レカネマブの臨床第Ⅱb相201試験のコアならびにOLE試験より5年間にわたる臨床バイオマーカーと安全性データに関する最新の知見を第14回アルツハイマー病臨床試験(CTAD)会議において発表

エーザイ株式会社

バイオジェン・インク

 

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク (Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:ミシェル・ヴォナッソス、以下バイオジェン)は、このたび、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(開発品コード:BAN2401)の早期ADを対象とした臨床第Ⅱb相201試験およびOpen-Label Extension(OLE:非盲検継続投与)試験における脳内アミロイドβ(Aβ)の減少ならびに5年間の臨床症状に関する新たな臨床、バイオマーカーおよび安全性の観点からの評価について発表しました。これらの知見は、2021年11月9日から12日に米国マサチューセッツ州ボストンおよびバーチャルで開催されている第14回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD:Clinical Trials on Alzheimer’s Disease)のlate-breakingラウンドテーブルセッションにおいて発表され、著名な臨床研究者とともに議論されました。

 エーザイは、レカネマブについて、2021年9月に迅速承認制度に基づき、米国食品医薬品局(FDA)に早期AD治療薬として生物製剤ライセンス申請の段階的申請を開始しました。

 

 OLE試験による計5年間のバイオマーカーと臨床効果の研究

 18カ月の二重盲検201コア試験の解析後、9~59カ月(平均24カ月)の無投与期間(ギャップ期間)を経て、レカネマブ10 mg/ kg biweekly投与を行うOLE試験が実施されました。OLE試験では、コア試験(投与12カ月および18カ月時点)よりも早い時点(投与3カ月および6カ月時点)の評価を含む12カ月間以上にわたってアミロイドPETによるレカネマブの効果を評価しました。この研究デザインにより、レカネマブ投与を中止、再開することによるバイオマーカーおよび臨床効果への影響を5年間の疾患経過において研究する機会が得られました。

 

 脳内Aβ除去と臨床上のベネフィットの相関

 OLE試験におけるアミロイドPET画像読影診断において、治療開始後3カ月という早い時期から脳内Aβ量が低下するとともに、80%以上の被験者(12人中10人)が投与12〜18カ月までに、脳内アミロイドが陰性化し、コア試験の結果との一貫性が確認されました。コア試験のデータから、被験者群全体(相関係数=0.832、p=0.080)および個々の被験者(相関係数=0.201、傾き=0.199、p=0.036)の双方のレベルにおいて、臨床効果(ADCOMS)とAβ減少(PET SUVr)には相関があることが示唆されました。OLE試験から新たに治療された被験者では、治療開始後3カ月という早い時期のアミロイドPETの定量的評価によって脳内  Aβが有意に低下しました。さらに、コア試験のデータから、被験者群全体(相関係数=-0.306、有意差無し)および個々の被験者(相関係数=-0.208、傾き=-3.957、p=0.050)の双方のレベルにおいて、臨床効果と血漿Aβの間の相関も示唆されました。

 

 認知機能の悪化抑制は、疾患修飾効果を示唆している可能性

 早期AD被験者のコア試験終了時におけるレカネマブ投与で生じたプラセボとの臨床効果の差は、投与中止後の24カ月間(平均)の無投与期間(ギャップ期間)も維持されました。18カ月のコア試験終了時において、レカネマブ最高用量投与群とプラセボ投与群のADCOMSの差は0.05でした(プラセボ群0.19、レカネマブ群0.14)。また、OLE試験に参加した被験者のみにおいて評価すると、ADCOMSの差(0.10)は、OLE試験開始時まで維持されました(プラセボ群0.28、レカネマブ群0.18)。同様に、CDR-SBとADAS-Cogにおいても、両群ともに臨床症状の進行が観察されたものの、両群間の差は維持されました。さらに、レカネマブ投与中止後の治療効果の持続は、アミロイドPET、血漿中Aβ42/40比、および血漿中p-tau181といったバイオマーカーにおいても観察され、疾患修飾効果の可能性を示しています。

 

 血液検査によるレカネマブ治療効果のモニタリングの可能性

 臨床第Ⅱb相試験およびOLE試験で測定された2種類の血液検査として、新たに血漿中Aβ42/40比と血漿中p-tau181のデータが発表されました。血漿中Aβ42/ 40比の変化は、アミロイドPETの変化と逆相関が示唆されました。アミロイドPETと血中Aβの両方が、コア試験において、被験者群全体および個々の被験者の双方のレベルで、ADCOMSとの相関を示しました(PETの相関係数は0.832(被験者群)と0.201(個々の被験者)、血漿中Aβの相関係数は、-0.306(被験者群)と-0.208(個々の被験者))。血漿バイオマーカーを使用して治療効果をモニタリングすることにより、確実なAβ除去後に簡便な用量変更の可能性があります(例えば、投与頻度の減少および/または減量)。

