「レケンビ®点滴静注」(一般名:レカネマブ)について、日本においてアルツハイマー病治療薬として製造販売承認を取得

エーザイ株式会社

                                                                                                  バイオジェン・インク

 

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィーバッハー、以下 バイオジェン)は、本日、ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体「レケンビ®点滴静注200mg」「同500mg」(一般名:レカネマブ、以下「レケンビ」)について、日本において「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能・効果で、承認を取得したことをお知らせします。

 

 「レケンビ」は、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル*)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。「レケンビ」は、アルツハイマー病(AD)を惹起させる因子の一つであり最も神経毒性の高いAβプロトフィブリルに選択的に結合して脳内から除去することで、ADの進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを実証し、承認された、世界で初めてかつ唯一の治療薬です。日本においては、2023年1月に製造販売承認申請を行うとともに優先審査に指定されていました。今回の承認は、2023年7月の米国フル承認に次いで2カ国目となります。

 

 今回の承認は、エーザイが実施した大規模グローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験において「レケンビ」は主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました。主要評価項目は、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)であり、「レケンビ」はCDR-SBにおける18カ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制しました。また、副次評価項目の一つである、衣服の着脱、食事、地域活動への参加など当事者様が自立して生活する能力を介護者が評価するAD Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment(ADCS MCI-ADL)においては、プラセボと比較して37%の統計学的に有意なベネフィットが認められました。なお、「レケンビ」投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒でした。本試験の結果は、2022年11月29日に、アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)にて発表され、同時に査読学術専門誌the New England Journal of Medicine掲載されました。

   

 エーザイのCEOである内藤晴夫は「このたび、我が国においてレケンビがアルツハイマー病の進行を抑制し日常生活機能を維持することを示した治療薬として初めて承認されました。アルツハイマー病治療の歴史に新たなページを開くことができたと考えています。進行性の重篤な疾患であるアルツハイマー病は、当事者様や介護者の方々に大きな障害や負担をもたらすだけでなく、社会全体に対しても甚大な影響を及ぼします。エーザイは、筑波研究所で認知症の研究を始めて以来、約40年にわたり、当事者様や介護者の方々と交流させていただき、切実なるお気持ちを知る努力を重ねてまいりました。それに応えるべくアルツハイマー病の根本病理に作用する治療薬の開発に挑戦してきました。我々は、レケンビを病気の原因を取り除く新たな治療として、必要とする早期アルツハイマー病当事者様とそのご家族に適確にお届けすることに全力を尽くしてまいります。これにより日本社会における認知症の諸課題に対するインパクトの創出をめざしてまいります」と述べています。

 

 バイオジェンの社長兼CEOであるクリストファー A. ヴィーバッハーは「この度の承認により、アルツハイマー病が当事者の方々に及ぼす深刻な病状はもとより、介護を担う方々の心理的、社会的また経済的な負担に手を差し伸べられるようになります。バイオジェンとエーザイにとって、多くの方々に影響を与える本疾患の治療が新たな時代を迎えることを告げる意義ある一歩と考えています。バイオジェンとエーザイはこれからも力を合わせ、米国と日本での承認を礎に、全世界の当事者やご家族の方々にこの治療選択肢をお届けしてまいります」と述べています。

 

 本剤の承認条件に従い、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、投与された全ての当事者様を対象に特定使用成績調査(全例調査)を実施します。また、医療関係者に対するARIAの管理とモニタリングの推進に向けた研修資材の展開をはじめ、添付文書に則った適正使用を推進してまいります。

 

 「レケンビ」について、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。日本においては、エーザイが製造販売元として販売を行い、エーザイとバイオジェン・ジャパンが共同販促を行います。

 

* プロトフィブリルは、75-5000Kdの可溶性Aβ凝集体です1, 2, 3

  

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

  • バイオジェン・インク

    パブリック アフェアーズ

    public.affairs@biogen.com

    バイオジェン・ジャパン

    広報・CSR本部

    TEL:03-3275-1745 / 070-1501-4315

 

<参考資料>

1.  製品概要

  1)  製品名

  レケンビ®点滴静注200mg、レケンビ®点滴静注500mg

  2)  一般名

  レカネマブ(遺伝子組換え)

  3)  効能・効果

  アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制

  4)  用法・用量

  通常、レカネマブ(遺伝子組換え)として10mg/kgを、2週間に1回、約1時間かけて点滴静注する。

 

  1. 2. 「レケンビ点滴静注」について

 「レケンビ点滴静注」(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。米国において、「LEQEMBI」は、2023年7月6日に米国食品医薬品局(FDA)よりフル承認を取得しました。米国における「LEQEMBI」の適応症はアルツハイマー病(AD)の治療です。米国における「LEQEMBI」による治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性のデータはありません。

 

 レカネマブは、欧州(EU)、中国、カナダ、英国(北アイルランドを除く)、オーストラリア、スイス、韓国、イスラエルにおいても、それぞれ承認申請を行っています。中国およびイスラエルにおいては優先審査に、英国(北アイルランドを除く)においては、革新的な医薬品について上市までの時間を短縮することを目的としたILAP(Innovative Licensing and Access Pathway)に指定されています。

 

 レカネマブの皮下注射によるバイオアベイラビリティ試験は終了し、Clarity AD試験OLEにおいて皮下投与の評価が進行中です。維持投与レジメンは201試験OLEにおいて評価を行っています。

2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

 

  1. 3.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

 

  1. 4.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

 2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

 

  1. 5.  エーザイ株式会社について

 エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントTwitterLinkedInFacebookでも情報公開しています。

 

  1. 6.  バイオジェン・インクについて

 1978年に設立されたバイオジェンは、多発性硬化症の広範なポートフォリオを有し、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する二つの治療薬を共同開発するなど、数多くの革新的なイノベーションを生み出したグローバル・バイオテクノロジー企業です。バイオジェンは神経、神経精神、特定の免疫、希少疾患といった領域において画期的な治療となりうるパイプラインを進展させ、サイエンスを通じて人々に貢献するという理念を厳格に追求し、人々がより健康的に、持続可能で平等に生きていける世界となるよう取り組んでいます。

 バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体Twitter, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。

 

Biogen Safe Harbor

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    1. https://www.alzforum.org/news/conference-coverage/lecanemab-sweeps-toxic-av-protofibrils-catches-eyes-trialists
      1. Sehlin D, Englund H, Simu B, Karlsson M, Ingelsson M, Nikolajeff F, Lannfelt L, Pettersson FE. Large aggregates are the major soluble Aβ species in AD brain fractionated with density gradient ultracentrifugation. PLoS One. 2012;7(2):e32014.

      https://doi.org/10.1371/journal.pone.0032014 Epub 2012 Feb 15. PMID: 22355408; PMCID: PMC3280222.

    2. Söderberg, L., Johannesson, M., Nygren, P. et al. Lecanemab, Aducanumab, and Gantenerumab — Binding Profiles to Different Forms of Amyloid-Beta Might Explain Efficacy and Side Effects in Clinical Trials for Alzheimer’s Disease. Neurotherapeutics. 2023;20:195-206. https://doi.org/10.1007/s13311-022-01308-6