抗てんかん剤「Fycompa®」 欧州において小児てんかんに係る適応で承認申請を提出

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗てんかん剤「Fycompa®」(一般名:ペランパネル、日本製品名:「フィコンパ®」)について、欧州医薬品庁(EMA)に対して、小児てんかんに係る適応拡大の追加申請を行いましたのでお知らせします。

 本申請は、欧州において、すでに承認されている12歳以上のてんかん患者様への併用療法における部分発作(二次性全般化発作を含む)および特発性全般てんかん患者様の強直間代発作の適応の対象を、小児患者様まで拡大することをめざすものです。

 

 本申請は、グローバルで実施した小児てんかんを対象とした「Fycompa」併用療法の臨床第Ⅲ相試験(311試験)および臨床第Ⅱ相試験(232試験)の結果に基づいています。311試験では、コントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する小児てんかんの患者様(4歳以上12歳未満)を対象とし、他剤併用時における「Fycompa」の安全性、忍容性および血中濃度と有効性の関係を評価しました。232試験では、小児てんかんの患者様(2歳以上12歳未満)を対象とし、他剤併用時における薬物動態、有効性および長期安全性を評価しました。両試験の結果の詳細については、今後、学会等でそれぞれ発表する予定です。

 

 「Fycompa」は、当社筑波研究所で創製されたファースト・イン・クラスの抗てんかん剤であり、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を選択的かつ非競合的に阻害し、神経の過興奮を抑制する、1日1回投与の経口錠剤です。本剤は、世界55カ国以上で承認を取得しており、現在までに、世界で20万人を超える患者様に処方されました。小児てんかんに係る追加適応については、米国では2018年9月に承認を取得し、日本では2019年1月に申請しています。

 

 欧州におけるてんかん患者様数は、約600万人と推定されており、乳幼児期から高齢期まで、すべての年代で発病しますが、18歳以下と高齢期での発病が多いとされています。

 当社は、てんかんを含む神経領域を重点疾患領域と位置づけており、引き続き、より多くの患者様に発作フリー(seizure freedom)をお届けする使命を追求し、てんかんの患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

 

以上

 

<参考資料> 

1. 「Fycompa」(一般名:ペランパネル、日本製品名「フィコンパ」)について 

 「Fycompa」は、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。「Fycompa」は、1日1回就寝前に経口投与するタイプの錠剤です。米国では、経口懸濁液の承認も取得しています。

 本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど55カ国以上で承認を取得しています。また、中国において、部分てんかん併用療法に係る適応で申請中であり、優先審査の指定を受けています。さらに本剤は、12歳以上の全般てんかん患者様の強直間代発作に対する併用療法について、米国、日本、欧州、アジアなど50カ国以上で承認を取得しています。米国においては4歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤および併用療法の承認も取得しています。日本においては、てんかんの部分発作に対する単剤療法および4歳以上の小児てんかんの部分発作に係る適応、並びに細粒剤の剤形を追加申請しています。

 本剤について、レノックス・ガストー症候群に伴うてんかん発作を有する患者様を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験(338試験)を実施しています。

 

2. 311試験の概要 

試験名称 : コントロール不十分な部分発作又は強直間代発作を伴う小児てんかん患者を対象とした他剤併用時における「Fycompa」経口懸濁剤の安全性、忍容性および暴露量と有効性の関係を評価する非盲検試験
対象 : コントロール不十分な部分発作または強直間代発作を有する4歳以上12歳未満の小児てんかん患者様180人
投与法 : 「Fycompa」2~16mgまでを1日1回就寝前に経口投与
治療期間 : 治療漸増期最長11週間および治療維持期最長12週間および継続期
実施地域 : グローバル(米国、欧州、日本、アジア)
主要評価項目: 安全性および忍容性
結果の概要 :

180人の対象患者様に「Fycompa」が投与され、有効性が12歳以上の患者様の場合と同様に得られることが示されました。本試験で確認された有害事象(発生頻度10%以上)は、傾眠、上咽頭炎、発熱、嘔吐、浮動性めまい、インフルエンザ、易刺激性であり、これまでの「Fycompa」の安全性プロファイルと同様でした。

3. 232試験の概要

 232試験は、グローバル(米国、欧州)で実施された、小児てんかん患者様(2 歳以上12 歳未満)63人を対象とした、多施設共同、非盲検、継続投与試験です。他剤併用時における「Fycompa」経口懸濁剤の薬物動態、安全性、忍容性および有効性を評価しました。「Fycompa」を1日1回0.015mg/kgから最大0.18mg/kgまで経口にて漸増投与し、11週間の治療期終了後、継続期(41週間)にて長期の安全性を確認しました。232試験で認められた有害事象(頻度10%以上)は、発熱、疲労、嘔吐、易刺激性、傾眠、浮動性めまい、上気道感染症でした。

 

4. てんかんについて

 てんかんの患者様数は、米国で約340万人、日本で約100万人、欧州で約600万人、中国で約900万人、世界中で約6,000万人などの報告があります。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず1、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

 てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分てんかんと、約 4割を占める全般てんかんに大別されます。部分てんかんの発作では、脳の電気信号の異常が一部分に限定されています。部分発作の中には、異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になるものもあります(二次性全般化発作)。全般てんかんの発作では、電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から意識がなくなったり、全身に症状が現れたりします。

 

1 “The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research. What are the epilepsies?” National Institute of Neurological Disorders and Stroke, accessed May 24, 2016, http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#230253109