自社創製の新規不眠症治療薬「DAYVIGO®」、香港において新薬承認申請受理アジア地域における本剤の最初の新薬承認申請

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製のオレキシン受容体拮抗薬「Dayvigo®」(一般名:レンボレキサント、日本製品名「デエビゴ®」)について、「入眠困難、睡眠維持困難のいずれかまたはその両方を伴う成人の不眠症」を適応として、香港衛生署(Department of Health)に対する承認申請が受理されましたのでお知らせします。本申請は、アジア地域(日本を除く)における最初の申請となります。引き続き、アジア地域各国での新薬承認申請を行う予定です。

 

 「Dayvigo」は、脳内で覚醒に関与するオレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。本剤は、覚醒を制御しているオレキシン神経伝達に作用し、睡眠覚醒リズムを整えることで、入眠と睡眠維持および覚醒を調整すると考えられています。本剤は、オレキシン1および2受容体双方を阻害しますが、ノンレム睡眠およびレム睡眠の両方の抑制に関与するオレキシン2受容体への親和性がより強く、結合・解離が速いことから、患者様に速やかな入眠と睡眠維持をもたらすことが期待されます。

 本剤については、米国において2020年6月に入眠困難、睡眠維持困難のいずれかまたはその両方を伴う成人の不眠症の適応で、日本では同年7月に不眠症の適応でそれぞれ新発売しました。

 

 不眠症は、睡眠をとる十分な機会があるにもかかわらず、入眠困難、睡眠維持困難のいずれかまたはその両方の症状を持つことが特徴です。全世界で成人の約30%の方が不眠症の症状を有する1、2、罹患頻度の高い睡眠障害のひとつです。香港では、成人の35%以上の方が不眠症を有しているとの報告があります3。特に高齢者の有病率は高い傾向にあり、多くの場合、その症状は長期にわたります。不眠症は、疲労、集中困難、易刺激性により4、5、長期欠勤や生産性の低下などの社会的損失を引き起こし、高齢者においてはふらつきの原因となり転倒のリスクとなっています6

 

 当社は、「Dayvigo」をアジア地域における不眠症の患者様に新たな治療選択肢としてお届けするための取り組みを継続し、速やかな入眠と良質な睡眠維持によってもたらされる日中の活力ある生活の実現と、患者様のリワーク/リカバリーに貢献してまいります。

 

以上


<参考資料> 

  1. 1. 「Dayvigo」(一般名:レンボレキサント、日本製品名「デエビゴ」)について

 「Dayvigo」は、自社創製の新規低分子化合物で、脳内で覚醒に関与するオレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です(IC50値はオレキシン1受容体:6.1nM、オレキシン2受容体:2.6nM)。本剤は、オレキシン1および2受容体双方を阻害しますが、ノンレム睡眠およびレム睡眠の両方の抑制に関与するオレキシン2受容体への親和性がより強く、結合・解離が速いことから、患者様に速やかな入眠と睡眠維持をもたらすことが期待されます(Ki値はオレキシン1受容体:8.1nM、オレキシン2受容体:0.48nM)。

 本剤について、米国において2020年6月に入眠困難、睡眠維持困難のいずれかまたはその両方を伴う成人の不眠症の適応で新発売し、日本において2020年7月に、不眠症の適応で新発売しました。また、カナダとオーストラリアにおいて新薬承認申請中です。

 本剤は、臨床試験の結果から、原発性のみならず、うつ病などに併発する不眠症への有効性が示唆されています(SUNRISE2試験)。

 不眠症の適応のほか、軽度、中等度アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験が進行中です。

 

  1. 2. 睡眠障害と不眠症について

 睡眠障害は、不眠症(不眠障害)、ISWRDのほか、過眠障害、呼吸関連睡眠障害などの疾患分類からなります。不眠症は、その中でもっとも一般的な疾患であり、全世界で成人の約30%の方が不眠症の症状を有しているとされています1、2。不眠症は、睡眠をとる十分な機会があるにもかかわらず、入眠困難、睡眠維持困難のいずれか、またはその両方に苦しむことが特徴であり、疲労、集中困難、易刺激性を引き起こす可能性があります4、5。良質な睡眠は、脳を含めた健康にとても重要であり7、最適な睡眠時間は7-8時間と言われています8。睡眠不足は、高血圧、事故によるけが、糖尿病、肥満、うつ病、心臓発作、脳卒中、認知症のリスクを増やすことに加え、気分や行動に対する悪影響など、幅広い健康への影響との関連性が示唆されています4、8

 不眠症について、女性は男性に比べて約1.4倍罹患率が高いとの報告もあります9。高齢者も、不眠症の罹患率が高いことが知られています。老化による、睡眠の乱れ、頻繁な起床、早朝の起床などによる睡眠パターンの変化により、不眠症に至ることがあります10

 

  • 1

    Institute of Medicine. Sleep disorders and sleep deprivation: An unmet public health problem. Washington, DC: National Academies Press. 2006.

  • 2

    Ohayon MM, et al. Epidemiology of insomnia: what we know and what we still need to learn. Sleep Med Rev. 2002;6(2):97-111.

  • 3

    Wong, et. al. Prevalence of Insomnia among Chinese adults in Hong Kong: a population-based study. J Sleep Res. 2011; 20: 117-126

  • 4

    Ferrie JE, et al. Sleep epidemiology – a rapidly growing field. Int J Epidemiol. 2011;40(6):1431–1437.

  • 5

    Roth T. Insomnia: definition, prevalence, etiology and consequences. J Clin Sleep Med. 2007;3(5 Suppl):S7–S10.

  • 6

    厚生労働科学研究班・睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン-出口を見据えた不眠医療マニュアル-

  • 7

    Cappuccio FP, et al. Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Sleep. 2010;33(5):585-592.

  • 8

    Pase MP, Himali JJ, Grima NA, et al. Sleep architecture and the risk of incident dementia in the community. Neurology. 2017;89(12):1244-1250

  • 9

    Roth T, et al. Prevalence and perceived health associated with insomnia based on DSM-IV-TR; International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, tenth revision; and Research Diagnostic Criteria/International Classification of Sleep Disorders, second edition criteria: results from the America Insomnia Survey. Biol Psychiatry. 2011;69:592– 600.

  • 10

    Crowley K. Sleep and sleep disorders in older adults. Neuropsychol Rev. 2011;21(1):41-53.