抗がん剤「レンビマ®」(レンバチニブ)が日本において「予定される効能又は効果」としての子宮体がんについて、厚生労働省より希少疾病用医薬品に指定

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の経口マルチキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、子宮体がんを予定される効能又は効果として、厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されたことをお知らせします。

 

 日本における子宮体がんの患者様数は約3万人と推定されており1、2020年の新規罹患者数は1万7千人以上、また、3千人以上が亡くなったと推定されています2。子宮体がんのうち、9割以上を子宮内膜がんが占めるとされています3

 「レンビマ」は、「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法について、少なくとも1レジメンのプラチナ製剤による前治療歴のある進行性子宮内膜がん(日本では進行性子宮体がん)を対象とした臨床第Ⅲ相試験(309/KEYNOTE-775試験)を日本、米国、欧州などで実施しています。本試験において「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は、全生存期間と無増悪生存期間の二つの主要評価項目および奏効率の副次評価項目を達成し、現在、日本を含む世界各国で、本試験のデータに基づく効能・効果追加申請の準備中です。

 

 「レンビマ」について、当社は、2018年3月にMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.とグローバルな共同開発と共同販促を行う戦略的提携契約を締結しています。

 

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた画期的な新薬創出をめざしています。「レンビマ」によるがん治療の可能性の拡大を引き続き追求し、がん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

  

以上

   

<参考資料> 

1. 「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性をもたらします。

 現在、本剤は、単剤療法として、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど70カ国以上で承認を取得しており(米国では、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに係る適応)、また、切除不能肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど65カ国以上で承認を取得しています。加えて、血管新生阻害剤治療後の腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど60カ国以上で承認を取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。さらに、全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high:MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を有さない進行性子宮内膜がんに対する「キイトルーダ」との併用療法に係る適応で米国、オーストラリア、カナダなど10カ国以上で承認を取得しています(本承認は奏効率、奏効期間に基づく迅速承認であり、別途検証試験の実施が求められます)。

 

2. 子宮体がんおよび子宮内膜がんについて

 子宮体がんの罹患者数は2020年には、世界で41万7千人以上と推定され、9万7千人以上が亡くなったとされています4。日本では2020年において、1万7千人以上が新たに罹患し3千人以上が亡くなったと推定されています2。日本における子宮体がんの患者様数は約3万人と推定されています1。子宮体がんのうち、9割以上を子宮内膜がんが占めるとされています3。転移性子宮内膜がんの5年生存率は約17%と推計されています5

 

3. 309試験/KEYNOTE-775試験について

 本試験(ClinicalTrials.gov, NCT03517449)は、少なくとも1レジメンのプラチナ製剤による前治療歴のある進行性子宮内膜がんを対象とした、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法を評価する、多施設共同、非盲検、無作為化の臨床第Ⅲ相試験です。2つの主要評価項目(デュアルプライマリーエンドポイント)は全生存期間、およびRECISTv1.1に基づく盲検下独立中央画像判定による無増悪生存期間です。副次評価項目は、RECISTv1.1に基づく盲検下独立中央画像判定による奏効率、および安全性/忍容性です。827人の登録患者様のうち、697人がMSI-Hを有さない、またはpMMRを有する患者様であり、130人がMSI-Hを有する、またはdMMRを有する患者様でした。登録患者様は、「レンビマ」(20 mg、1日1回経口投与)/「キイトルーダ」(200 mg 3週ごと静脈内投与を1サイクルとし最大で35サイクル(約2年)まで投与)の併用、または治験医師選択化学療法(ドキソルビシン(60 mg/m2 3週ごと静脈内投与で総投与量500 mg/m2以下)またはパクリタキセル(4週を1サイクルとして80mg/m2週 1回静脈内投与を3週連続し、1週間休薬))に1:1で割り付けられました。

 

4. 日本における希少疾病用医薬品の指定制度について

 希少疾病用医薬品の指定制度は、医療上の必要性が高いにも関わらず、患者数が少なく、研究開発が進まない医薬品等の開発を支援することを目的としています。医薬品医療機器等法第77条の2に基づく指定要件として、対象患者数が国内において5万人に達しないこと、代替する適切な医薬品等又は治療方法がないこと、又は既存の医薬品等と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること、対象疾病に対して、当該医薬品等を使用する根拠があり、開発計画が妥当であることが定められています。具体的な支援内容としては、優先的な治験相談および優先審査の実施、申請手数料の減額、再審査期間の延長、試験研究費への助成金交付、税制措置上の優遇措置があります。

 

キイトルーダ®は Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の子会社であるMerck Sharp & Dohme Corpの登録商標です。

 

1 平成29年患者調査, 政府統計(e-Stat) https://www.e-stat.go.jp/

2 International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Japan Fact Sheet.” Cancer Today, 2020.

https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/populations/392-japan-fact-sheets.pdf .

3 American Cancer Society, “CANCER FACT & FIGURES 2020.”

https://www.cancer.org/content/dam/cancer-org/research/cancer-facts-and-statistics/annual-cancer-facts-and-figures/2020/cancer-facts-and-figures-2020.pdf .

4 International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Corpus uteri Fact Sheet.” Cancer Today, 2020. 

https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/24-Corpus-uteri-fact-sheet.pdf .

5 American Cancer Society website, accessed 2/16/2021:

https://www.cancer.org/cancer/endometrial-cancer/detection-diagnosis-staging/survival-rates.html .