抗てんかん剤「フィコンパ®」部分てんかん併用療法に係る適応で中国当局より新薬承認を取得

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗てんかん剤「フィコンパ®」(一般名:ペランパネル、英語製品名「Fycompa®」)について、12歳以上の部分てんかん併用療法(二次性全般化発作を含む)の適応で、中国国家薬品監督管理局(National Medical Products Administration)より新薬承認を取得したことをお知らせします。本剤は、中国で既存の治療に比べ、治療上の顕著なメリットを有するとして優先審査品目に指定されており、2018年9月の申請から約12カ月で承認を取得しました。

 

 中国の推定てんかん患者様数は約900万人であり、そのうち約60%が部分てんかんに大別され、部分てんかん患者様の約40%に併用療法が必要とされています1。てんかん患者様の約30%では既存の抗てんかん剤による発作コントロールが十分にできておらず2、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 

 「フィコンパ」は、当社筑波研究所で創製されたファースト・イン・クラスの抗てんかん剤であり、1日1回投与の錠剤です。本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体を選択的かつ非競合的に阻害し、神経の過興奮を抑制します。

 「フィコンパ」は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法として、世界60カ国以上で承認を取得しています。また、12歳以上のてんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法として、世界55カ国以上で承認を取得しています。さらに米国では、4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤および併用療法での承認も取得しています。

 

 当社は、てんかんを含む神経領域を重点疾患領域と位置づけています。今回の「フィコンパ」の中国承認を機に、世界のより多くの患者様に発作フリー(seizure freedom)をお届けする使命を追求し、てんかんの患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

以上

   

<参考資料>

1. 「フィコンパ」(一般名:ペランパネル、海外製品名「Fycompa」)について

 「フィコンパ」は、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。「フィコンパ」は1日1回就寝前に経口投与するタイプの錠剤です。米国および欧州では、経口懸濁液の承認も取得し、販売しています。

 本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど60カ国以上で承認を取得しています。さらに本剤は、12歳以上の全般てんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど55カ国以上で承認を取得しています。米国においては4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤および併用療法の承認も取得しています。日本においては、てんかんの部分発作に対する単剤療法および4歳以上の小児てんかんの部分発作に係る適応、並びに細粒剤の剤形を追加申請しています。欧州においては、小児てんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)および小児の特発性全般てんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法に係る適応を追加申請しています。

 本剤について、レノックス・ガストー症候群に伴うてんかん発作を有する患者様を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(338試験)を実施しています。

   

2. 中国での承認の基となる臨床第Ⅲ相試験について

 「フィコンパ」の中国承認は、日本、中国、韓国などで実施した臨床第Ⅲ相試験(335試験3)の結果に加え、欧米で実施した3つの臨床第Ⅲ相試験(3044、3055および306試験6)の結果に基づきます。

 335試験は、主にアジア地域の患者様における「フィコンパ」の有効性と安全性を評価することを目的として実施されました。また、304試験と305試験は、投与量範囲の決定を主目的とし、「プラセボ、実薬8mg、同12mg」の3群で実施されました。306試験は、最小有効量を把握することを主目的として、「プラセボ、実薬 2mg、同4mg、同8mg」の4群で実施されました。

 いずれの試験も1~3種類の抗てんかん剤治療を受けている部分発作を有する12歳以上の患者様を対象とした多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験として実施されました。335試験の主要評価項目は「発作頻度変化率」であり、304、305、306試験の主要評価項目は欧州承認用の「50%レスポンダーレート(50% responder rate、部分発作回数が観察期間と比べて50%以上改善した症例の割合)」および米国承認用の「発作頻度変化率(percentage change in seizure frequency)」でした。各試験の結果は下記の通りです。

1)335試験

  • 「発作頻度変化率」:プラセボ投与群の-10.8%に対し、「フィコンパ」 4mg投与群で-17.3%(p=0.223)、8mg投与群で-29.0%(p=0.0003)、12mg投与群で-38.9%(p<0.00001)
  • 有害事象(上位3つ):浮動性めまい、傾眠、鼻咽頭炎

2)304試験

  • 50%レスポンダーレート:プラセボ投与群の26.4%に対し、「フィコンパ」 8mg投与群で37.6%(p=0.0760)、12mg投与群で36.1%(p=0.0914)
  • 発作頻度変化率:プラセボ投与群の-21.0%に対し、「フィコンパ」 8mg投与群で-26.3%(p=0.0261)、12mg投与群で-34.5%(p=0.0158)
  • 有害事象(上位6つ):浮動性めまい、傾眠、神経過敏、頭痛、転倒、運動失調

3)305試験

  • 50%レスポンダーレート:プラセボ投与群の14.7%に対し、「フィコンパ」 8mg投与群で33.3%(p=0.0018)、12mg投与群で33.9%(p=0.0006)
  • 発作頻度変化率:プラセボ投与群の-9.7%に対し、「フィコンパ」 8mg投与群で-30.5%(p=0.0008)、12mg投与群で-17.6%(p=0.0105)
  • 有害事象(上位4つ):浮動性めまい、疲労、頭痛、傾眠

4)306試験

  • 50%レスポンダーレート:プラセボ投与群の17.9%に対し、「フィコンパ」 2mg投与群で20.6%(p=0.4863)、4mg投与群で28.5%(p=0.0132)、8 mg投与群で34.9%(p=0.0003)
  • 発作頻度変化率:プラセボ投与群の-10.7%に対し、「フィコンパ」 2mg投与群で-13.6%(p=0.4197)、4mg投与群で-23.3%(p=0.0026)、8 mg投与群で-30.8%(p<0.0001)
  • 有害事象(上位3つ):浮動性めまい、頭痛、傾眠

 3. てんかんについて

 てんかんの患者様数は、中国で約900万人、欧州で約600万人、米国で約340万人、日本で約100万人、世界中で約6,000万人などの報告があります。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず2、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約60%を占める部分てんかんと、約40%を占める全般てんかんに大別されます。部分てんかんの発作では、脳の電気信号の異常が一部分に限定されています。部分発作の中には、異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になるものもあります(二次性全般化発作)。全般てんかんの発作では、電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から意識がなくなったり、全身に症状が現れたりします。

 

1 Clinical Guideline 2015 in China.

2 “The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research. What are the epilepsies?” National Institute of Neurological Disorders and Stroke, accessed May 24, 2016, http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#230253109

3 Nishida T, et al. Adjunctive perampanel in partial-onsetseizures: Asia-Pacific, randomized phase III study. Acta Neurol Scand. 2018;137:392–399.

4 French JA, et al. Adjunctive perampanel for refractory partial-onset seizures: randomized phase Ⅲ study 304. Neurology 2012; 79, 589-596

5 French JA, et al. Evaluation of adjunctive perampanel in patients with refractory partial-onset seizures: results of randomized global phase Ⅲ study 305. Epilepsia 2013; 54, 117-125.

6 Krauss GL, et al. Randomized phase Ⅲ study 306: adjunctive perampanel for refractory partial-onset seizures. Neurology 2012; 78, 1408-1415.