第16回アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PD™ 2022)において、レカネマブの作用機序と臨床効果など、アルツハイマー病/認知症領域の開発品に関する最新情報を発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、早期アルツハイマー病(AD)の治療薬として開発中の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブに関する最新の研究成果を含む、当社のADパイプラインの臨床開発プログラムについて、計13件の研究成果を3月15日から20日までスペイン・バルセロナおよびバーチャルで開催される「第16回アルツハイマー・パーキンソン病学会(International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases:AD/PD™ 2022)において発表することをお知らせします。レカネマブについては、米国食品医薬品局(FDA)に対して早期AD治療薬としての迅速承認制度に基づく生物学的製剤承認申請(Biologics License Application: BLA)の段階的申請(Rolling Submission)を2022年度第1四半期に完了する予定です。また、レカネマブは、2021年6月にBreakthrough Therapy、12月にFast Trackの指定を受け、検証試験としての臨床第Ⅲ相Clarity AD試験の主要評価データを2022年の秋に取得する予定です。2022年3月、日本におけるレカネマブの早期承認取得をめざし、医薬品事前評価相談制度に基づく申請データの独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への提出を開始しました。

 

 エーザイ ニューロロジービジネスグループ Deputy Chief Clinical OfficerであるMichael Irizarry M.D.は、「AD/PD2022では、抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブの作用機序と、臨床第Ⅱb相試験および非盲検長期投与試験に基づく早期ADに対する臨床効果やアミロイド関連画像異常(ARIA)をはじめとする安全性プロファイルについて理解を深める4つの主要な発表を行います。レカネマブに加え、エーザイの強固なパイプラインには、タウをはじめ神経変性につながる経路を標的とする化合物のほか、ADの治療あるいは予防にも最適なアプローチとなりうる併用療法の試験があります」と述べています。

 

 これまでADの研究は、認知機能・日常生活機能・行動症状の緩和に焦点が当てられてきましたが、本疾患の生物学的メカニズムについての解明は大きく進展しており、当社の治療薬候補パイプラインは、アミロイド、タウ、神経変性などの疾患の根本原因である病態の治療をめざしています。

 

 エーザイ株式会社の常務執行役であり、ニューロロジービジネスグループ プレジデント兼グローバルADオフィサーであるIvan Cheungは、「レカネマブについては、臨床第Ⅱb相試験デザインにより、早期ADに対する臨床効果と安全性を最適に確認する臨床第Ⅲ相検証試験Clarity AD試験をデザインすることができました。Clarity AD検証試験の被験者募集戦略のポイントの一つは、民族的、人種的多様性を考慮することでした。マイノリティの方々の臨床試験への参加を確実にするためには、未だ重要な課題がありますが、Clarity AD試験の米国における総登録者数の約25%はアフリカ系およびヒスパニック系アメリカ人の早期AD当事者様であり、米国のメディケア加入者と同様な比率を確保することができました」と述べています。

 

レカネマブの作用機序と早期AD治療薬としての可能性の科学的考察に関する主な発表演題

オンサイト・シンポジウム - ADにおけるAβ標的治療法 2

  • アミロイドカスケードの科学とレカネマブ特有の作用機序:複数の抗Aβ抗体とそれらの異なるAβ種に対する親和性の違いを示したデータを発表します。ADは、Aβプラークと、タウタンパク質から構成される神経原線維変化を特徴としています。遺伝学的およびバイオマーカー研究により、Aβ凝集体の形成は本疾患の初期に発生するとされています。ADの脳内には、二量体、オリゴマー、プロトフィブリル、不溶性のフィブリルAβなどの複数のAβ凝集体が複雑な平衡状態で存在しています。プロトフィブリルなどの可溶性凝集体は神経細胞に対して毒性があると考えられており、ADの神経変性プロセスに関与しているとされています。Aβに対する免疫療法は、ADの有望な治療法として注目されています。レカネマブのマウス前駆体抗体であるmAb158は、プロトフィブリルの形成能が強いためADを引き起こすArctic変異によって形成されるプロトフィブリルに基づいて作製されました。
  • 早期ADを対象としたレカネマブ臨床第Ⅱb相試験(201試験)および非盲検長期投与試験(OLE試験)の主要な試験デザインと臨床結果:脳内アミロイドの減少、ARIAの発現率と重症度について201コア試験およびOLE試験の最新結果を発表します。201試験では、応答アダプティブ ランダム化デザインを用いたベイジアン アダプティブデザインを採用しました。本試験の結果、レカネマブが用量および時間依存的にアミロイドプラークを除去し、10 mg/kg biweekly投与が早期ADにおける認知機能低下を最も遅くする可能性がある用量として特定され、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験において検証されることになります。201コア試験およびOLE試験において、レカネマブ10 mg/kg biweekly投与でのARIA-Eの発生率は、全体で10%未満でした(ApoE4保持者では15%未満)。症候性ARIA-Eの発生率はコア試験およびOLE試験で2%未満でした。この安全性プロファイルにより、レカネマブは漸増投与を行わず治療用量で投与を開始することが可能となっています。
  • 早期ADを対象としたレカネマブ臨床第Ⅱb相試験(201試験)のバイオマーカーの解析結果と臨床結果との相関関係:レカネマブの201コア試験およびOLE試験で得られた主要なバイオマーカーに関する解析結果およびその臨床症状との相関について考察します。また、本発表の一環として、セントルイス・ワシントン大学のE. McDade博士は、レカネマブと当社の抗微小管結合領域(MTBR)タウ抗体E2814の併用を評価しているDominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit(DIAN-TU)のTau NexGen試験に関する最新情報を提供する予定です。
  •  ◇
    ランダム化201コア試験における、レカネマブによるアミロイドプラークの減少と末梢のADバイオマーカー測定値との関連、および末梢ADバイオマーカー測定値の変化と臨床症状の変化との関連の評価
  •  ◇

