独メルク社と共同でケニアの顧みられない熱帯病蔓延地域に衛生的な水を供給するタンクを提供

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、Merck(本社:ドイツ・ダルムシュタット、以下 独メルク社)と共同で、ケニアの顧みられない熱帯病(NTDs)の蔓延地域に、NTDs対策に必要な衛生的な水を供給するタンクを提供することをお知らせします。

 

 当社は、医薬品アクセス改善に向けた取り組みの一環として、NTDsの一つであるリンパ系フィラリア症(LF)の治療薬であるジエチルカルバマジン(DEC)錠を自社インド・バイザッグ工場で製造し、世界保健機関(WHO)の制圧プログラムを通じて、蔓延国に無償で提供しています。当社は、2019年8月現在までに、ケニアを含む28カ国1の蔓延国に約19億錠のDEC錠を提供しています。

 LFは重症化すると、リンパ系機能障害により、足などの体の一部が肥大化し、細菌に感染しやすくなるため、衛生的な水で患部を清潔に保つことが重要になります。

 

 一方、独メルク社は、NTDsの一つである住血吸虫症の治療薬であるプラジカンテルをケニアのほか、アフリカの45カ国の蔓延国に無償提供しています。住血吸虫症は、川や湖などの淡水に生息する住血吸虫の幼虫が人の皮膚から侵入することが感染原因のため、感染防止には衛生的な水の供給が必要です。

 

 当社と独メルク社は、ケニア保健省によって指定された、衛生的な水の確保が困難な状況にある蔓延地域に対して、NTDs対策に必要な水を供給するためのタンクを共同で提供することで、同地域におけるNTDs制圧を支援します。

 

 当社は、ヒューマンヘルスケア(hhc)理念のもと、開発途上国・新興国の人々の健康福祉の向上に貢献し、これらの国々の人々が健康を回復し、就労することによって、経済の発展や中間所得層の拡大に寄与することを、将来の市場形成に向けた長期的投資と位置づけています。当社は、パートナーシップを活用し、開発途上国・新興国で蔓延する感染症などに対する新薬の開発を加速するとともに、現地における疾患啓発、ならびに所得に応じた価格設定の導入など、医薬品アクセスの改善に向けた活動を通じて、世界の患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

 

以上

 

<参考資料>

リンパ系フィラリア症(LF)について

LFは、蚊を媒介として人に感染するNTDです。 LFは、リンパ系機能障害により、足などの体の一部が肥大化し、激しい痛みや恒久的な障害だけでなく、外観の損なわれることによる社会的偏見を引き起こします。その結果、患者様は精神的、社会的、経済的損失を被ることになります。開発途上国を中心とする世界52カ国で8億8千6百万人がLFのリスクにさらされていると推定されています。DEC錠を含む3種類のLF治療薬の集団投与(mass drug administration: MDA)を実施することにより、LFを制圧することが可能です。

 

エーザイのLF制圧を含む医薬品アクセス向上への取り組み

当社は、ヒューマンヘルスケア理念(hhc)に基づき、各国政府や国際機関、民間企業や非営利団体などとの協力のもと、世界における医薬品アクセス改善に向けて中長期的視点に立った取り組みを展開しています。

当社は、MDAに用いられる高品質なDEC錠の安定供給が世界的に困難であった状況に鑑み、2010年11月に、2020年までに合計22億のDEC錠をWHOに無償で提供することに合意しました。2012年には、NTDs10疾患の制圧に向けたグローバルヘルス分野における過去最大の官民パートナーシップである「ロンドン宣言」に唯一日本企業として参画しました。2017年4月に行われた「ロンドン宣言」5周年イベントで、当社は、DEC錠が必要とされる全てのLF蔓延国において制圧が達成されるまで、DEC錠を2020年以降も継続して提供することを発表しました。

