レンボレキサントの臨床第III相試験の統合解析を含む最新データを第33回米国睡眠学会年次総会において発表

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)は、2019年6月8日から12日まで米国テキサス州サンアントニオで開催される第33回米国睡眠学会(SLEEP 2019)年次総会において、睡眠と覚醒を調整する睡眠覚醒障害治療剤として不眠障害およびアルツハイマー病/認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象に開発中のレンボレキサントに関して、最新データを発表することをお知らせします。

 本発表では、レンボレキサントの日常機能、疾患重症度に及ぼす影響や入眠および睡眠維持について、不眠障害を対象とする2つのピボタル臨床第III相試験であるSUNRISE 1(304試験)とSUNRISE 2(303試験)を統合した1,955人の患者様集団における統合解析のほか、高齢者や軽度閉塞性睡眠時無呼吸症患者様におけるレンボレキサント投与後の呼吸機能の安全性評価、およびISWRDに対する最新の前臨床データ等について8演題のポスター発表を行います。

 レンボレキサントは、オレキシン神経伝達に作用する薬剤であり、外部刺激による目覚めには影響せず、覚醒を制御することで睡眠と覚醒を調整すると考えられており、不眠障害をはじめとする睡眠覚醒障害治療薬としての開発を行っています。不眠障害に係る適応では、2018年12月に米国において、2019年3月に日本において、それぞれ新薬承認申請を行っています。進行中の臨床試験については、clinicaltrials.govをご覧ください。

 当社は、レンボレキサントの開発を通じ、睡眠障害の患者様が、より寝つきよく、ぐっすりと眠り、翌朝にすっきりと目覚められる薬剤をお届けすることを目指すとともに、新たなアンメット・メディカル・ニーズの充足と患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

■ レンボレキサントに関する演題

 (ポスターセッション:P-18、発表日時:6月10日(月) 5:15pm-7:15pm(現地時間))

※左右にスクロールできます

発表演題
ポスター番号:102
抄録番号:0367
レンボレキサントによる不眠障害の治療:6カ月の安全性
ポスター番号:105
抄録番号:0368
不眠障害の成人男女におけるレンボレキサントの有効性と忍容性
ポスター番号:106
抄録番号:0369
高齢の不眠障害患者様の睡眠構築に及ぼすレンボレキサントの影響
ポスター番号:107
抄録番号:0370

患者様報告による入眠および睡眠の維持:
レンボレキサントの2つの臨床第III相試験の統合解析

ポスター番号:108
抄録番号:0371
レンボレキサントの不眠障害を対象とする臨床第III相試験:
疾患重症度への影響
ポスター番号:103
抄録番号:0429
高齢者を含む成人の軽度閉塞性睡眠時無呼吸症患者様におけるレンボレキサントの呼吸機能の安全性
ポスター番号:104
抄録番号:0430
高齢者を含む健康成人におけるレンボレキサントの呼吸機能の安全性
ポスター番号:022
抄録番号:0056
不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)の前臨床モデルであるSAMP8マウスを用いたデュアルオレキシン(ヒポクレチン)受容体拮抗薬レンボレキサントの有効性評価

 また、当社は本学会において、ポスター発表に加え、不眠障害の診断と治療方針決定に関する対話形式のシンポジウムを主催します(開催日時:6月9日(日) 6:15pm-8:30pm (現地時間))。

 

以上

<参考資料>

1. レンボレキサントについて

 レンボレキサントは、エーザイ創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。正常な睡眠覚醒リズムにおいて、オレキシンの神経伝達によって覚醒が促進されると考えられていますが、不眠障害では、覚醒を制御するオレキシンの神経伝達が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により睡眠導入や睡眠維持をはかることができる可能性があると考えられており、不眠障害をはじめとする睡眠覚醒治療薬としての開発を進めています。また、軽度、中等度アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験が進行中です。

 

2. 睡眠障害について

 複数の人口調査によると、全世界において、以前考えられていたより多くの睡眠障害の患者様が報告されています1。不眠障害はもっとも一般的な睡眠障害であり、全世界で成人の約30%の方が不眠障害の症状を有しています1、2。不眠障害は、睡眠をとる十分な機会があるにもかかわらず、入眠困難、睡眠維持またはその両方に苦しむことが特徴であり、疲労、集中困難、易刺激性を引き起こす可能性があります3、4

 よく眠ることは、脳を含めた健康にとても重要です。睡眠不足は、高血圧、事故によるけが、糖尿病、肥満、うつ病、心臓発作、脳卒中、認知症のリスクを増やすことに加え、気分や行動に対する悪影響など、幅広い健康への影響との関連性が示唆されています3、5

 動物および人での試験結果によると、睡眠は病気のリスク因子、多くの病気、死亡率との関連性が示されており6、最適な睡眠時間は7-8時間と言われています7

 不眠障害について、女性は男性に比べて約1.4倍罹患率が高いとの報告もあります8。高齢者も、不眠障害の罹患率が高いことが知られています。老化による、睡眠の乱れ、頻繁な起床、早朝の起床などによる睡眠パターンの変化により、不眠障害に至ることがあります9

       

 

    • 1

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    • 3

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