第18回アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PD™2024)において、レカネマブをはじめとするアルツハイマー病に関する最新研究成果を発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、抗Aβプロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名、製品名「レケンビ®」、米国ブランド名「LEQEMBI®」)をはじめとする当社のアルツハイマー病(AD)ポートフォリオに関する最新研究成果について、口頭発表10演題を含む合計18演題を、3月5日から9日までポルトガル・リスボンおよびバーチャルで開催される「第18回アルツハイマー・パーキンソン病学会(International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases and related neurological disorders:AD/PD™ 2024)において発表することをお知らせします。

 

 レカネマブについては、口頭5演題、ポスター1演題の発表を行います。Aβの脳内蓄積が確認されたADによる軽度認知障害または軽度認知症(総称して早期AD)を対象とした臨床第Ⅲ相Clarity AD試験における、レカネマブ投与によるタウ蓄積の抑制効果、レカネマブの長期有効性の結果に加えて、複数の抗Aβ抗体の各Aβ種への結合特性の違いなどについて発表します。また、エーザイ・シンポジウム「Defining meaningful benefits to patients, caregivers, and healthcare systems in Alzheimer’s disease」を開催します。

 

 エーザイ Clinical Evidence Generation、デピュティ・チーフクリニカルオフィサーであるMichael Irizarry M.D.は、「臨床第Ⅲ相Clarity AD試験において、早期ADに対するレカネマブ投与は、プラセボと比較して臨床症状の悪化を抑制し、タウの蓄積も抑制しました。早期ADの診断と治療が早ければ早いほど、当事者様が受けるベネフィットがより大きくなることが期待されます。当社は、引き続き、レカネマブによる早期治療の重要性とそのエビデンスをサイエンス・コミュニティに共有してまいります」と述べています。

 

エーザイ・シンポジウム Defining meaningful benefits to patients, caregivers, and healthcare systems in Alzheimer’s disease

 当社は、AD分野の著名な専門家であるJeffrey Cummings博士、Robert Perneczky博士、Miia Kivipelto博士によるシンポジウムを行います。Jeffrey Cummings博士は本シンポジウムの座長を務め、AD治療がもたらす臨床的に意味のあるベネフィットとその評価のアプローチ法の進化の概要について講演します。Robert Perneczky博士は、ADの治療法開発において臨床的に意味のあるベネフィットの評価方法について、また、Miia Kivipelto博士は、様々なステークホルダーの視点からこれらの重要なベネフィットを評価する新しい統計的手法について発表します。(3月7日(木)11:10~12:50)

 また、当社のチーフクリニカルオフィサーであるLynn Kramer, M.D.が、3月7日に行われる「Aβ TARGETING THERAPIES IN AD 1」セッションで、「過去の比較データとシミュレーションにより得られたプラセボデータを用いた臨床開発の新規アプローチと将来の可能性」と題したプレナリー講演を行います。 

    

AD/PD 2024における当社の開発品と研究に関する発表

 

■口頭発表

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開発品/トピック・セッション
日時(ヨーロッパ標準時間)
発表演題
レカネマブ
Aβ標的療法AD01
3月7日(木)13:50~14:05

レカネマブ投与による早期ADの脳領域全体におけるタウ蓄積の抑制

レカネマブ
Aβ標的療法AD02
3月9日(土)8:40~8:55
レカネマブ、ドナネマブ、その他の抗Aβ抗体のAD脳における様々な形態のAβへの結合特性
(BioArcticによる発表)
レカネマブ
Aβ標的療法AD02
3月9日(土)9:10~9:25
早期AD治療薬レカネマブ:Clarity AD非盲検継続投与
試験を含む長期有効性の結果
レカネマブ
Aβ標的療法AD02
3月9日(土)9:25~9:40
高速原子間力顕微鏡で観察したAβプロトフィブリルの構造ダイナミクスとレカネマブの作用
レカネマブ
バーチャル口頭発表
VO028/#2922
Aβとタウの病態生理を組み込んだADの神経力学的定量システム薬理学(QSP)モデル

AD一般
液性バイオマーカー、イメージング、デジタルツール
3月6日(水)18:30~18:45

ベースライン時のデジタル認知機能評価による早期ADの長期的臨床進行の予測
認知症一般
AD、PD、LDB、およびCOVID-19の併存疾患と神経精神医学的影響
3月9日(土)15:55~16:10
軽度認知障害当事者におけるさまざまな認知症病因に関連する特徴と併存疾患
バイオマーカー
バーチャル口頭発表
VO039/#2970
ADにおいて、血漿p-tau217はAβ42/40比またはp-tau181に比べ、脳内アミロイドおよびタウPETとの高い関連性を示す
C2N・エーザイ共同研究
イメージング/バイオマーカー/診断
バーチャル口頭発表
VO045/#2859
全自動免疫測定法と免疫沈降質量分析法で定量された血漿tauとp-tau181の相関性評価
シスメックス・エーザイ共同研究
AD一般
バーチャル口頭発表
VO155/#1169
米国の地域密着型医療における早期ADの診断、紹介、治療パターンを評価するリアルワールド研究

 

