第13回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)においてアルツハイマー病/認知症領域の開発品に関する最新データを発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2020年11月4日から7日にバーチャルで開催される2020年度のアルツハイマー病臨床試験会議(Clinical Trials on Alzheimer’s Disease Conference:CTAD)において、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemab(開発品コード:BAN2401)の最新データを含む合計7演題を発表することをお知らせします。

 

 Lecanemabについては、4演題の口頭発表を行います。プレクリニカル(無症状期)アルツハイマー病(AD)を対象とする臨床第Ⅲ相試験として新たに開始した、AHEAD 3-45試験の臨床試験デザインと初期のスクリーニング結果について発表します。また、早期ADを対象として実施した臨床第Ⅱ相試験(201試験)についてアミロイド関連画像異常(ARIA-E(浮腫))の発現率に関する最新の解析結果、および現在実施中の201試験非盲検継続投与期の最初の12カ月の投与期間における脳内Aβ蓄積量の変化およびARIA-E発現に関する予備的解析結果を発表します。さらに、早期ADを対象として実施中の臨床第Ⅲ相試験Clarity AD 試験に登録されている当事者様のベースライン時の特徴について発表します。

 その他、レンボレキサントにおけるアルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床試験に関連して、マウスモデルにおける本剤の有効性について発表を行います。新規抗MTBR(Microtubule Binding Region:微小管結合領域)タウ抗体E2814による健康成人を対象とした臨床第Ⅰ相単回投与用量漸増試験についても発表します。

 

 また、アデュカヌマブについて、バイオジェン・インク (本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、以下バイオジェン)が臨床第Ⅲb相再投与試験EMBARKの臨床試験デザインについて口頭発表を行います。

 当社は、lecanemabおよびアデュカヌマブについて、バイオジェンと共同で開発しています。アデュカヌマブは、2020年8月に米国食品医薬品局(FDA)にAD治療薬としての生物製剤ライセンス申請が受理され、優先審査に指定されています。

 

 シスメックス株式会社(本社:兵庫県、以下 シスメックス)と当社が共同開発している血液を用いた簡便なAD診断法の創出に関して、全自動免疫測定装置HISCL™*で測定した血漿Aβ比によるアミロイドPET検査のセンチロイド法で決定されたアミロイド病理の予測について、ポスター発表があります。

 

 当社は、アルツハイマー病/認知症領域分野における35年以上の創薬活動の経験を基盤に、多元的かつ包括的なアプローチによる創薬研究を通じて、認知症の予防と治癒の実現をめざしています。革新的な治療薬を一日も早く創出し、アンメット・メディカル・ニーズの充足と認知症当事者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

 

* HISCL™ (ヒスクル)はシスメックス株式会社の商標です。

      

■ エーザイ 口頭発表演題

※左右にスクロールできます

開発品・演題番号発表演題・予定日時(米国東部時間)
BAN2401
OC 2
プレクリニカルADを対象としたBAN2401のAHEAD 3-45試験:試験デザインおよび初期スクリーニング結果
口頭発表(ライブ配信): 11月4日(水)10:00 AM - 10:15 AM
QAセッション:11月4日(水)11:25 AM - 11:40 AM
BAN2401
OC 10
早期ADを対象としたBAN2401のプラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、18カ月投与、臨床第Ⅲ相試験であるClarity ADのベースライン時における被験者特性
口頭発表: 11月4日(水)1:00 AM より公開
BAN2401
OC 14
早期ADを対象としたBAN2401の臨床第Ⅱ相試験におけるアミロイド関連画像異常(ARIA-E)発現の経時的薬物動態/薬力学解析
口頭発表(ライブ配信): 11月5日(木)9:45 AM - 10:00 AM
QAセッション:11月5日(木)11:15 AM - 11:30 AM
BAN2401
LB 24
早期ADを対象としたBAN2401の臨床第Ⅱ相試験(201試験)非盲検継続投与期の最初の12カ月の治療期間における脳内Aβへの効果およびARIA-E発現に関する予備的解析
口頭発表(ライブ配信): 11月7日(土)12:10 PM – 12:25 PM
QAセッション:11月7日(土)12:25 PM – 12:50 PM
レンボレキサント
LB15
アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)モデル動物としてのSAMP8マウスの評価とデュアルオレキシン(ヒポクレチン)受容体拮抗剤レンボレキサントの有効性
口頭発表: 11月6日(金)1:00 AM より公開
E2814
LB 23
新規抗タウ治療抗体E2814における健康成人を対象とした臨床第Ⅰ相単回投与用量漸増試験
口頭発表(ライブ配信): 11月7日(土)11:55 AM - 12:10 PM
QAセッション:11月7日(土)12:25 PM - 12:50 PM

 

■ エーザイ ポスター発表演題

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開発品・ポスター番号発表演題・予定日時(米国東部時間)
一般
P60
アルツハイマー病当事者とその介護者によるソーシャルメディアを介したオンライン上の投稿と臨床的評価の融合
11月4日(水)1:00 AM より公開

