological disorders:AD/PD™ 2025)において発表することをお知らせします。

 

口頭・ポスター発表

 レカネマブについては、口頭3演題、ポスター1演題の発表を行います。米国におけるレカネマブの実臨床の最新のエビデンス、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験におけるアポリポタンパク質E ε4(ApoEε4)ヘテロ接合体保有者または非保有者における有効性と安全性の結果、Clarity AD試験OLEのアジア地域における部分集団解析結果などについて発表します。また、抗MTBRタウ抗体E2814のレカネマブとの併用療法による孤発性早期ADを対象とした臨床第Ⅱ相試験デザインや血漿中のリン酸化タウ217と非リン酸化タウ217の比率(pTau217比)を用いた将来の脳内タウの蓄積を予測する研究結果についても発表します。

 

エーザイ・シンポジウム:AD治療のギャップを解消する:病態生理学から治療戦略まで

 当社は、AD分野の著名な専門家によるADの病態生理学、治療の進歩、およびAD病態を標的とした治療法の臨床的意義についてシンポジウムを開催します。本シンポジウムで、ADの病態生理学と神経変性の主な要因とメカニズム、抗Aβ療法による標的アプローチの根拠、過去の医薬品開発からの教訓、新たな治療戦略などの考察が提供され、理解が深まることを期待しています。

 

エーザイ・シンポジウム:早期ADの転帰を変える:介入と管理の視点から

 ADの著名な臨床医を演者に迎え、様々な観点から早期AD治療の最新情報と洞察、将来の治療の方向性に関する情報を提供します。

    

AD/PD 2025における当社の開発品と研究に関する発表

 

■口頭発表

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開発品/トピック・セッション
日時(ヨーロッパ標準時間)
発表演題
レカネマブ
ADにおけるAβ標的療法
4月3日(木)15:05~15:20

米国におけるレカネマブの実臨床エビデンス

レカネマブ
Aβとタウ免疫療法
4月5日(土)11:10~11:25
レカネマブにより捕捉されるCSF中のAβプロトフィブリルは、他のプラーク関連バイオマーカーとは異なり、神経変性をより強く反映するバイオマーカーである

レカネマブ
AD治療薬開発の進歩

4月5日(土)16:40~16:55
早期AD当事者様治療のためのレカネマブ:アポリポタンパク質E ε4(ApoEε4)ヘテロ接合体保有者または非保有者における結果
E2814、レカネマブ
タウオパチー:タウを標的とする課題
4月5日(土)12:40~12:55
弧発性ADに対する抗Aβ抗体と抗タウ抗体の併用療法の臨床試験デザイン

バイオマーカー・イメージング
診断、予後、疾患進行のための体液バイオマーカーとマルチモーダルイメージング
4月3日(木)15:35~15:50

血漿pTau217比は、早期ADにおける脳タウ蓄積の進行を予測する
バイオマーカー・イメージング
オンデマンド・バーチャル口頭発表、ポスター
プレクリニカル期および早期ADにおける血漿pTau217比を用いた脳内Aβおよびタウレベルの同時予測

 

■ポスター発表

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アセット/プロジェクト演題タイトル
レカネマブ レカネマブ臨床第Ⅲ相Clarity AD試験のサブグループ解析:アジア地域における長期的有効性と安全性
タウ/タウオパチー タウシードを用いないヒトiPSC由来ニューロンの神経細胞内タウ凝集モデル
バイオマーカー・イメージング AD臨床研究におけるサロゲートエンドポイントとしてのタウPET導入の科学的および規制的側面の検討
バイオマーカー 早期ADの確定診断血液バイオマーカーのリアルワールドにおける導入を調査する前向き観察研究:実現可能性評価
バイオマーカー 早期ADの確定診断のための血液ベースのバイオマーカーの実際の使用に関する医療提供者の視点
AD一般 米国のメディケア受給者における軽度認知障害およびAD認知症当事者様の死亡率の自然経過
AD一般 フランスにおける抗Aβ療法の治療対象人口の推定
AD一般 ADにおける全般臨床症状の評価指標CDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)による現行の疾患進行モデルの比較
バイオマーカー
(シスメックス社と共同)
全自動免疫測定システムを用いた高特異性p-tau205アッセイの開発
バイオマーカー
(島津製作所と共同)
アミロイド陽性および臨床症状の進行予測における血漿Aβバイオマーカーの性能

 

■エーザイ・シンポジウム

インダストリーシンポジウム09
4月3日(木)18:40~20:15(ヨーロッパ標準時)

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シンポジウムタイトル:AD治療のギャップを解消する:病態生理学から治療戦略まで
セッション:
ADを引き起こす複雑な病態生理学的プロセス
AD治療の発展と標的戦略の時代
ADの疾患修飾治療の影響と考察

   

インダストリーシンポジウム12
4月4日(金)13:50~15:30(ヨーロッパ標準時)

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シンポジウムタイトル:早期ADの転帰を変える:介入と管理の視点から
セッション:
科学による解明:抗Aβ抗体による早期AD治療の向上
潜在能力を引き出す:早期介入の対象となる個人の特定
早期ADに対する多職種連携:最初の治療センターからの考察

   

 レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェン・インクが共同商業化・共同販促を行います。

 

*プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります1。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています2

  

以上

 

<参考資料>

1. レカネマブについて

 レカネマブ(一般名、製品名「レケンビ」、米国ブランド名:LEQEMBI))は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。

   

 レカネマブは、米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエル、アラブ首長国連邦、英国、メキシコ、マカオ、オマーンで承認を取得しています。欧州(EU)をはじめ、16の国と地域で承認申請を行っています。EUでは、2025年2月、欧州医薬品委員会が2024年11月に採択した本剤に対する承認勧告を維持すると結論付け、欧州医薬品委員会はレカネマブの販売承認に関する意思決定プロセスを進めています。2025年1月、米国において、静注(IV)維持投与に関する生物製剤一部変更申請(sBLA)が承認され、レカネマブは18カ月間の隔週投与による初期治療後、10mg/kgの4週に1回の維持投与レジメンへの移行を検討するか、もしくは10mg/kgの隔週投与レジメンを継続することができるようになりました。皮下注射製剤維持投与について、2025年1月に生物製剤承認申請(BLA)が米国食品医薬品(FDA)に受理され、PDUFAアクションデートは2025年8月31日に設定されました。

 

 2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

   

2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

  

  1. 3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

 2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

  

参考文献

  1. Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z

  2. Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.