アルツハイマー病協会国際会議2019(AAIC2019)においてエーザイのアルツハイマー病/認知症領域の開発品に関する最新データを発表

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、2019年7月14日から18日まで米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されるアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference: AAIC)2019において、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体BAN2401および経口βサイト切断酵素(BACE)阻害剤エレンベセスタットの最新データなど、口頭発表2演題を含む合計13演題を発表しますのでお知らせします。当社は、BAN2401、エレンベセスタットについて、バイオジェン・インク (本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、以下 バイオジェン)と共同で開発しています。

 

 BAN2401については、臨床第Ⅱ相試験における脳脊髄液(CSF)中のバイオマーカーの解析結果のほか、BAN2401ライセンス元であるBioArctic AB(本社:スウェーデン)によるBAN2401のAβ凝集体種への親和性に関する非臨床研究の結果などの演題が予定されています。現在、BAN2401については、早期アルツハイマー病(AD)を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)が進行中です。

 エレンベセスタットについては、進行中の臨床第Ⅲ相試験プログラム(MISSION AD)のベースライン時における被験者のタウ蓄積状況などの演題が予定されています。

 

 また、血液による簡便なAD診断法の創出に向けてシスメックス社(本社:兵庫県)と共同で実施している全自動免疫測定装置HISCL™シリーズ(シスメックス株式会社の商標)による血漿中Aβ比とCSF中Aβ比の相関性に関する研究の最新データについて、初めての学会発表が予定されています。

 

 さらに、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究の成果として最初の臨床候補品となる抗タウ抗体E2814について、非臨床研究結果の発表を予定しています。

 また、デュアルオレキシン拮抗剤レンボレキサントについて、アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験の追加解析結果について発表を予定しています。

 

 最新データの発表に加えて、AAIC主催のADにおけるアミロイドを標的とした疾患修飾戦略の最新動向に関するセッションおよびBACE阻害剤の臨床試験における課題とその可能性を議論するセッションについても、BAN2401およびエレンベセスタットに関する発表や議論が行われる予定です。また、プレクリニカル(無症状期)ADにおける薬物開発の科学的裏付けおよび可能性について議論する当社主催のシンポジウムについても開催を予定しています。

 

 当社は、アルツハイマー病/認知症領域分野における35年以上の創薬活動の経験を基盤に、多元的かつ包括的なアプローチによる創薬研究を通じて、認知症の予防と治癒の実現をめざしています。認知症の疾患・ステージに応じてWider Scopeに展開する豊富な開発パイプラインを有しており、革新的な治療薬を一日も早く創出し、アンメット・メディカル・ニーズの充足と患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

   

■ AAIC2019における発表演題

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開発品・演題番号発表演題・予定日時(現地時間)

BAN2401

口頭発表番号:DT-01-01

BAN2401の早期アルツハイマー病(AD)を対象とした無作為化臨床第Ⅱ相試験における神経変性バイオマーカー解析

口頭発表:7月17日(水)14:00-14:15

BAN2401

(BioArcticの発表)

ポスター番号:P4-704

BAN2041は可溶性Aβ凝集体種に結合する

 ポスター発表:7月17日(水)13:00-14:00

BAN2401

 ポスター番号:P4-657

早期AD患者様を対象としたBAN2401の母集団薬物動態/薬力学解析:BAN2401暴露とPET SUVR(Standard Uptake Value Ratio)および認知機能との相関

ポスター発表:7月17日(水)13:00-14:00

エレンベセスタット

 口頭発表番号:O4-12-05

エレンベセスタットのMISSION ADプログラムでのアミロイド陽性のMCIまたは軽度AD認知症患者様における[18F]PI-2620を用いたPETによるタウ沈着の評価

口頭発表:7月17日(水)17:15-17:30

(7月13日(土)のAAICによるプレカンファレンスにおいても発表予定)

エレンベセスタット

 ポスター番号:P1-041

エレンベセスタットのMISSION ADプログラムにおけるAPOE4ステータスとアミロイド蓄積の地域間差について

ポスター発表:7月14日(日)9:30-10:30

エレンベセスタット 

ポスター番号:P1-047

早期アルツハイマー病を対象とするエレンベセスタットのMISSION ADプログラムにおけるスクリーニング集団の認知機能の地域間差

ポスター発表:7月14日(日)9:30-10:30

エレンベセスタット

 ポスター番号:P2-064

BACE阻害剤候補物質の評価のための脳内シナプス機能およびAβレベルの新規マウスモデル

ポスター発表:7月15日(月)9:30-10:30

エレンベセスタット

ポスター番号:P3-459

MISSION ADプログラムにおけるインターナショナルショッピングリストテストの各言語バージョンの同等性について

ポスター発表:7月16日(火)13:00-14:00

General AD

 ポスター番号:P4-548

新規に開発された自動化タンパク質アッセイシステムによって測定された脳脊髄液と血漿中アミロイドβレベルの相関

ポスター発表:7月17日(水)13:00-14:00

General AD

ポスター番号:P2-577

アルツハイマー病に対する理論的な疾患修飾治療の有効性を推定するモデルにおける入力パラメータ値のばらつき

ポスター発表:7月15日(月)13:00-14:00

E2814

ポスター番号:P4-695

アルツハイマー病に対する新規抗タウ抗体 E2814

ポスター発表:7月17日(水)13:00-14:00

E2814

 ポスター番号:P4-696

脳脊髄液中のタウ微小管結合領域の定量化と新規抗タウ治療抗体E2814の標的結合アッセイの検証

ポスター発表:7月17日(水)13:00-14:00

レンボレキサント

 ポスター番号:P2-617

アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害の患者様におけるレンボレキサントの治療反応

ポスター発表:7月15日(月)13:00-14:00

■ AAIC主催セッションおよび当社主催シンポジウム

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セッション・シンポジウムセッション/シンポジウム名・予定日時(現地時間)

