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- 2021年7月21日
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2021年7月26日から30日に米国コロラド州デンバーおよびバーチャルで開催されるアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference:AAIC)2021において、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemab(開発コード:BAN2401)の最新データを含む合計11演題を発表することをお知らせします。Lecanemabは、米国食品医薬品局(FDA)よりブレイクスルーセラピーの指定を受けています。
主な発表としては、lecanemabについて、早期アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease:AD)を対象とする無作為化、二重盲検、POC(Proof of Concept:創薬概念の検証)臨床第Ⅱb相試験(201試験)の非盲検継続投与における18カ月投与後の臨床効果の予備解析および、プレクリニカル(無症状期)ADを対象とする臨床第Ⅲ相AHEAD 3-45試験のスクリーニングおよびベースライン特性の予備的報告の口頭発表が予定されています。また、優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する臨床試験における抗タウ薬として最初の評価対象薬に選定された抗MTBRタウ抗体E2814について、臨床試験のデザインに関する口頭発表、および当社創製新規経口シナプス再生剤として臨床第Ⅰ相試験を行っているE2511について、動物モデルにおける研究結果のポスター発表が予定されています。
最新データの発表に加えて、当社とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、以下 バイオジェン)は、AD治療の展望に焦点を当てたバーチャルシンポジウム「次世代AD臨床ケアパスウェイの定義:生物学的、技術的、およびヘルスケアの視点」を開催します。治療法開発の可能性が高まるにつれ、ADペイシャントジャーニーを、これまでの症状に基づくアプローチから、次世代のバイオマーカーに基づくテクノロジー対応の臨床ケアパスウェイに転換することが重要です。4名の著名なAD研究者、Rhoda Au, Ph.D, MBA、Jeffrey Cummings, M.D, D.Sc、Soeren Mattke, M.D, D.Sc、Wiesje van der Flier, Ph.DによりADヘルスケアエコシステムを導くバイオマーカーと新しいデジタルツールの統合における最新の進歩と課題をレビューします。
抗Aβプロトフィブリル抗体lecanemabについては、当社主導のもとでバイオジェンと共同開発を行っています。
当社は、アルツハイマー病/認知症領域分野における35年以上の創薬活動の経験を基盤に、多元的かつ包括的なアプローチによる創薬研究を通じて、認知症の予防と治癒の実現をめざしています。革新的な治療薬を一日も早く創出し、アンメット・メディカル・ニーズの充足と認知症当事者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。
■ エーザイ口頭発表演題
※左右にスクロールできます
開発品・演題番号 | 発表演題・予定日時(米国山岳部夏時間) |
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Lecanemab
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AHEAD 3-45試験:Lecanemabを評価するプラセボ対照二重盲検試験におけるプレクリニカルADの脳内Aβ蓄積が陽性(A45試験)および境界域(A3試験)の被験者のスクリーニングおよびベースライン特性の予備的報告
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Lecanemab
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早期ADを対象とした臨床第Ⅱ相POC試験(201試験)の
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E2814
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DIAN-TUタウ次世代プラットフォームにおける抗タウ抗体E2814の優勢遺伝アルツハイマー病に対する臨床試験デザイン
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■ エーザイポスター発表演題
※左右にスクロールできます
開発品・演題番号 | 発表演題 |
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Lecanemab
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Clarity AD試験のベースライン特性:早期ADを対象としたlecanemabの18カ月投与を評価するプラセボ対照二重盲検並行群間比較臨床第Ⅲ相試験 |
Lecanemab
ポスター番号:57760 |
早期AD被験者におけるlecanemabの臨床第Ⅱ相POC試験(201試験)のコアおよび非盲検継続における脳アミロイドPET SUVrの変化の血漿Aβ42:40比による追跡 |
E2511
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新規低分子TrkAアロステリックモジュレーターE2511TrkAへの直接結合を介した特定のトロフィックシグナル伝達の誘導および、ADトランスジェニックモデルにおけるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)陽性ニューロンの喪失からの回復 |
レンボレキサント
ポスター番号:49917 |
認知症当事者様と介護者から直接報告された
不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)の兆候と症状 |
アルツハイマー病全般
ポスター番号:53842 |
ADに特異的な血液由来の遺伝子発現バイオマーカーの開発 |
アルツハイマー病全般
ポスター番号:54149 |
米国退役軍人省医療制度におけるADの臨床的検出に関連するケアプロセス |
アルツハイマー病全般
ポスター番号:55092 |
