抗がん剤タゼメトスタット、日本においてEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫に係る適応で新薬承認申請書を提出

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、日本において、EZH2阻害剤タゼメトスタット臭化水素酸塩(一般名、以下 タゼメトスタット)について、EZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫に係る適応で新薬承認申請書を提出したことをお知らせします。

 

 本申請は、当社が国内で実施した多施設共同、非盲検、単群の臨床第Ⅱ相試験(206試験)およびEpizyme, Inc. (本社:米国マサチューセッツ州)が海外で実施した臨床試験の結果などに基づいています。206試験では、前治療後に再発・増悪したEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫患者様などが登録され、主要評価項目として奏効率、副次評価項目として安全性などが評価されました。本試験の結果の詳細については今後学会等で発表する予定です。

 

 タゼメトスタットは、Epizyme, Inc.が創出したファースト・イン・クラスの経口EZH2阻害剤です。本剤は、エピジェネティクス関連タンパク質群のうち、ヒストンメチル基転移酵素の一つであり、発がんプロセスに関与するEZH2を選択的に阻害することでがん関連遺伝子の発現を制御し、がん細胞の増殖を抑制します。タゼメトスタットの開発、商業化は、日本では当社が、それ以外の地域ではEpizyme, Inc.が担っています。本年6月には、米国において、濾胞性リンパ腫に係る適応で迅速承認されています。

 

 濾胞性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の10%~20%を占める低悪性度B細胞リンパ腫です。濾胞性リンパ腫は一般的に進展が緩徐であり、化学療法の感受性は良好です。しかし、再発を繰り返すことが多いことから依然として治癒が困難な疾患であり、新たな治療戦略が求められています。濾胞性リンパ腫のうち、7%~27%がEZH2遺伝子に機能獲得型変異を有すると報告されていることから、国内の濾胞性リンパ腫の患者様のうち、約600~2,400人が当該変異を有していると推定されます。

 

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出を引き続き追求し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

以上

<参考資料>

1. エピジェネティクスについて

 エピジェネティクス(epigenetics)とは、遺伝子機能の後天的な活性化・不活性化のための機構の一種で、DNAの塩基配列の変化を伴わずに細胞分裂後も継承される遺伝子機能の変化のしくみ、またはそれを研究する学問領域を指します。遺伝子発現の制御につながる修飾として、DNAのメチル化や、ヒストンタンパクの修飾(メチル化、アセチル化、リン酸化等)が挙げられます。

 

2. EZH2について

 EZH2は、エピジェネティクス関連タンパク質群のうちヒストンメチル基転移酵素に属し、ヒストンタンパクH3の27番目のリジン残基(H3K27)のメチル化を特異的に触媒することで種々の遺伝子発現を制御します。EZH2遺伝子の機能獲得型変異や過剰発現、あるいはEZH2抑制因子の機能不全によるH3K27のメチル化の亢進が発がんに重要な役割を担っていると考えられています。

 

3. タゼメトスタット(開発コード:E7438、Epizyme, Inc.の開発コード:EPZ-6438)について

 タゼメトスタットは、Epizyme, Inc.が独自の創薬プラットフォームから創製したEZH2を標的とするファースト・イン・クラスの経口低分子阻害剤です。本剤はEZH2を選択的、かつS-アデノシルメチオニン(メチル基供与体)と競合的に阻害することでH3K27のメチル化を抑制し、がん関連遺伝子の発現を制御します。米国では本年1月に手術不適応の成人、または16歳以上の小児の局所進行性類上皮肉腫に係る適応で迅速承認を受けています。また、本年6月には、「少なくも2レジメン以上の前治療歴があり、FDAが承認したEZH2遺伝子変異の検査で陽性と診断された成人の再発・難治性の濾胞性リンパ腫」、および「他に治療手段がない成人の再発・難治性の濾胞性リンパ腫」の適応で迅速承認を受けています。