米国FDAが不眠障害治療薬「レンボレキサント」の新薬承認申請を受理

エーザイ株式会社
Imbrium Therapeutics L.P.

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とPurdue Pharma L.P. (本社:米国コネチカット州、President and CEO:Craig Landau)の子会社で臨床ステージのバイオ医薬品事業を担うImbrium Therapeutics L.P.(Imbrium Therapeutics)は、このたび、睡眠覚醒障害のひとつである不眠障害の適応で開発中のレンボレキサントについて、米国食品医薬品局(FDA)により新薬承認申請が受理されたことをお知らせします。PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクション・デート(審査終了目標日)は、2019年12月27日に定められました。

今回の申請は、不眠障害を対象とした2つのピボタル臨床第Ⅲ相試験であるSUNRISE 1試験(304試験)およびSUNRISE 2試験(303試験)に基づくものです。
  • SUNRISE 1試験1: 55歳以上の不眠障害患者様1,006人(全症例の約45%は65歳以上)を対象に、プラセボおよび実薬であるゾルピデム酒石酸徐放性製剤との比較により、レンボレキサントの有効性および安全性を評価した1カ月間の臨床第Ⅲ相試験です。本試験では、睡眠潜時(就床から入眠までに要した時間、主要評価項目)、睡眠効率および中途覚醒時間(睡眠維持効果、主な副次評価項目)について、睡眠ポリグラフ検査法を用いて客観的に評価し、レンボレキサントは主要評価項目ならびに副次評価項目を達成しました。レンボレキサント群に共通して観察された主な有害事象は、頭痛と傾眠でした。
  • SUNRISE 2試験2: 18歳から88歳の不眠障害患者様949人を対象に、長期の有効性および安全性評価を目的とした12カ月間の臨床第Ⅲ相試験です。本試験では、最初の6カ月をプラセボ対照投与期間とし、睡眠潜時(主要評価項目)、睡眠効率および中途覚醒時間(主な副次評価項目)について、電子睡眠日誌を用いて主観的に評価し、レンボレキサントは有効性に関する主要評価項目および主な副次評価項目を達成しました。レンボレキサント群に共通して観察された主な有害事象は、傾眠、頭痛、インフルエンザでした。

エーザイ ニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサー兼チーフメディカルオフィサーである Lynn Kramer, M.D.は、「私たちが睡眠覚醒障害治療薬の開発に取り組む上での最終目標は、患者様に、より寝つき良く、ぐっすりと眠り、翌朝にすっきりと目覚めることができる可能性のある新しい選択薬をお届けすることです。レンボレキサントの今回のマイルストンは、不眠障害を抱える数百万人の患者様のアンメットニーズの充足に向けた一歩となります」と述べています。

Imbrium Therapeuticsの Vice President兼Head of Research & Development and Regulatory Affairs であるJohn Renger, Ph.Dは、「睡眠の質と量に障害をきたす不眠障害は、日常の機能を著しく低下させ、人々の健康と福祉に長期にわたって影響を及ぼします3。私たちは承認取得に向けて、パートナーであるエーザイと共にこの開発中の薬剤を患者様にお届けできるよう取り組んでいきます」と述べています。

レンボレキサントについて、エーザイとImbrium Therapeuticsは不眠障害をはじめとする睡眠覚醒障害治療薬としての開発を共同で行っています。両社は、レンボレキサントを通じて、新たなアンメット・メディカル・ニーズの充足と患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

以上

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

  • Imbrium Therapeutics L.P.

    media@imbriumthera.com

<参考資料>

1. レンボレキサントについて

 レンボレキサントは、エーザイ創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。正常な睡眠覚醒リズムにおいて、オレキシンの神経伝達によって覚醒が促進されると考えられていますが、不眠障害では、覚醒を制御するオレキシンの神経伝達が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により睡眠導入や睡眠維持をはかることができる可能性があると考えられています。加えて、軽度、中等度アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験が進行中です。

 

2. SUNRISE 1試験(304試験)について1

 SUNRISE 1試験は、北米と欧州において、55歳以上の不眠障害患者様1,006人(全症例の約45%は65歳以上)を対象とした、レンボレキサントの有効性および安全性を評価する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、実薬比較、並行群間比較臨床第Ⅲ相試験です。SUNRISE 1試験は、2週間のプラセボ投与期間を含む最長35日間の観察期および30日間の投与期間と最低2週間のフォローアップ期からなる治療期から構成されます。本試験では、レンボレキサント 5mg、10mg、ゾルピデム酒石酸徐放性製剤(以下、ゾルピデム徐放性製剤)6.25mg、またはプラセボが投与されました。

 主要評価項目として、1カ月投与の最後の2日間における睡眠潜時を、睡眠ポリグラフ検査法を用いてレンボレキサント両群のプラセボ群に対するベースラインからの変化量について評価しました。主な副次評価項目としては、プラセボ群との比較におけるレンボレキサント両群の平均睡眠効率と中途覚醒時間について、またゾルピデム徐放製剤群との比較におけるレンボレキサント両群の1カ月投与の最後の2日間における睡眠時間後半部分の中途覚醒時間を、睡眠ポリグラフ検査法を用いて客観的に評価しました。

   

