「レンビマ®」(レンバチニブ)、「キイトルーダ®」(ペムブロリズマブ)との併用療法について、治療ラインに関らず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な進行性子宮内膜がんの適応で、台湾において承認を取得

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)は、このたび、自社創製のチロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法による治療ラインに関らず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な進行性子宮内膜がんの適応で、台湾において承認を取得したことをお知らせします。

 

 本承認は、臨床第Ⅲ相309試験/KEYNOTE-775試験の結果に基づいています。本試験結果は、2021年3月に開催された米国婦人科腫瘍学会(SGO)2021 Annual Meeting on Women’s Cancerで発表され、2022年1月にthe New England Journal of Medicineに掲載されました1。本試験において、本併用療法は、全生存期間(Overall Survival: OS)を対照薬の化学療法(治験医師選択によるドキソルビシンまたはパクリタキセル)と比較して統計学的に有意に延長し、死亡リスクを38%減少させました(ハザード比(Hazard Ratio: HR)=0.62 [95% 信頼区間(Confidence Interval: CI), 0.51-0.75]; p<0.0001)。また、無増悪生存期間(Progression-Free Survival: PFS)を化学療法と比較して統計学的に有意に延長し、増悪または死亡のリスクを44%減少させました(HR=0.56 [95% CI, 0.47-0.66]; p<0.0001)。本併用療法のOSの中央値は18.3カ月であり、化学療法では11.4カ月でした。また、本併用療法のPFSの中央値は7.2カ月であり、化学療法では3.8カ月でした。加えて、本併用療法の奏効率(Objective Response Rate: ORR)は32%(95%CI, 27-37)であり、化学療法は15%(95%CI, 11-18)でした(p<0.0001)。本併用療法の完全奏効(Complete Response: CR)率は7%、部分奏効(Partial Response: PR)率は25%であったのに対し、化学療法のCR率は3%、PR率は12%でした2。なお、試験の本併用療法投与群で高頻度に確認された有害事象(全グレード、上位 5 つ)は、甲状腺機能低下症、高血圧、疲労、下痢、筋骨格系障害でした2

 

 台湾において、本併用療法は、111試験/ KEYNOTE-146試験の結果に基づき、全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有さない進行性子宮内膜がんの適応で、既に迅速承認を受けていました。本迅速承認の継続には、臨床的有用性の検証と説明が要件となっていましたが、臨床第Ⅲ相309試験/KEYNOTE-775試験の結果により、本要件は満たされ、今回の承認にいたりました。

 

 子宮内膜がんは、子宮体がんにおけるもっとも発生頻度の高いがんで、9割以上を占めるとされています3。子宮体がんの罹患者数は2020年において、世界で41万7千人以上と推定され、約9万7千人以上が亡くなったと報告されています4。台湾では2018年に2700人以上が新たに子宮体がんと診断され、約400人が亡くなられたと報告されています5。転移性子宮内膜がん(stage IV)の5年生存率は約17%と推計されています6

 

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた画期的な新薬創出をめざしています。当社は、「レンビマ」によるがん治療の可能性を引き続き追求し、世界のがん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

*「レンビマ」について、当社は、2018年3月にMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)とグローバルな共同開発と共同販促を行う戦略的提携契約を締結しています。「キイトルーダ」はMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の子会社であるMerck Sharp & Dohme Corpの登録商標です。

 

以上

 

<参考資料>

1.「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性を示しました。

 現在、本剤は、単剤療法として、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど75カ国以上で承認を取得しており(米国では、局所再発、転移性、または進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに係る適応)、また、切除不能肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど70カ国以上で承認を取得しています(米国では、一次治療薬としての切除不能な肝細胞がんに係る適応)。日本においては、単剤療法として胸腺がんに係る適応も取得しています。加えて、血管新生阻害剤治療後の腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど60カ国以上で承認を取得しています(米国では、血管新生阻害剤1レジメン治療後の成人の進行性腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応)。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。米国と欧州では、成人の進行性腎細胞がん一次治療における「キイトルーダ」との併用療法に係る適応で、承認を取得しています。さらに、治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有さない進行性子宮内膜がんに対する「キイトルーダ」との併用療法に係る適応で米国において承認を取得しています。また、同様の適応でカナダ、オーストラリアなど10カ国以上で承認を取得しています(条件付き承認を含む)。条件付き承認を取得している国では、別途検証試験における臨床的有用性の検証と説明が求められます。欧州では、治療ラインに関わらず、プラチナ製剤を含む前治療中またはその後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な成人の進行性または再発性子宮内膜がんにおける「キイトルーダ」との併用療法に係る適応で、承認を取得しています。日本では、がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体がんの適応、および根治切除不能または転移性の腎細胞がんの適応で承認を取得しています。

 

2. 309試験/KEYNOTE-775試験について

 本承認は、ネオアジュバントおよびアジュバントを含むいずれかの治療ラインにおいて、少なくとも1レジメンのプラチナ製剤による前治療歴のある進行性子宮内膜がんを対象とした、多施設共同、非盲検、無作為化、実薬対照の827人の患者様を登録した臨床第Ⅲ相309試験/KEYNOTE-775試験(ClinicalTrials.gov, NCT03517449)の結果に基づいています。主要有効性評価項目はOSおよびRECIST v1.1(固形がんに対する腫瘍径の変化を効果判定に用いる評価基準)に基づく独立中央画像判定によるPFSでした。

 患者様は「レンビマ」(20 mg、1日1回経口投与)と「キイトルーダ」(200 mg、3週ごと静脈内投与)の併用療法もしくは、対照薬である治験医師選択によるドキソルビシン(60 mg/m2 3週ごと投与)またはパクリタキセル(80 mg/m2 週 1 回投与を 3週連続し、1週間休薬)に1:1で無作為に割り付けられました。本併用療法は、RECIST v1.1に基づく独立中央画像判定により増悪とされるまで、または許容できない毒性が出現するまで継続されました。「キイトルーダ」の投与は最大で24カ月まで継続されました。本併用療法は、治験医師によって臨床的有用性および忍容性があると判断された場合、RECISTで定義された増悪後も継続が認められました。

 

3.エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について

 2018年3月に、当社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. (米国とカナダ以外ではMSD)は、「レンビマ」のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ」の併用療法における共同開発、共同製造、共同販促を行います。既に実施している併用試験に加え、両社は新たにLEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを開始しました。これにより、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は10種類以上のがんにおいて20を超える臨床試験が進行中です。

 台湾においては、「レンビマ」について、当社医薬品販売子会社である衛采製薬股份有限公司が販売し、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の現地支社と共同販促を行っています。

 

  1. 1. V. Makker. et al. Lenvatinib plus Pembrolizumab for Advanced Endometrial Cancer.  

The New England Journal of Medicine.

https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa2108330?articleTools=true .

  1. 2. 台湾Package insertの記載
  2. 3. American Cancer Society, “Causes, Risks, Prevention.” Endometrial Cancer.

https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8610.00.pdf .

  1. 4. International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Corpus uteri Fact Sheet.” Cancer Today, 2020. 

https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/24-Corpus-uteri-fact-sheet.pdf .

  1. 5. Taiwan Cancer Registry 2018 Report.
  2. 6. American Cancer Society, “Survival Rates for Endometrial Cancer.”

https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8611.00.pdf .