AAIC’s Focused Topic Session

セッション番号:FTS5-01

アルツハイマー病に対する疾患修飾戦略の最新動向:抗アミロイド戦略に焦点をあてて

(BAN2401に関連)

7月18日(木)8:30-10:00

AAIC’s Focused Topic Session

セッション番号: FTS3-01

BACE阻害剤による臨床試験における課題とその可能性

(エレンベセスタットについて発表予定)

7月16日(火)16:15-17:45

エーザイ シンポジウム

プレクリニカル(無症状期)ADに対する標的治療

(BAN2401およびエレンベセスタットに関連)

7月16日(火)12:00-13:45

以上

   

   

<参考資料>

1. エーザイの認知症領域における創薬について

 当社は、1983年に筑波研究所で認知症の研究を始めて以来、35年以上にわたる認知症領域での創薬活動により蓄積された知識やノウハウを有しており、多元的かつ包括的なアプローチによる創薬研究を通じて、認知症分野における予防と治癒の実現をめざしています。具体的には、①攻撃因子の重積過程、②経時的病状変容、③認知症免疫治療、④脳の維持システムの4つを基軸として展開しています。臨床試験進行中の開発パイプラインの一覧は以下の通りです。

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一般名・開発コード作用機序適応症開発ステージ
エレンべセスタット*BACE阻害剤早期アルツハイマー病フェーズⅢ
BAN2401*抗Aβプロトフィブリル抗体早期アルツハイマー病フェーズⅢ
レンボレキサントデュアルオレキシン受容体拮抗剤不眠障害(高齢者を含む)申請中(日本、米国)
アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)フェーズⅡ
E2027PDE9阻害剤レビー小体型認知症フェーズⅡ/Ⅲ
E2814抗タウ抗体アルツハイマー病/認知症フェーズⅠ準備中

        *Biogen Inc.との共同開発

当社2019年度第1四半期決算説明会資料(2019年7月31日発表)を改編

 

   

2. BAN2401について

 BAN2401は、BioArctic ABとエーザイの共同研究から創製された、アルツハイマー病(AD)に対するヒト化モノクローナル抗体です。ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有する可溶性のAβ凝集体(プロトフィブリル)に選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去するモノクローナル抗体です。本抗体による治療アプローチは、疾患病理への作用と症状の進行抑制が期待されています。エーザイは、本抗体について、2007年12月にBioArctic ABとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を獲得しています。現在、早期ADを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)が進行中です。

   

3. エレンベセスタット(一般名、開発コード:E2609)について

 エレンベセスタットは、次世代経口アルツハイマー病(AD)治療剤として開発しているエーザイ創製のBACE(βサイト切断酵素)阻害剤です。エレンベセスタットはAβ産生に関する重要な酵素であるBACEを阻害することにより、Aβの産生を低下させ、脳内のアミロイドプラーク形成を減少させることにより、ADの進行を抑制する疾患修飾作用が期待されています。現在、早期ADを対象とした2つのグローバル臨床第Ⅲ相試験(MISSION AD1/2)が進行中です。本剤の米国での開発については、重篤な疾患に対する新たな治療法や重要なアンメット・メディカル・ニーズを満たす可能性のある薬剤として、米国食品医薬品局(FDA)が迅速に審査するファストトラック指定を受けています。

   

4. エーザイとバイオジェンによるアルツハイマー病領域の提携内容について

 エーザイとバイオジェンは、アルツハイマー病治療剤の共同開発・共同販売にする提携を行っています。抗Aβプロトフィブリル抗体BAN2401とBACE阻害剤エレンベセスタットについてはエーザイ主導のもとで、グローバルでの承認取得に向けた開発を進め、承認取得後は米国、欧州(EU)、日本といった主要市場で共同販促を行います。BAN2401とエレンベセスタットについて、両社は研究開発費等の費用を折半し、共同販促に基づく売上高はエーザイに計上され、利益は両社で等しく分配します。

 

5. エーザイとシスメックスとのコラボレーションについて

 エーザイとシスメックス株式会社は2016年2月に、認知症領域に関する新たな診断薬創出に向けた非独占的包括契約を締結しています。両社は、互いの技術・ナレッジを活用し、認知症の早期診断や治療法の選択、治療効果の定期的確認が可能な次世代診断薬の創出を目指します。

 

6. E2814について

 E2814は抗タウ・モノクローナル抗体です。E2814は、アルツハイマー病を含むタウオパチーに対する疾患修飾薬として開発され、臨床第Ⅰ相試験の準備中です。本臨床候補品は、エーザイとユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究を通じて見出されました。E2814は、タウ伝播種の脳内拡散を抑制する抗体として設計されています。

 

7. レンボレキサントについて

 レンボレキサントは、エーザイ創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。正常な睡眠覚醒リズムにおいて、オレキシンの神経伝達によって覚醒が促進されると考えられていますが、不眠障害では、覚醒を制御するオレキシンの神経伝達が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により睡眠導入や睡眠維持をはかることができる可能性があると考えられており、不眠障害をはじめとする睡眠覚醒治療薬としての開発を進めています。米国および日本において、不眠障害に係る適応でそれぞれ申請中です。また、軽度、中等度アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験が進行中です。