3. SUNRISE 2試験(303試験)について2

 SUNRISE 2試験は、グローバルで実施された、18歳から88歳の不眠障害患者様949人を対象とした、レンボレキサントの有効性および安全性を評価する、多施設共同、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、12カ月間の臨床第Ⅲ相試験です。SUNRISE 2試験は、2週間のプラセボ投与期間を含む最長35日間の観察期、および6カ月のプラセボ対照投与期間と6カ月の実薬のみの投与期間と2週間のフォローアップ期間からなる治療期から構成されます。本試験では、患者様の自宅において、毎晩の就寝直前にレンボレキサント 5mg、10mgまたはプラセボの錠剤が投与されました。また、最初の6カ月間にプラセボが投与された患者様は、後半6カ月はレキボレキサント 5mgまたは10mgが投与されました。最初に実薬を投与された患者様は、後半6カ月においても継続して実薬が投与されました。

 主要評価項目として、プラセボ対照の6カ月投与後における睡眠潜時のベースラインからの変化量について、患者様の睡眠日誌を用いて主観的に評価しました。主な副次評価項目として、プラセボ対照の6カ月投与後における睡眠効率および中途覚醒時間のベースラインからの変化量について、患者様の睡眠日誌を用いて主観的に評価しました。

    

4. 不眠障害について

 複数の人口調査によると、全世界において、以前考えられていたより多くの睡眠障害の患者様が報告されています4。不眠障害はもっとも一般的な睡眠障害であり、全世界で成人の約30%の方が不眠障害の症状を有しています4,5。不眠障害は、睡眠をとる十分な機会があるにもかかわらず、入眠困難、睡眠維持またはその両方に苦しむことが特徴であり、疲労、集中困難、易刺激性を引き起こす可能性があります3,6

 よく眠ることは、脳を含めた健康にとても重要です。睡眠不足は、高血圧、事故によるけが、糖尿病、肥満、 うつ病、心臓発作、脳卒中、認知症のリスクを増やすことに加え、気分や行動に対する悪影響など、幅広い健康への影響との関連性が示唆されています3,7

 動物および人での試験結果によると、睡眠は病気のリスク因子、多くの病気、死亡率との関連性が示されており8、最適な睡眠時間は7-8時間と言われています9

 不眠障害について、女性は男性に比べて約1.4倍罹患率が高いとの報告もあります10。高齢者も、不眠障害の罹患率が高いことが知られています。老化による、睡眠の乱れ、頻繁な起床、早朝の起床などによる睡眠パターンの変化により、不眠障害に至ることがあります11

 

5. エーザイ株式会社について

 エーザイ株式会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で1万人以上の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。また、当社は開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善に向け主要なステークホルダーズとの連携を通じ積極的な活動を展開しています。エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

 

6. Imbrium Therapeutics L.P.について

 Imbrium Therapeutics L.P.は、Purdue Pharma L.Pの事業子会社として2019年に設立されたバイオ医薬品の臨床研究会社であり、重要かつ新しい薬理学的および生物学的治療薬の開発を通じて、医学の進歩への貢献をめざし、中枢神経系障害、腫瘍化学療法および疼痛管理のための非オピオイドによる治療法の追求に取り組んでいます。当社は、世界中の患者さん、医師およびヘルスケアシステムの満たされていないニーズを充足すべく、新たな医薬品の開発および市場投入を目指しています。当社は、堅牢で多様な治験薬候補のパイプラインを構築してきました。また、業界および学術界のパートナーと積極的に協力して、将来の影響力のある医薬品候補品を見出し、開発しています。詳細については、www.imbriumthera.comをご覧ください。

         

 

    • 1

      Eisai Inc. A multicenter, randomized, double-blind, placebo-conrolled, active comparator, parallel-group study of the efficacy and safety of lemborexant in subjects 55 years and older with insomnia disorder. (E2006-G000-304). (Clinicaltrials.gov Identifier NCT02783729). 2018. Unpublished data on file. 

    • 2

      Eisai Inc. A long-term multicenter, randomized, double-blind, controlled, parallel-group study of the safety and efficacy of lemborexant in subjects with insomnia disorder (E2006-G000-303). (Clinicaltrials.gov Identifier NCT02952820). 2018. Unpublished data on file.

    • 3

      Institute of Medicine. Sleep disorders and sleep deprivation: An unmet public health problem. Washington, DC: National Academies Press. 2006.

    • 4

      Ferrie JE, et al. Sleep epidemiology – a rapidly growing field. Int J Epidemiol. 2011;40(6):1431–1437.

    • 5

      Roth T. Insomnia: definition, prevalence, etiology and consequences. J Clin Sleep Med. 2007;3(5 Suppl):S7–S10.

    • 6

      Ohayon MM, et al. Epidemiology of insomnia: what we know and what we still need to learn. Sleep Med Rev. 2002;6(2):97-111.

    • 7

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    • 8

      Cappuccio FP et al. Sleep and cardio-metabolic disease. Curr Cardiol Rep. 2017;19:110.

    • 9

      Cappuccio FP et al. Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Sleep. 2010;33(5):585-592.

    • 10

      Roth T, et al. Prevalence and perceived health associated with insomnia based on DSM-IV-TR; International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, tenth revision; and Research Diagnostic Criteria/International Classification of Sleep Disorders, second edition criteria: results from the America Insomnia Survey. Biol Psychiatry. 2011;69:592– 600.

    • 11

      Crowley, K. Sleep and sleep disorders in older adults. Neuropsychol Rev. 2011;21(1):41-53.