    レカネマブ投与中止期間(ギャップ期)後のアミロイドプラークの変化と末梢ADバイオマーカー解析結果とモデリング、レカネマブ維持療法への影響

  • レカネマブの新規皮下投与(SC)製剤を含む臨床開発のアップデート:レカネマブの早期ADを対象としたサブスタディである臨床第Ⅱb相 OLE試験、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験、およびプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相AHEAD 3-45試験の最新情報を提供します。また、レカネマブの皮下投与製剤の理論的根拠と臨床開発について発表します。

その他の主要なプレゼンテーション

  • エーザイ ニューロロジービジネスグループのChief Medical OfficerであるHarald Hampel, M.D、Ph.D、MScによる、ADの時間的、空間的なアミロイドβ経路に関する招待講演
  • Clarity AD試験におけるベースラインのタウPET:早期ADを対象としたレカネマブのプラセボ対照二重盲検並行群間比較(18カ月)臨床第Ⅲ相試験
  • Quantitative Systems Pharmacology (QSP) Amyloid Platform:マルチスケール計算モデルによるAβ生物学とレカネマブ薬理学との相互作用
  • 完全自動化血漿β-アミロイド免疫測定法によるアミロイドPETで定義されるアミロイド病理の予測

エーザイDisease Stateバーチャルシンポジウム

 当社はバーチャルシンポジウム「Aβ経路:アルツハイマー病の進化する科学的知見と臨床的意義」を開催します。本シンポジウムでは、ADの病態におけるAβの影響について、細胞レベルから全身レベルまで、またADの各ステージや治療法にわたって、著名な先生方(Dennis J. Selkoe M.D.、Bart De Strooper M.D、Ph.D、Susan Landau Ph.D、Randall Bateman M.D)による講演を予定しています。

 本シンポジウムは、2022年3月19日(土)午前11:40から午後1:25(中央ヨーロッパ時間)にバーチャルで開催され、登録した参加者は、AD/PD 2022終了後3カ月間オンラインで視聴可能です。

 

 本学会での重要な発表演題とシンポジウムのリストは以下の通りです。すべてのプレゼンテーションは、AD/PDバーチャルプラットフォームを通じて、登録した参加者にオンラインで公開されます。

 

以上

 

■エーザイの開発品・研究に関する発表

※左右にスクロールできます

開発品・セッション・トピック・
予定日時(中央ヨーロッパ時間)
発表演題・発表者
レカネマブ
オンサイト・シンポジウム
ADにおけるAβ標的治療法 2
3月18日(金)17:15 - 17:40

アミロイドカスケードの科学とレカネマブ特有の作用機序

  

発表者: L. Lannfelt

レカネマブ
オンサイト・シンポジウム
ADにおけるAβ標的治療法 2
3月18日(金)17:40 - 17:55
早期ADを対象としたレカネマブ臨床第Ⅱ相試験および非盲検長期投与の主要な試験デザインと臨床結果
発表者: M. Sabbagh
レカネマブ
オンサイト・シンポジウム
ADにおけるAβ標的治療法 2
3月18日(金)17:55 - 18:10
早期ADを対象としたレカネマブ臨床第Ⅱ相試験のバイオマーカーの結果と臨床結果との相関関係
発表者: E. McDade
レカネマブ
オンサイト・シンポジウム
ADにおけるAβ標的治療法 2
3月18日(金)18:10 - 18:25
レカネマブの新規皮下投与製剤を含む臨床開発のアップデート
発表者: M, Irizarry
レカネマブ
口頭発表
ADにおけるAβ と他のターゲット
3月20日(日)9:05-9:20
Quantitative Systems Pharmacology (QSP) Amyloid Platform:マルチスケール計算モデルによるAβ生物学とレカネマブ薬理学との相互作用
発表者:A. Cabal