■ポスター発表

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開発品/トピック
アブストラクト/ポスター番号
発表日(ヨーロッパ標準時間)
発表演題
レカネマブ
アブストラクト#1510/ポスター0098
3月8日(金)~3月9日(土)
AD脳におけるAβ種の特性とレカネマブの特有の結合
特性(BioArcticによる発表)
E2511
アブストラクト#1962/ポスター0132
3月8日(金)~3月9日(土)
新規TrkAモジュレーターE2511のバイオマーカー探索のためのネットワーク解析に基づいた網羅的グローバル・プロテオミクス戦略
バイオマーカー
アブストラクト#371/ポスター0173
3月8日(金)~3月9日(土)
実臨床におけるAD診断のための血液バイオマーカーの導入を評価する前向き多施設研究
バイオマーカー
アブストラクト#975/ポスター0271
3月6日(水)~3月7日(木)
地域ベースの軽度認知障害コホートにおけるアミロイド陽性予測における血漿Aβバイオマーカーの臨床性能評価
島津製作所・大分大学・エーザイ共同研究
AD一般
アブストラクト#401/ポスター0672
3月6日(水)~3月7日(木)
EHRデータを用いた軽度認知障害のリスク予測モデルの開発
AD一般
アブストラクト#1150/ポスター0611
3月6日(水)~3月7日(木)
早期ADの診断と治療に対する地域密着型医師の姿勢
AD一般
アブストラクト#663/ポスター0149
3月8日(金)~3月9日(土)
Critical Path for Alzheimer's Disease(CPAD)コンソーシアムによるモデル情報に基づいた医薬品開発によるリスク最小化の臨床試験デザイン
AD一般
アブストラクト#562/ポスター0110
3月8日(金)~3月9日(土)
AD脳におけるAPOE 12 KDa C末端フラグメントの増加
BioArctic・エーザイ共同研究

 

■エーザイ・シンポジウム

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日時(ヨーロッパ標準時間)発表演題・演者
3月7日(木)11:10~12:50 Defining meaningful benefits to patients, caregivers, and healthcare systems in Alzheimer’s disease
Jeffrey Cummings博士、Robert Perneczky博士、Miia Kivipelto博士

 

■プレナリー講演

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セッション
日時(ヨーロッパ標準時間)
発表演題
Aβ標的療法AD01
3月7日(木)15:20~15:35
過去の比較データとシミュレーションにより得られたプラセボデータを用いた臨床開発の新規アプローチと将来の可能性

 レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェン・インクが共同商業化・共同販促を行います。

 

* プロトフィブリルは、75-5000Kdの可溶性Aβ凝集体です1。  

以上

 

<参考資料>

    1. 1.  レカネマブ(一般名、製品名「レケンビ」、米国ブランド名:LEQEMBI)について

     レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。米国において、「LEQEMBI」は、2023年7月に米国食品医薬品局(FDA)よりフル承認を取得しました。米国における「LEQEMBI」の適応症はアルツハイマー病(AD)の治療です。「LEQEMBI」による治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性のデータはありません。日本において「レケンビ」は、2023年9月に「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能又は効果で承認を取得しました。中国においては、2024年1月に「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の治療」の適応で承認を取得しました。

     「レケンビ」の承認は、エーザイが実施した大規模グローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験において「レケンビ」は主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました4,5。主要評価項目は、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)であり、「レケンビ」はCDR-SBにおける18カ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制しました。また、副次評価項目の一つである、衣服の着脱、食事、地域活動への参加など当事者様が自立して生活する能力を介護者が評価するAD Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment(ADCS MCI-ADL)においては、プラセボと比較して37%の統計学的に有意なベネフィットが認められました。なお、「レケンビ」投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒でした。

     レカネマブについて、欧州(EU)、カナダ、英国など、14の国と地域で承認申請を行っています。

     

     レカネマブの皮下注射は、Clarity AD試験OLEにおいて評価が進行中です。維持投与レジメンは、臨床第Ⅱ相201試験OLEにおいて評価を行っています。

     

     2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

     

    1. 2.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

     エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

     

    1. 3.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

     2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

     

    参考文献

    1 https://www.alzforum.org/news/conference-coverage/lecanemab-sweeps-toxic-av-protofibrils-catches-eyes-trialists

    2 Sehlin D, Englund H, Simu B, Karlsson M, Ingelsson M, Nikolajeff F, Lannfelt L, Pettersson FE. Large aggregates are the major soluble Aβ species in AD brain fractionated with density gradient ultracentrifugation. PLoS One. 2012;7(2):e32014.https://doi.org/10.1371/journal.pone.0032014 Epub 2012 Feb 15. PMID: 22355408; PMCID: PMC3280222.

    3 Söderberg, L., Johannesson, M., Nygren, P. et al. Lecanemab, Aducanumab, and Gantenerumab — Binding Profiles to Different Forms of Amyloid-Beta Might Explain Efficacy and Side Effects in Clinical Trials for Alzheimer’s Disease. Neurotherapeutics (2022). https://doi.org/10.1007/s13311-022-01308-6. Accessed February 9, 2023

    4.Eisai presents full results of lecanemab Phase 3 confirmatory Clarity AD study for early Alzheimer's disease at Clinical Trials on Alzheimer's Disease (CTAD) conference. Available at: https://www.eisai.com/news/2022/news202285.html Last accessed: February 2024.

    5.van Dyck. C, et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. The New England Journal of Medicine. DOI: 10.1056/NEJMoa2212948. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2212948