抗てんかん剤「フィコンパ®」日本において部分てんかんの単剤療法および小児適応、並びに新規剤形の追加に係る承認を取得

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、本日、自社創製の抗てんかん剤「フィコンパ®」(一般名:ペランパネル水和物、海外製品名:「Fycompa®」)について、日本において、てんかん患者様の部分発作に対する単剤療法および4歳以上の小児てんかん患者様の部分発作に係る追加適応、並びに細粒剤の剤形追加に係る承認を取得しましたのでお知らせします。

 

 部分発作に対する単剤療法の承認は、日本、韓国で実施した「フィコンパ」単剤療法の臨床第Ⅲ相試験(FREEDOM試験/342試験)の結果に基づくものです。本試験の結果、部分発作を有する12歳から74歳の未治療のてんかん患者様に対する「フィコンパ」単剤療法において、発作の完全消失の割合が有効性基準*を上回り、主要評価項目を達成しました。本試験で確認された有害事象(発生頻度10%以上)は、浮動性めまい、傾眠、上咽頭炎、頭痛であり、これまでの「フィコンパ」の安全性プロファイルと同様でした。

 4歳以上の小児てんかん患者様の部分発作に係る追加承認は、日本、米国、欧州で実施した小児てんかんを対象とした「フィコンパ」併用療法の臨床第Ⅲ相試験(311試験)の結果に基づくものです。本試験の結果、コントロール不十分な部分発作を有する小児てんかん患者様(4歳以上12歳未満)において、「フィコンパ」併用療法における安全性および有効性が12歳以上の患者様の場合と同様に得られることが示されました。

 また、細粒剤の剤形に関する追加承認は、小児や錠剤の服用が困難な患者様に対して容易に服用可能な新剤形として開発した細粒剤について、日本で実施した細粒剤と錠剤の生物学的同等性試験の結果に基づくものです。本試験において、細粒剤と錠剤との生物学的同等性が確認されました。

 

 「フィコンパ」は、当社筑波研究所で創製されたファースト・イン・クラスの抗てんかん剤であり、1日1回投与の経口製剤です。本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体を選択的かつ非競合的に阻害し、神経の過興奮を抑制します。世界各国において、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)並びに強直間代発作に対する併用療法として承認を取得しています。また、米国では、4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤療法および併用療法に係る承認も取得しています。

 

 日本におけるてんかん患者様数は約100万人と推定されており、年齢層に関係なく発症する可能性が有りますが、特に小児と高齢者で発症率が高いと言われています。当社は、てんかんを含む神経領域を重点疾患領域と位置づけており、患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上を第一義として、より一層の適正使用情報の提供を行ってまいります。今回の「フィコンパ」の単剤療法、4歳以上の小児適応追加、並びに細粒剤の追加に係る承認を機に、引き続き、安全性情報提供を最優先とした活動を行い、より多くの患者様に発作フリー(seizure freedom)をお届けする使命を追求し、てんかん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

* 本試験の有効性基準は、既存の抗てんかん薬の単剤療法の臨床試験成績などを参考に設定され、本試験の有効性評価対象73人の場合は、発作の完全消失割合が52.1%以上となります。

以上

<参考資料>

1. 「フィコンパ」(一般名:ペランパネル水和物、海外製品名「Fycompa」)について

 「フィコンパ」は、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。「フィコンパ」は1日1回就寝前に経口投与するタイプの製剤です。米国および欧州では、錠剤と経口懸濁液の承認を取得しています。今回の追加承認により、日本では、錠剤に加え、細粒剤の承認を取得しました。また、「フィコンパ」の日本の効能・効果は、「てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)」および「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法」となりました。

 本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法について、日本、米国、欧州、中国、アジアなど65カ国以上で承認を取得しています。さらに本剤は、12歳以上の全般てんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど60カ国以上で承認を取得しています。日本と米国においては4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤および併用療法の承認も取得しています。欧州においては、小児てんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)および小児の特発性全般てんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法に係る適応を追加申請しています。現在までに、世界で27万人を超える患者様に「フィコンパ」が処方されました(すべての適応症の合計)。

 本剤について、レノックス・ガストー症候群に伴うてんかん発作を有する患者様を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(338試験)を実施しています。

   

2.  FREEDOM試験(342試験)の概要

試験名称 : 部分発作(二次性全般化発作を含む)を有する未治療のてんかん患者を対象に、「フィコンパ」の単剤療法の有効性および安全性を検討する非盲検非対照試験
対象 : 部分発作を有する未治療の12歳~74歳のてんかん患者様89人
投与法 : 「フィコンパ」 4 mgまでを1日1回就寝前に経口投与(発作発生の場合8 mgへ増量)
治療期間 : 治療漸増期6週間および治療維持期26週間(4 mgから8 mgへ増量する場合、治療漸増期4週間および治療期26週間)、および継続期
実施地域 : 日本、韓国
主要評価項目: 治療維持期26週間における部分発作に対する完全発作消失割合
結果の概要: 89人の対象患者様に「フィコンパ」が単剤投与され、評価対象の患者様73人において4 mgで発作の完全消失の割合が有効性基準*を上回り、主要評価項目を達成しました。また、4 mgおよび8 mgを合わせた中間結果においても有効性基準を上回っています。本試験で確認された有害事象(発生頻度10%以上)は、浮動性めまい、傾眠、上咽頭炎、頭痛であり、これまでの 「フィコンパ」の安全性プロファイルと同様でした。

*本試験の有効性基準は、既存の抗てんかん薬の単剤療法の臨床試験成績などを参考に設定され、本試験の有効性評価対象73人の場合は、発作の完全消失割合が52.1%以上となります。

3.  311試験の概要

試験名称 : コントロール不十分な部分発作又は強直間代発作を伴う小児てんかん患者を対象とした他剤併用時における「フィコンパ」経口懸濁剤の安全性,忍容性及び暴露量と有効性の関係を評価する非盲検試験
対象 : コントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する4歳以上12歳未満の小児てんかん患者様180人
投与法 : 「フィコンパ」 2~16 mgまでを1日1回就寝前に経口投与
治療期間 : 治療漸増期最長11週間および治療維持期最長12週間および継続期期
実施地域 : グローバル(米国、欧州、日本、アジア)
主要評価項目: 安全性および忍容性
結果の概要: 180人の対象患者様に「フィコンパ」が投与され、有効性が12歳以上の患者様の場合と同様に得られることが示されました。本試験で確認された有害事象(発生頻度10%以上)は、傾眠、上咽頭炎、発熱、嘔吐、浮動性めまい、インフルエンザ、易刺激性であり、これまでの「フィコンパ」の安全性プロファイルと同様でした。

4. てんかんについて

 てんかんの患者様数は、日本で約100万人、米国で約340万人、欧州で約600万人、中国で約900万人、世界中で約6,000万人などの報告があります。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず1、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分てんかんと、約 4割を占める全般てんかんに大別されます。部分てんかんの発作では、脳の電気信号の異常が一部分に限定されています。部分発作の中には、異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になるものもあります(二次性全般化発作)。全般てんかんの発作では、電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から意識がなくなったり、全身に症状が現れたりします。

 

1 “The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research. What are the epilepsies?” National Institute of Neurological Disorders and Stroke, accessed May 24, 2016, http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#230253109