レカネマブ

オンデマンド・発表

Clarity AD試験におけるベースラインのタウ:早期ADを対象としたレカネマブの臨床第Ⅲ相18ヵ月間プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験
発表者: A. Charil
レカネマブ、E2814
口頭発表
AD、PD、LBD治療薬開発の進歩
3月17日(木)10:25 - 10:40
Dominantly Inherited Alzheimer's Network Trials Unit (DIAN-TU) Tau NexGen Platformによるレカネマブを基礎療法とした抗タウ抗体E2814試験
発表者: L. Schneider
E2814
口頭発表
ADにおけるAβ と他のターゲット
3月20日(日)10:35 - 10:50
新規抗タウ抗体E2814の単回、反復漸増投与試験における安全性、薬物動態および薬力学:健康成人を対象とした臨床第Ⅰ相試験
発表者: P. Aceves他
イメージング

オンデマンド・発表

MissionADプログラムによるアミロイド陽性MCIおよび軽度ADにおける18F-PI-2620を用いたタウ沈着の評価
発表者: S. Bullich他
E2511

オンサイト、バーチャル・ポスター発表

新規低分子化合物TrkAバイアスド・ポジティブ・アロステリック・モジュレーターE2511:TrkA特異的トロフィック・シグナリングの増強によるコリン作動性神経細胞のシナプス再生促進
発表者: T. Tomioka他
AD一般
招待講演
3月16日(水)17:45 - 18:00
ADの時間的、空間的なアミロイドβ経路

発表者: H. Hample

AD一般
オンデマンド・ポスター発表
自然言語処理を用いたADの症状を特定するEHRコホート開発
発表者: H. Yu他
AD一般
オンデマンド・発表
軽度認知障害におけるアルツハイマー病発症の危険因子の理解
発表者: Y. Wang他

 

■エーザイDisease Stateシンポジウム

※左右にスクロールできます

セッション
予定日時(中央ヨーロッパ時間)
発表演題・発表者
バーチャルシンポジウム・オンデマンド視聴
3月19日(土)11:40-13:25
Aβ経路:アルツハイマー病の進化する科学的知見と臨床的意義講演者: Dennis J. Selkoe、Bart De Strooper、Susan Landau、 Randall Bateman

 

■バイオジェンによるアデュカヌマブに関する発表

※左右にスクロールできます

開発品・セッション・トピック・
予定日時(中央ヨーロッパ時間)
発表演題・発表者
アデュカヌマブ
ADにおけるAβ標的治療法 1
3月18日(金)14:45-15:00
症状の進行と治療効果の不均質:早期ADを対象としたアデュカヌマブEMERGE 試験の解析結果
発表者: J Murphy
アデュカヌマブ
ADにおけるAβ標的治療法 1
3月18日(金)15:00-15:15
標準化テスト統計とグローバル統計検定によるアデュカヌマブの治療効果の評価
発表者: S. Dickson
アデュカヌマブ
ADにおけるAβ標的治療法 1

3月18日(金)15:15-15:30

早期ADを対象としたアデュカヌマブ臨床第Ⅲ相EMERGE/ENGAGE試験における血漿中P-Tau181サブグループ解析結果
発表者: O. Hansson
アデュカヌマブ

オンデマンド・ポスター発表

アデュカヌマブ臨床第Ⅲ相試験:暴露-反応解析によるアミロイド除去とCDR-SBスコアによる臨床的悪化抑制との関係性評価
発表者: KK Muralidharan 他

 

■シスメックスによる発表

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トピック・セッション発表演題・発表者
診断

オンデマンド・発表

アミロイドPETにより定義されるアミロイド病理を予測する全自動血漿βアミロイド免疫測定法に関して
発表者: K. Yamashita

 

エーザイはバイオジェンとの提携契約の一環として、レカネマブについてはエーザイ主導のもとで臨床開発、薬事申請、商業化を進めます。

 

<参考資料>

1.  レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について

 レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。レカネマブは、アルツハイマー病(AD)を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、事前に規定した18カ月投与における解析の結果は、脳内Aβ蓄積量の減少(p<0.0001)とADCOMS*による臨床症状の悪化抑制(p<0.05)を示しました。なお、12カ月投与時における主要評価項目**は達成しませんでした。201試験(コア期間)の後、投与を休止していたギャップ期間(平均24カ月)を経て、レカネマブ10mg/kg bi-weekly投与の安全性と有効性を評価するOpen-Label Extension試験が進行中です。

