Alzheimer's Clinical Trials Consortiumが実施予定のアルツハイマー病発症予防に関する臨床試験において、elenbecestatおよびBAN2401を選択

Alzheimer's Clinical Trials Consortium

エーザイ株式会社

   

 Alzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とエーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)は、このたび、早期アルツハイマー病(AD)を対象として開発中の経口βサイト切断酵素(BACE)阻害剤elenbecestat(開発コード:E2609)および抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体BAN2401が、ACTCによって実施予定のADのプライマリー プリベンション(A3試験)およびセカンダリー プリベンション(A45試験)をめざす臨床試験の評価対象薬剤として選択されたことをお知らせします。本試験は米国国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)傘下の米国国立老化研究所(NIA: National Institute on Aging)およびエーザイ等のファンディングにより実施されます。

 

 ACTCは、無症状期からより高度な段階のADをはじめとする認知症に対する治療薬の創出にむけた臨床試験の加速・拡大をめざし、NIAの資金拠出を受けて2017年12月に発足した、米国における主要な35の臨床試験施設からなる臨床試験ネットワークです。A3およびA45試験は、南カリフォルニア大学のDr. Paul Aisenおよびハーバード大学医学大学院Brigham and Women’s HospitalのDr. Reisa Sperling とDr. Keith Johnsonの3名の治験責任医師によって主導されます。

 

 Brigham and Women’s HospitalのCenter for Alzheimer Research and TreatmentのディレクターであるDr. Reisa Sperlingは、「A3およびA45試験は、疾患プロセスのより早期段階に治療を開始することが将来の認知機能低下を防止するのに有利であることの期待のもと、抗アミロイド療法による治療介入の最適な時期について極めて重要な解を得られる試験となります」と述べています。

 ACTCのcoordinating centerである南カリフォルニア大学Alzheimer’s Therapeutic Research InstituteのDr. Paul Aisenは、「ACTCの使命の一つは、有望な候補物質を官民パートナーシップによって開発することです。アルツハイマー病分野の進歩に資する革新的な試験において、今回のエーザイとのコラボレーションにより、2つの有望な治療薬の評価が可能になります」と述べています。

 

 A3試験は、脳内アミロイドの蓄積を防止し、アルツハイマー病のプライマリープリベンションにより近づくことを目的としています。アミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積が陽性レベルに至っていないが、さらなる蓄積のリスクが高い認知機能の正常な被験者を対象としています。BACE阻害剤としてelenbecestatを用い、同剤2用量による初期段階の脳内アミロイド蓄積の遅延効果をプラセボと比較する多施設共同、二重盲検、グローバル臨床試験です。A3試験では同じく、タウPETによるタウ凝集病理および探索的認知機能についても評価する予定です。

 

 A45試験は、プレクリニカル(無症状期)ADを対象とした試験です。脳内アミロイド蓄積が陽性レベルかつ軽度認知障害およびADへの進行リスクが高く、臨床的に正常な(認知機能障害がまったくない、もしくはほとんどない)方を対象としています。Aβ抗体およびBACE阻害剤からなる治療レジメンによる認知機能悪化の防止と脳病理進行に関わるバイオマーカー変化の遅延効果をプラセボと比較する多施設共同、二重盲検、グローバル臨床試験です。実薬群においては、最初にBAN2401によって脳内のアミロイド蓄積およびAβプロトフィブリルを除去し、次に、このアミロイド陰性状態を維持するために、elenbecestatによってAβ産出の減少とアミロイドプラークおよびプロトフィブリルの再蓄積の防止をめざします。

 

 エーザイ ニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサー兼チーフメディカルオフィサーである Lynn Kramer, M.D.は、「私たちは、より早期のAD治療に焦点を当てた試験においてACTCグループと提携できることを大変嬉しく思います。本提携によって、BAN2401およびelenbecestatが、より広範囲のAD患者様にベネフィットを提供することができると期待しています」と述べています。

 

 Elenbecestatは、次世代経口AD治療剤として開発中のエーザイ創製のBACE阻害剤です。ElenbecestatはAβ産生に関する重要な酵素であるBACEを阻害することにより、Aβの産生を低下させ、脳内のアミロイド凝集体を減少させることにより、ADの進行を抑制する疾患修飾作用が期待されています。現在、早期ADを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(MISSION AD)が進行中です。

 

 BAN2401は、バイオアークティック(本社:スウェーデン)とエーザイの共同研究から得られた、ADに対するヒト化モノクローナル抗体です。ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有する可溶性のAβ凝集体(プロトフィブリル)に選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。現在、早期ADを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)が進行中です。

 

 エーザイはバイオジェン・インク (Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)とelenbecestatおよびBAN2401の共同開発・共同販売に関して提携を行っています。

 

 本試験は2020年初めに開始予定です。本試験の詳細はwww.A3A45.org(英語のみ)を参照ください。

 

以上

 

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • Brigham and Women’s Hospital

    Public Relations 

    Lori Schroth

    Office: 617-525-6374

    Mobile: 617-459-2111
    lschroth@bwh.harvard.edu

  • University of Southern California

    Public Relations 

    Leigh Hopper

    USC Central Communications

    Media Relations Specialist

    +1-310-308-0405

    http://pressroom.usc.edu/

  • エーザイ株式会社

    PR部

     

    03-3817-5120

<参考資料> 

1. Alzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)について

 ACTCは、米国国立衛生研究所傘下の国立老化研究所の資金提供を受け、アルツハイマー病および関連する認知症における学術的臨床試験のための基盤を提供します。南カリフォルニア大学、ハーバード大学およびメイヨークリニックを拠点とする本コンソーシアムには、臨床試験デザイン、生物統計学、インフォマティクス、安全性、規制監視、被験者募集、クリニカルオペレーション、データマネジメント、サイトモニタリング、バイオマーカー研究所、保管、神経画像検査を支援するエキスパートユニットが含まれます。ACTCには米国全土に35の主要臨床施設があります。

 

2. エーザイ株式会社について  

 エーザイ株式会社は、本社を日本に置く研究開発型グローバル製薬企業です。患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 エーザイは、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症治療剤「アリセプト®」の開発・販売から得た経験を活かし、医療従事者や介護関係者、行政などの協力を得て認知症と共生する「まちづくり」に取り組み、世界で推計1万回以上の疾患啓発イベントを開催してきました。認知症領域のパイオニアとして、次世代治療剤の開発にとどまらず、診断方法の開発やソリューションの提供にも取り組んでいます。エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jpをご覧ください。