「レンビマ®」の甲状腺がんに係る適応の承認条件(全例調査)解除について

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、経口マルチキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、本剤の甲状腺がんに係る適応の承認条件となっていた特定使用成績調査(全例調査)に関し、厚生労働省から解除の通達を受けましたのでお知らせします。

 

 「レンビマ」は、2015年3月に「根治切除不能な甲状腺癌」を効能・効果として承認され、その際の承認条件として「国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。」が付記されていました。

 

 今回の承認条件解除は、当社が厚生労働省に提出した全例調査における安全性および有効性データ(安全性解析対象症例604例、有効性解析対象症例601例)に基づいて、全例調査が適切に実施され、本剤の適正使用のために必要な措置が講じられていると判断されたことによるものです。

 

 当社は、引き続き「レンビマ」の適正使用の推進および情報提供に努め、患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層の貢献をしてまいります。

 

  • *「レンビマ」について、当社は、2018年3月にMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)とグローバルな共同開発と共同販促を行う戦略的提携契約を締結しています。

 

 

以上

<参考資料>

1. 「レンビマ®」(一般名: レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗腫瘍免疫活性をもたらします。また、作用機序に関する非臨床研究モデルで示されているとおり、がん微小環境における「レンビマ」と抗PD-1モノクローナル抗体による相乗作用の結果、「レンビマ」と抗PD-1モノクローナル抗体の併用による抗腫瘍活性は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法の抗腫瘍活性を上回ることが示されました。

 現在、「レンビマ」は、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州など55カ国以上、肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど50カ国以上、腎細胞がん(二次治療)に対する「エベロリムス」との併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど50カ国以上、さらに子宮内膜がんに対する「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法に係る適応で米国、オーストラリア、カナダの3カ国で承認を取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。

  

2. 甲状腺がんについて

 甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じるがんの一種です。男性より女性に多く発症します。最も多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾胞がん(ヒュルトレ細胞がんを含む)は、分化型甲状腺がんとして分類され、甲状腺がんのおよそ95%を占めます。その他、未分化がん(頻度:1~2%)、髄様がん(頻度:1~2%)などがあります。分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射性ヨウ素療法で治療できる一方、これらの治療に適さない少数の患者様もいます。

  

3. 特定使用成績調査(全例調査)結果について

 特定使用成績調査は、承認条件に基づき、「レンビマ」の使用実態下における安全性、有効性およびそれらに影響を与える要因を把握することを目的に、中央登録方式にて実施されました。症例登録は2015年5月から同年11月に投与を開始した全症例を対象とし、国内293施設から629例の症例が収集されました。

 安全性について、解析対象症例604例における主な副作用(発現症例率10%以上)は、「高血圧」76.0%、「蛋白尿」39.4%、「手掌・足底発赤知覚不全症候群」36.4%、「食欲減退」23.5%、「血小板数減少」22.4%、「倦怠感」19.2%、「下痢」17.1%、「血中甲状腺刺激ホルモン増加」14.9%、「口内炎」10.9%、「尿中血陽性」10.4%でした。また、主な重篤な副作用(発現症例率1.0%以上)は、「食欲減退」3.8%、「高血圧」2.3%、「下痢」1.8%、「血小板数減少」1.7%、「肺炎」および「瘻孔」各1.2%、「動脈出血」、「治癒不良」および「倦怠感」各1.0%でした。

 有効性について、解析対象症例のうち画像評価が実施された499例における病理組織型別の奏効率は、分化がんで59.2%、未分化がんで43.8%、髄様がんで45.0%でした。

 本調査で得られた安全性および有効性は、承認時までに得られていた情報と比較して大きく異なることはないと考えられました。

  

4. エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について

 2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. (米国とカナダ以外ではMSD)は、「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法における共同開発、共同販促を行います。

 併用療法については、既に実施している複数のがんを対象とした臨床試験に加え、6種のがんにおける11の適応取得を目的とした新たな臨床試験をLEAP臨床プログラム(LEnvatinib And Pembrolizumab)として実施します。また、LEAP臨床プログラムでは、さらに6種のがんを対象としたバスケット型試験も実施します。

  

 「キイトルーダ」はMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.の子会社であるMerck Sharp & Dohme Corpの登録商標です。