 現在、臨床第Ⅱ相試験(201試験)のOpen-Label Extension試験に加えて、早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)と共同で行っています。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。さらに、レカネマブの皮下注射製剤の臨床第Ⅰ相試験が進行中です。エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2014年3月に、エーザイとバイオジェンはレカネマブに関する共同開発・共同販促に関する契約を締結し、2017年10月に内容の一部変更契約を締結しています。

 

* ADCOMS (Alzheimer’s Disease Composite Score):アルツハイマー病コンポジットスコアは、早期ADの変化を感度よく検出することを目的とし、ADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)、MMSE (Mini-Mental State Examination)、CDR (Clinical Dementia Rating)の3つの臨床評価尺度を組み合わせたエーザイが開発した評価指標で、ADCOMスケールは0.00から1.97までのスコアがあり、高値ほど障害が大きい

** 投与12カ月時点においてADCOMSによる臨床症状の抑制がプラセボ投与群に対し25%低下する確率が80%以上とする

 

2.  ADUHELM® (一般名:アデュカヌマブ)注射100 mg/mL溶液について

 ADUHELMの適応症は、アルツハイマー病(AD)の治療です。ADUHELMによる治療は、臨床試験において治療開始の対象としたADによる軽度認知障害または軽度認知症の患者様において開始される必要があります。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性に関するデータはありません。本適応症は、ADUHELMの治療により観察されたアミロイドβ(Aβ)プラークの減少に基づき、迅速承認の下で承認されています。本迅速承認の要件として、今後検証試験による臨床的有用性の確認が必要となります。

 

 ADUHELMは、Aβに対するモノクローナル抗体です。脳内のAβプラークの蓄積は、ADの明確な病態生理学的特徴です。ADUHELMの迅速承認は、臨床的有用性、この場合は臨床症状の悪化抑制をもたらす可能性が合理的に高い代理バイオマーカーであるAβプラークの減少に対するADUHELMの効果を示す臨床試験のデータに基づいて付与されました。

 

 ADUHELMは、次のような重篤な副作用を引き起こす可能性があります。アミロイド関連画像異常(ARIA)は、多くは症状を引き起こさない一般的な副作用ですが、重篤になる場合があります。ほとんどの場合症状はありませんが、頭痛、錯乱、めまい、視力の変化、吐き気などの症状が現れる人もいます。医療提供者は、患者様に対してADUHELMによる治療前と治療中に磁気共鳴画像法(MRI)スキャンを行い、ARIAをチェックします。ADUHELMは、次のような深刻なアレルギー反応を引き起こす可能性があります。ADUHELMの最も一般的な副作用には、脳内または脳の表面の微小出血を伴うまたは伴わない脳内の浮腫(ARIA)、頭痛と転倒があります。患者様は、副作用に関する医学的アドバイスをもらうように医療提供者に相談する必要があります。2017年10月より、バイオジェンとエーザイは全世界的にアデュカヌマブの開発ならびに製品化を共同で実施しています。

 

 ADUHELMの添付文書投薬ガイドはこちらから入手できます。

 

  1. 3.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売にする提携を行っています。レカネマブについては、エーザイ主導のもとで共同開発を進めます。

 

  1. 4.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

 2005年以来、バイオアークティックはAD治療薬の開発と商品化に関してエーザイと長期的な協力関係を築いてきました。2007年12月にレカネマブの商品化契約を締結し、2015年5月にAD用抗体レカネマブバックアップの開発・商品化契約を締結しました。エーザイは、AD向け製品の臨床開発、市場承認申請、商品化を担当しています。 バイオアークティックには、ADにおけるレカネマブの開発コストはありません。

 

5.  エーザイとシスメックスのコラボレーションについて

 エーザイとシスメックスは2016年2月に、認知症領域に関する新たな診断薬創出に向けた非独占的包括契約を締結しています。両社は、互いの技術・ナレッジを活用し、認知症の早期診断や治療法の選択、治療効果の定期的確認が可能な次世代診断薬の創出を目指します。

 

  1. 6.  E2814について

 E2814は抗MTBR(Microtubule binding region)タウ抗体です。E2814は、当社とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究を通じて見出されました。E2814は、タウ伝播種の脳内拡散を抑制する抗体として設計されています。E2814は、孤発性ADを含むタウオパチーに対する疾患修飾薬として開発され、臨床第Ⅰ相試験を実施中です。また、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit: DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床第Ⅱ/Ⅲ相Tau NexGen試験も実施中です。

 

  1. 7.  E2511について

 E2511は、当社創製の新規低分子化合物で、神経成長因子(NGF)の細胞膜受容体tropomyosin receptor kinase A(TrkA)に直接結合し、ダメージを受けたコリン作動性神経の回復およびシナプス再形成を促すことを期待しています。臨床第Ⅰ相試験を実施中です。