当社は、2019年8月現在、28カ国1に約19億錠を提供しています。さらに、当社は、WHOがMDAを円滑に実施するため、蔓延地域での疾患啓発活動にも協力しています。エーザイグループの社員がLF蔓延国の制圧担当者やその他現地の関係者と協力して早期制圧実現に向けた支援活動を行っています。また、蔓延国でLFおよびその予防・治療について現地語でのリーフレットの配布やMDA実施の支援も行っています。

当社は、LF制圧に向けた取り組みのほか、新薬開発においてもDrugs for Neglected Diseases initiative (DNDi )やMedicines for Malaria Venture(MMV)などの国際的な非営利団体、あるいはLiverpool School of Tropical Medicine、ケンタッキー大学やブロード研究所などの研究施設とのパートナーシップにより、シャーガス病やマイセトーマ、LFなどのNTDsやマラリアなどの感染症に対する新薬開発を進めています。

さらに、日本発の新薬創出によるグローバルヘルスへの貢献をめざす公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund、GHIT Fund)、世界知的所有権機関(WIPO)が主催するNTDs、マラリアや結核の治療薬開発のための国際共同事業「WIPOリサーチ(Re:Search)コンソーシアム」、結核に対する革新的な創薬をめざす「Tuberculosis Drug Accelerator」(TBDA)パートナーシップや非感染性疾患の予防と治療を推進するイニシアチブ「Access Accelerated(アクセス・アクセレレイテッド)」に参画しています。

当社の医薬品アクセスへの取り組みの詳細は、当社サイト「医薬品アクセス」をご覧ください。
https://www.eisai.co.jp/sustainability/atm/index.html

 

住血吸虫症について

住血吸虫症は慢性的疾患であり、熱帯諸国における最も一般的でかつ悲惨な寄生虫病の一つです。世界中で2億人以上が感染しており、毎年約28万人が亡くなっていると推定されています。住血吸虫を病原体として感染する病気で、人口の大部分がきれいな水と衛生的な設備にアクセスできない熱帯および亜熱帯地域に蔓延しています。人が、仕事をしたり、泳いだり、釣りをしたり、洗濯をしたりするために淡水に入った時に、住血吸虫の幼虫が皮膚から人体に侵入し、感染します。人体に侵入した幼虫は血管に入り、内臓を攻撃しますが、特に学齢期の子供の罹患率が高い疾患です。プラジカンテルは、住血吸虫症のすべての種類を治療できる唯一の有効成分です。WHOは、住血吸虫症の患者様にとって最も費用対効果の高い薬としてプラジカンテルを選んでいます。

 

独メルクの住血吸虫症制圧への取り組み

独メルクは、2007年にWHOと協力して住血吸虫症制圧プログラムを開始しました。それ以降、3億6千万人の学童の治療に相当する9億錠以上を寄付しました。独メルクは、住血吸虫症が制圧されるまで、熱帯病の制圧に取り組むことにコミットしています。そのため、毎年最大2億5千万錠(約2千8百万米ドル相当)をWHOに寄付しています。また、住血吸虫症の原因とその予防について子供たちを教育するために、アフリカの学校で啓発プログラムを支援しています。さらに、プラジカンテルの既存の剤形は6歳未満の子供には投与できないため、官民パートナーシップの一環として、6歳未満の子供にも投与できる新しい剤形を研究しています。独メルク社は、2014年末にビル&メリンダ・ゲイツ財団、米国国際開発庁(USAID)、Schistosomiasis Control Initiative、ワールド・ビジョン・インターナショナルなどのパートナーとともに、Global Schistosomiasis Allianceを設立しました。

 

 

1 アメリカンサモア、インド、インドネシア、エジプト、エリトリア、ガイアナ、キリバス、ケニア、コモロ、サモア、サントメ・プリンシペ、ザンビア、ジンバブエ、スリランカ、タイ、ツバル、ドミニカ共和国、ハイチ、パプアニューギニア、東ティモール、フィジー、フィリピン、フランス領ポリネシア、マダガスカル、マレーシア、ミクロネシア、ミャンマー、ラオス (五十音順)