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- 2020年3月25日
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、当社が創製した経口マルチ キナーゼ阻害剤レンバチニブメシル酸塩(製品名:「レンビマ®」、以下 レンバチニブ)の創薬研究が、日本薬学会より「2020年度 日本薬学会創薬科学賞」を受賞したことをお知らせします。
日本薬学会創薬科学賞は、日本薬学会が定める賞の一つであり、医薬品の創薬およびそれに関連した薬学の応用技術の開発において、医療に貢献する優れた研究業績を残した研究者に対して授与される賞です。研究の独創性に加え、医薬品の有効性や安全性等、医療および技術における革新性が評価対象になります。1988年に同賞は創設され、当社としては、1998年度にアルツハイマー型認知症治療剤ドネペジル塩酸塩の創製に対して、2013年度に抗がん剤エリブリンメシル酸塩の創製に対して、同賞をそれぞれ受賞しています。
このたびの受賞理由として、「独自に構築したヒト病態を模倣した評価系を用いて得られたリード化合物を基に巧みな合成展開を行い、世界初の結合様式(タイプV)を持つキナーゼ阻害剤レンバチニブを創製したこと、腫瘍増殖と血管新生に関連する複数のキナーゼを選択的に阻害する薬剤特性を巧みに利用し、臨床試験において多くのがん腫に対する有効性を確認し、本賞応募時点で甲状腺がん、腎細胞がん、肝細胞がんに係る適応を取得していること、加えて、米国食品医薬品局よりブレークスルー・セラピーの指定を受けている革新的な医薬品であり、今後、グローバルでの成長が大いに期待されること」などが挙げられました。
現在、レンバチニブは、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州など60カ国以上、肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど55カ国以上、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど50カ国以上、さらに子宮内膜がんに対する「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法に係る適応で米国、オーストラリア、カナダの3カ国で承認を取得しています。
当社は、がん領域を重点領域の一つと位置づけており、がんの「治癒」に向けた革新的な新薬創出をめざしています。当社は、レンバチニブによるがん治療の可能性を引き続き追求し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。
【受賞テーマ】
VEGFおよびFGF受容体キナーゼ阻害に基づく抗腫瘍剤レンバチニブの創製
【受賞者】
船橋 泰博 | (エーザイ株式会社 オンコロジービジネスグループ デピュティチーフサイエンティフィックオフィサー) |
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鶴岡 明彦 | (エーザイ株式会社 オンコロジービジネスグループ メディスンクリエーション 日本・アジア臨床開発部長(理事職)) |
松井 順二 | (エーザイ株式会社 オンコロジービジネスグループ デピュティチーフディスカバリーオフィサー/メディスンクリエーション トランスレーショナルサイエンス部長) |
松嶋 知広 | (エーザイ株式会社 オンコロジービジネスグループ ストラテジー部長) |
宮崎 和城 | (元エーザイ株式会社社員) |
*「レンビマ」について、当社は、2018年3月にMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)とグローバルな共同開発と共同販促を行う戦略的提携契約を締結しています。「キイトルーダ」はMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の子会社であるMerck Sharp & Dohme Corpの登録商標です。
以上
<参考資料>
- 1. 「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について
「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。
非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗腫瘍免疫活性をもたらします。また、作用機序に関する非臨床研究モデルで示されているとおり、がん微小環境における「レンビマ」と抗PD-1モノクローナル抗体による相乗作用の結果、「レンビマ」と抗PD-1モノクローナル抗体の併用による抗腫瘍活性は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法の抗腫瘍活性を上回ることが示されました。
- 2. 新規結合様式(タイプV)について
キナーゼ阻害剤は、標的キナーゼへの結合部位と阻害剤が結合した際にキナーゼがとるコンフォーメーションの違いにより、タイプI~Vに分類されます。これまでに承認されているチロシンキナーゼ阻害剤の多くはタイプIあるいはタイプⅡに属しますが、「レンビマ」は、X線結晶構造解析により、既存薬とは異なるタイプVの結合様式を有する阻害剤であることが明らかになりました。また、「レンビマ」は速度論的解析実験から、標的分子に素早く結合し強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されており、これには新規結合様式が寄与していると推察されています。