「アリセプト®」日本のレビー小体型認知症に係る適応に関する再審査結果に伴う用法・用量の一部変更申請の予定について

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、本日、自社創製のアルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症治療剤「アリセプト®」(一般名:ドネペジル塩酸塩)について、日本におけるレビー小体型認知症(DLB)に係る効能・効果および用法・用量に関する再審査の結果、カテゴリー2*となった旨の通知を受領しました。これに伴い、当社は用法・用量に関する承認事項の一部変更を速やかに申請する予定です。なお、DLBに係る効能・効果については変更ありません。

              

 本剤における「レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制」の効能・効果は、日本人のDLB当事者様を対象として当社が実施した臨床第Ⅱ相試験(431試験)、臨床第Ⅲ相試験(341試験)などに基づき、2014年9月に承認されました。当社は、本効能・効果の承認条件である「レビー小体型認知症を対象に、本剤の有効性の検証及び安全性の確認を目的とした臨床試験を実施し、終了後速やかに試験成績及び解析結果を提出すること」に従い、本剤のDLBに対する有効性と安全性を評価する製造販売後臨床試験(419試験)を実施しました。

 

 419試験の結果、主要評価項目である全般臨床症状(CIBIC-plus**総合評価)について、プラセボ群と本剤群の間に統計学的有意差は認められませんでしたが、419試験結果を含む製造販売後調査等に基づく再審査では、「現時点において、CIBIC-Plusを用いたDLBの臨床症状評価は評価法として必ずしも十分に確立しておらず、本剤のDLBに対する有効性を総合的に評価することは困難であるものの、一部の患者では有効性が見られていた。一方で、本剤の投与により認知機能(MMSE***)については改善傾向がみられており、この結果は本剤の承認時の治験成績とも一貫したものとなっている。以上より、本剤の投与によって有効性が期待出来る患者は一定数存在していることから、投与開始後に改めて有効性評価を行い、有効性が認められる場合のみ投与を継続することが妥当と判断した」ため、承認事項(用法・用量)および添付文書の記載を適切に修正する必要があるとの結論(カテゴリー2)となりました。なお、本承認条件については、再審査結果受領日をもって解除されました。

 

 当社は、DLB適応の用法・用量に関する承認事項の一変申請を速やかに行うとともに、本剤の適正使用・安全性情報提供を最優先とした活動を行い、DLBの当事者様とそのご家族のニーズの充足とベネフィット向上に引き続き貢献してまいります。

     

以上

        

   

<参考資料>

1.  「アリセプト」(一般名:ドネペジル塩酸塩)のレビー小体型認知症に関する承認事項の変更内容

  (下線部分の変更を申請する予定です)

 

 用法及び用量

※左右にスクロールできます

現行一変申請予定内容
レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。

レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制

通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。投与開始12週間後までを目安に、認知機能検査、患者及び家族・介護者から自他覚症状の聴取等による有効性評価を行い、認知機能、精神症状・行動障害、日常生活動作等を総合的に評価してベネフィットがリスクを上回ると判断できない場合は、投与を中止すること。投与開始12週間後までの有効性評価の結果に基づき投与継続を判断した場合であっても、定期的に有効性評価を行い、投与継続の可否を判断すること。

    

2.  製造販売後臨床試験419試験について

 419試験は、2014年9月のレビー小体型認知症(DLB)における認知症症状の進行抑制の効能・効果の承認取得時に設定された承認条件に基づき実施された製造販売後臨床試験です。DLB当事者様140人を対象とした全般臨床症状(CIBIC-plus総合評価)を主要評価項目として、「アリセプト」12週投与の有効性を検証するプラセボ対照二重盲検並行群間無作為化比較試験として、実施されました。本剤群は、投与1-2週目は3mg、同3-6週目は5㎎、同7-12週目は10㎎が、1日1回投与されました。

 最終解析時の有効性について、主要評価項目であるCIBIC-plus総合評価においてプラセボと本剤群との間で統計学的有意差は認められませんでした。安全性については、これまでの臨床試験における発現状況と比べ、有害事象の発現頻度および重篤性に新たな問題が見いだされた事象はありませんでした。なお、再審査において、DLBの認知症症状に対する本剤の有効性については、419試験で全てが否定されるものではなく、承認時の431試験および341試験の認知機能(MMSE)に関する成績も併せて考えれば、有効性が期待できる当事者様も存在するとの判断がされました。

本試験結果については、今後論文等で発表する予定です。

 

*  カテゴリー2:再審査結果において、承認事項の一部を変更すれば承認拒否事由のいずれにも該当しない

** CIBIC-plus(the Clinician's Interview-Based Impression of Change plus caregiver input):患者および介護者との面接により全般的な臨床症状の変化を評価するための検査。主治医以外の独立した評価者が、4つの領域(状態のあらまし、認知機能、行動、日常生活動作能力)について総括し、患者の臨床症状の全般的な変化を7段階(大幅な改善、中程度の改善、若干の改善、不変、若干の悪化、中程度の悪化、大幅な悪化)で評価する。

*** MMSE(Mini-Mental State Examination):認知機能を評価するための方法。見当識、記銘、注意、計算、近時・遠隔記憶、了解、読書、書字、デザインの項目から構成され、30∼0点(正常→重度)の範囲で評価する。