抗がん剤「デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)」、日本において皮膚T細胞性リンパ腫および末梢性T細胞リンパ腫に係る適応で新薬承認申請書を提出

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、日本において、抗がん剤デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)(一般名、開発コード:E7777)について、皮膚T細胞性リンパ腫(Cutaneous T-Cell Lymphoma : CTCL)および末梢性T細胞リンパ腫(Peripheral T-Cell Lymphoma : PTCL)に係る適応の新薬承認申請書を提出したことをお知らせします。

 

 本申請は、再発または難治性CTCLおよびPTCLの患者様を対象に国内で実施された、本剤の有効性と安全性などを評価する多施設共同、非盲検、単群の臨床第Ⅱ相試験(205試験)などの結果に基づいています。

 本試験の結果、CTCLおよびPTCL患者様全体(36人)の奏効率(Objective Response Rate:ORR)は、36.1%(95%信頼区間(CI):20.8-53.8)であり、事前に設定した閾値を統計学的に有意に上回り、主要評価項目を達成しました。CTCL(19人)およびPTCL(17人)のORRは、それぞれ31.6%(95%CI:12.6-56.6)、41.2%(95%CI:18.4-67.1)でした。

 本試験で認められた主な有害事象(上位5つ)は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)増加(89.2%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)増加(86.5%)、低アルブミン血症(70.3%)、リンパ球減少症(70.3%)、発熱(51.4%)でした。

 

 デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)は、インターロイキン2(IL-2)の受容体結合部分とジフテリア毒素の融合タンパク質であり、腫瘍細胞表面上のIL-2受容体と特異的に結合します。細胞内に移行したジフテリア毒素がタンパク質合成を阻害し、細胞死を誘導することで抗腫瘍効果を示すと考えられています。また、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高い医薬品として評価され、厚生労働省より開発要請を受けています。

 

 当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出を引き続き追求し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

 

* 国内では承認されていない医薬品や適応(未承認薬・適応外薬)について、医療上の必要性を評価するとともに、公知申請への該当性や承認申請のために追加で実施が必要な試験の妥当性を確認すること等により、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発促進に資することを目的とする厚生労働省内に設置された検討会議

 

以上

   

<参考資料>

1. デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)(一般名、開発コード:E7777)について

 デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)は、インターロイキン2(IL-2)の受容体結合部分とジフテリア毒素の融合タンパク質であり、腫瘍細胞表面上のIL-2受容体と特異的に結合します。細胞内に移行したジフテリア毒素がタンパク質合成を阻害し、細胞死を誘導することで抗腫瘍効果を示すと考えられています。

 当社は、本剤について日本とアジアにおける独占的な開発および販売権を保持しており、それ以外の地域においては、Dr. Reddy's Laboratories Ltd.が開発および販売権を有しています。

 

2. 臨床第Ⅱ相試験(205試験)について

 205試験は、再発または難治性の皮膚T細胞性リンパ腫(Cutaneous T-Cell Lymphoma : CTCL)および末梢性T細胞リンパ腫(Peripheral T-Cell Lymphoma : PTCL)の患者様を対象に国内で実施された、デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)の有効性と安全性などを評価する多施設共同、非盲検、単群の臨床第Ⅱ相試験です。本試験に参加された患者様については、治験実施医療機関とは独立した中央病理診断委員会により、最終的な病理組織学的診断が確定されました。参加患者様の病理組織型は、CTCL19人、PTCL17人、その他の悪性リンパ腫1人でした。有効性については、CTCLおよびPTCLの36人で評価され、安全性については、参加患者様37人にて評価されました。本剤は、3週間を1サイクルとして、9μg/kg/dayを1日目から5日目の連続5日間、最大8サイクル点滴静注で投与されました。本試験では、主要評価項目を奏効率とし、その信頼区間の下限値が事前に規定した閾値を上回ることを基準として、本剤の有効性が評価されました。

 

3. 皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)について

 CTCLは、さまざまな病型を持つ皮膚原発性の非ホジキンリンパ腫の一種です。免疫機構に関与するリンパ球の一つであるT細胞の一部ががん化して、皮膚病変が起こり、疼痛や掻痒感などによって患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を低下させます。CTCLは、一般的に悪性度の低いリンパ腫ですが、緩徐に進行し、数年から十数年かけて腫瘍期へと進展します。腫瘍期に移行した場合は悪性度が高くなり、リンパ節や内臓に浸潤が見られるなど予後不良となるため、依然としてアンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患の一つです。

 

4. 末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)について

 PTCLは、T細胞非ホジキンリンパ腫の一種で、中悪性度に分類されます。進行期になってから発見されることが多く、リンパ節の腫れやしこり、発熱、大量の寝汗、体重減少などの症状がみられます。PTCLのうち、未分化リンパ腫キナーゼ(Anaplastic Lymphoma Kinase:ALK)陽性未分化大細胞リンパ腫は、20~30歳代で発症し、予後が良く治癒しやすいという特徴がありますが、その他の病型では60歳前後に発症することが多く、予後不良となる場合や治療が難しい場合があり、依然として、アンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患の一つです。