    

■ バイオジェン 口頭発表演題

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開発品・演題番号発表演題・予定日時(米国東部時間)
一般
P60
EMBARK: ADを対象としたアデュカヌマブの長期的な安全性と有効性を評価するための非盲検、単一群,臨床第Ⅲb相試験
口頭発表(ライブ配信): 11月4日(水)10:15 AM - 10:30 AM
QAセッション:11月4日(水)11:25 AM - 11:40 AM

      

■ バイオジェン ポスター発表演題

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開発品・ポスター番号発表演題・予定日時(米国東部時間)
一般
P70
National Alzheimer's Coordinating Centerのデータによる、アミロイド陽性者のADスペクトラム全体に渡る進行率の推定
11月4日(水)1:00 AM より公開

    

■ シスメックス・エーザイ ポスター発表演題

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開発品・ポスター番号発表演題・予定日時(米国東部時間)
一般
LP10
全自動免疫測定法で測定した血漿Aβ比によるアミロイドPET検査のセンチロイド法で決定されたアミロイド病理の予測
11月4日(水)1:00 AM より公開

以上

      

<参考資料>

1.エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

 エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関して、幅広い提携を行っています。抗Aβプロトフィブリル抗体lecanemab(開発品コード:BAN2401)についてはエーザイ主導のもとで、抗Aβ抗体アデュカヌマブについてはバイオジェン主導のもとで、グローバルでの承認取得に向けた開発を進め、承認取得後は米国、欧州(EU)、日本といった主要市場で共同販促を行います。

 

2.エーザイとシスメックスのコラボレーションについて

 エーザイとシスメックスは2016年2月に、認知症領域に関する新たな診断薬創出に向けた非独占的包括契約を締結しています。両社は、互いの技術・ナレッジを活用し、認知症の早期診断や治療法の選択、治療効果の定期的確認が可能な次世代診断薬の創出を目指します。

 

3.Lecanemab(開発品コード:BAN2401)につい

 Lecanemabは、BioArctic AB(本社:スウェーデン)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のAβ凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。Lecanemabは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、世界で初めて後期臨床試験として臨床症状評価による進行抑制と脳内Aβ蓄積量の減少を統計学的有意差をもって達成し、疾患修飾効果を示しました。現在、201試験の非盲検投与延長試験および検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。また,プレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)も実施中です。エーザイとバイオジェンはlecanemabの共同開発・共同販促に関する契約を締結しています。National Institutes of Health、National Institute on Agingは、AHEAD 3-45試験(A45 Trial(認可番号R01AG061848)およびA3 Trial(認可番号R01AG054029))に資金を提供しています。

   

4.レンボレキサントについて

 レンボレキサントは、当社創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。正常な睡眠覚醒リズムにおいて、オレキシンの神経伝達によって覚醒が促進されると考えられていますが、不眠障害では、覚醒を制御するオレキシンの神経伝達が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により睡眠導入や睡眠維持をはかることができる可能性があると考えられており、不眠障害をはじめとする睡眠覚醒治療薬としての開発を進めています。米国において2020年6月に入眠困難、睡眠維持困難のいずれかまたはその両方を伴う成人の不眠症の適応で、製品名「DAYVIGOTM」として新発売し、日本において2020年7月に、不眠症の適応で、製品名「デエビゴ®」として新発売しました。カナダ、オーストラリア、香港などの国や地域において新薬承認申請中です。また、軽度、中等度アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験を完了し、結果も公表されています。

   

5.アデュカヌマブについて

 アデュカヌマブ(開発コード:BIIB037)はADの治療薬候補として開発されたモノクローナル抗体です。臨床試験データに基づき、アデュカヌマブは、疾患の原因となる病態生理に作用し、認知機能の低下(悪化)を抑制し、金銭管理、家事(掃除、買い物、洗濯など)や単独での外出などの日常生活動作におけるベネフィットが得られると期待されます。承認された場合、アデュカヌマブは、AD当事者の疾患の経過に本源的な変化をもたらす初めての治療薬となります。

 アデュカヌマブは、共同開発ライセンス契約に基づきバイオジェンがNeurimmune社から導入しました。2017年10月より、バイオジェンとエーザイは全世界的にアデュカヌマブの開発ならびに製品化を共同で実施しています。

 EMERGE試験、ENGAGE試験は、アデュカヌマブの有効性と安全性を評価する多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較、臨床第Ⅲ相試験です。試験の主要評価項目は、CDR-SBのスコアの変化によって測定される認知機能および機能障害の低下抑制における、プラセボと比較したアデュカヌマブ月1回投与の有効性を評価することです。副次評価項目は、MMSE、ADAS-Cog 13およびADCS-ADL-MCIによって測定される臨床症状悪化の抑制における、プラセボと比較したアデュカヌマブ月1回投与の有効性を評価することでした。