 

 コア試験およびOLE試験におけるARIA-Eおよび症候性ARIAの低い発現率を伴う安全性プロファイル

 コア試験で観察された安全性の結果と同様に、レカネマブは忍容性が高く、コアおよびOLE試験におけるレカネマブ10mg/kg biweekly投与のARIA-Eの発現率は10%未満であり、症候性ARIA-Eの発現率は2%未満でした。この安全性プロファイルは、用量漸増を行わずに治療用量からレカネマブの投与を開始することが可能であることを示しています。

 

 エーザイ ニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサーであるLynn Kramer, M.D.は、「最新のレカネマブの知見から、Aβ除去効果の時間経過とその程度、および臨床結果と血液バイオマーカーとの関係について、より深い洞察が得られました。2021年3月に1,795人の早期AD被験者登録を完了した臨床第Ⅲ相Clarity AD試験は、これらの知見を検証することを目的としています」と述べています。

 

 本発表に関する動画および発表資料は、11月12日正午までにエーザイのコーポレートウェブサイトの投資家セクションに掲載される予定です。

 

以上

 

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

  • バイオジェン・インク

    パブリック アフェアーズ

    public.affairs@biogen.com

 

<参考資料> 

1. レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について

 レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。レカネマブは、アルツハイマー病(AD)を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、事前に規定した18カ月投与における解析の結果は、脳内Aβ蓄積量の減少(p<0.0001)とADCOMS*による臨床症状の悪化抑制(p<0.05)を示しました。なお、12カ月投与時における主要評価項目**は達成しませんでした。201試験(コア期間)の後、投与を休止していた9〜59カ月の無投与期間(ギャップ期間:平均24カ月、参加者180人)を経て、レカネマブ10mg/kg bi-weekly投与の安全性と有効性を評価するOpen-Label Extension(OLE)試験が進行中です。

 

 エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2014年3月に、エーザイとバイオジェンはレカネマブに関する共同開発・共同販促に関する契約を締結し、2017年10月に内容の一部変更契約を締結しています。現在、臨床第Ⅱ相試験(201試験)のOLE試験に加えて、早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。2020年7月、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)と共同で開始しました。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。

 

* ADCOMS (Alzheimer’s Disease Composite Score):アルツハイマー病コンポジットスコアは、早期ADの変化を感度よく検出することを目的とし、ADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)、MMSE (Mini-Mental State Examination)、CDR (Clinical Dementia Rating)の3つの臨床評価尺度を組み合わせたエーザイが開発した評価指標で、ADCOMSスケールの範囲は0.00から1.97で、スコアが高いほど障害が大きいことを示します。

** 投与12カ月時点においてADCOMSによる臨床症状の抑制がプラセボ投与群に対し25%低下する確率が80%以上としていました。

 

2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売にする提携を行っています。レカネマブについては、エーザイ主導のもとで共同開発を進めます。

 

3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

 2005年以来、バイオアークティックはAD治療薬の開発と商品化に関してエーザイと長期的な協力関係を築いてきました。2007年12月にレカネマブの商品化契約を締結し、2015年5月にAD用抗体レカネマブバックアップの開発・商品化契約を締結しました。エーザイは、AD向け製品の臨床開発、市場承認申請、商品化を担当しています。 バイオアークティックには、ADにおけるレカネマブの開発コストはありません。

 

4. エーザイ株式会社について

 エーザイ株式会社は、本社を日本に置くグローバル製薬企業です。当事者とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)・コンセプト」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 エーザイは、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症治療剤「アリセプト®」の開発・販売から得た経験を活かし、エーザイ認知症プラットフォームの確立を企図し、医療機関、診断薬開発企業、研究機関やバイオベンチャーに加え、民間保険、金融、フィットネスクラブ、自動車メーカー、小売業、介護施設などと連携して、新たな便益をお届けする「認知症エコシステム」の構築をめざしています。エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

 

5. バイオジェン・インクについて

 神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経系疾患、神経変性疾患ならびにその関連疾患領域の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者に提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化いたしました。また、生物製剤の高い技術力を活かした高品質のバイオシミラーの製品化や、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、神経筋疾患、運動障害、眼疾患、神経認知障害、免疫疾患、急性神経疾患、疼痛といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。

 2020年、バイオジェンは、気候、健康、公平さが深く相互に関連する課題に対して、20年間に2億5000万ドルを投資する大規模な取組みを開始しました。Healthy Climate, Healthy Lives ™は、ビジネス全体で化石燃料の使用をゼロにし、著名な研究機関とのコラボレーションを構築して科学研究を進展させ、人類の健康を改善し、発展途上のコミュニティをサポートすることを目的としています。バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体Twitter, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。

 

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