日本のレセプト情報データべ―スを用いた軽度認知障害(MCI)当事者様の直接医療費の算出 |
アルツハイマー病全般
ポスター番号:55998 |
AD当事者様と介護者のソーシャルメディアによるオンライン ナラティブを用いたCOVID-19パンデミックの影響 |
■ エーザイ・バイオジェンバーチャルシンポジウム
次世代AD臨床ケアパスウェイの定義:生物学的、技術的、およびヘルスケアの視点
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■ バイオジェン発表演題
※左右にスクロールできます
開発品・演題番号 | 発表演題・予定日時(米国山岳部夏時間) |
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アデュカヌマブ
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ICARE AD-US:米国におけるアデュカヌマブの前向き、シングルアーム、多施設、非介入リアルワールド試験デザイン
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アデュカヌマブ
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臨床第Ⅲ相EMERGE試験における高用量アデュカヌマブによる治療後の早期AD被験者における臨床評価指標の項目毎の分析 |
アデュカヌマブ
ポスター番号:57496 |
早期AD被験者を対象としたアデュカヌマブ臨床第Ⅲ相EMERGE試験およびENGAGE試験のアミロイドPETサブスタディのサブグループ解析 |
アデュカヌマブ
ポスター番号:57498 |
アデュカヌマブ臨床第Ⅲ相EMERGE試験およびENGAGE試験に基づくARIAの実臨床における管理に関する検討事項 |
アデュカヌマブ
ポスター番号:57499 |
アデュカヌマブによる治療によるADバイオマーカーの減少と臨床症状の悪化抑制との関連性 |
以上
<参考資料>
1. Lecanemab(開発コード: BAN2401)について
Lecanemabは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のAβ凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。Lecanemabは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、世界で初めて後期臨床試験として臨床症状評価による進行抑制と脳内Aβ蓄積量の減少を統計学的有意差をもって達成し、疾患修飾効果を示しました。エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるアルツハイマー病を対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を獲得しています。2014年3月に、エーザイとバイオジェンはlecanemabに関する共同開発・共同販促に関する契約を締結し、2017年10月に内容の一部変更契約を締結しています。現在、臨床第Ⅱ相試験(201試験)の非盲検投与延長試験および早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。また、2020年7月に、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を開始しました。National Institutes of Health、National Institute on Agingは、AHEAD 3-45試験(A45 TrialおよびA3 Trial)に資金を提供しています。2021年6月、lecanemabはFDAによりブレイクスルーセラピーの指定を受けました。
2. E2814について
E2814は抗MTBR(Microtubule binding region)タウ抗体です。E2814は、エーザイとユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究を通じて見出されました。E2814は、孤発性ADを含むタウオパチーに対する疾患修飾薬として開発されました。E2814は、タウ伝播種の脳内拡散を抑制する抗体として設計されています。優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(DIAN-TU)が実施する臨床試験における抗タウ薬として最初の評価対象薬に選定され、優性遺伝ADを対象としたフェーズIb/II試験が開始されました。
3. E2511について
E2511は、当社創製の新規低分子化合物で、神経成長因子(NGF)の細胞膜受容体tropomyosin receptor kinase A(TrkA)に直接結合し、ダメージを受けたコリン作動性神経の回復およびシナプス再形成を促すことを期待しています。臨床第Ⅰ相試験を実施中です。
4. レンボレキサントについて
レンボレキサントは、当社創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。正常な睡眠覚醒リズムにおいて、オレキシンの神経伝達によって覚醒が促進されると考えられていますが、不眠障害では、覚醒を制御するオレキシンの神経伝達が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により睡眠導入や睡眠維持をはかることができる可能性があると考えられており、不眠障害をはじめとする睡眠覚醒治療薬としての開発を進めています。
5. アデュカヌマブについて
アデュカヌマブは、ヒトモノクローナル抗体で、共同開発ライセンス契約に基づき2007年にNeurimmune社から導入されました。2017年10月より、バイオジェンとエーザイは全世界的にアデュカヌマブの開発ならびに製品化を共同で実施しています。
6. エーザイとバイオジェンによるアルツハイマー病領域の提携内容について
エーザイとバイオジェンは、アルツハイマー病治療剤の共同開発・共同販売にする提携を行っています。Lecanemabについては、エーザイ主導のもとで共同開発を進めます。
7. エーザイとバイオアークティックによるアルツハイマー病領域の提携について
2005年以来、バイオアークティックはAD治療薬の開発と商品化に関してエーザイと長期的な協力関係を築いてきました。2007年12月にlecanemabの商品化契約を締結し、2015年5月にAD用抗体lecanemabバックアップの開発・商品化契約を締結しました。エーザイは、AD向け製品の臨床開発、市場承認申請、商品化を担当しています。 バイオアークティックには、ADにおけるlecanemabの開発コストはありません。