抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」の欧州における承認申請について欧州医薬品委員会(CHMP)での審議が欧州医薬品庁(EMA)における手続き上の理由により延期

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、欧州(EU)において承認申請中のレカネマブ(一般名、製品名「レケンビ®」)について、3月19日に予定されていた欧州医薬品委員会(Committee for Medicinal Products for Human Use: CHMP)での口頭説明(Oral Explanation)が、欧州医薬品庁(European Medicines Agency: EMA)における手続き上の理由により実施されなかったことをお知らせします。

 

 本年3月14日、欧州連合司法裁判所(Court of Justice of the European Union)は、EMAの科学諮問グループ(Scientific Advisory Group:SAG)ミーティングの出席者の体制に関する判決を下しました。本判決は、SAGメンバーに関わる利益相反の扱いについてのEMAの方針に関するものであり、これにより、EMAは、同年3月11日に実施されたレカネマブに関する神経科学諮問グループ(Scientific Advisory Group on Neurology:SAG-N)ミーティングで得られた助言を取り消すことを決定しました。レカネマブに関するSAG-Nミーティングは改めて開催される予定ですが、開催時期については未定です。

 

 今回の判断は、すべてEMAにおける手続き上の理由によるものであり、レカネマブの承認申請とは何ら関係ありません。当社は、レカネマブの審議に向けて引き続きEMAと協力していきます。

 

 レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

 

以上


 

<参考資料> 

  1. 1. レカネマブ(一般名、ブランド名「レケンビ」)について

 レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。米国において、「レケンビ」は、2023年7月6日に米国食品医薬品局(FDA)よりフル承認を取得しました。米国における「レケンビ」の適応症はアルツハイマー病(AD)の治療です。「レケンビ」による治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性のデータはありません。日本においては、2023年9月25日に厚生労働省より「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能・効果で製造販売承認を取得しました。また、中国においても、2024年1月5日に国家薬品監督管理局(NMPA)より「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の治療」の適応で承認を取得しました。

 

 米国におけるフル承認に基づく処方情報、Boxed Warningはこちらから入手できます。

 

 レカネマブについては、欧州(EU)のほか、カナダ、英国(北アイルランドを除く)、オーストラリア、スイス、韓国、イスラエル等においても、それぞれ承認申請を行っています。イスラエルにおいては優先審査に、英国(北アイルランドを除く)においては、革新的な医薬品について上市までの時間を短縮することを目的としたILAP(Innovative Licensing and Access Pathway)に指定されています。

 

 レカネマブの皮下注射によるバイオアベイラビリティ試験は終了し、Clarity AD試験OLEにおいて皮下投与の評価が進行中です。維持投与レジメンは201試験OLEにおいて評価を行っています。

 

 2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

 

  1. 2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

 

  1. 3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

 2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。