新たな不眠障害治療薬「レンボレキサント」米国において新薬承認申請を提出

エーザイ株式会社
Purdue Pharma L.P.

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とPurdue Pharma L.P.(本社:米国コネチカット州、President and CEO:Craig Landau, MD、以下 Purdue Pharma)は、このたび、睡眠と覚醒を調整する薬剤として開発を進めているレンボレキサントについて、不眠障害に係る適応で米国食品医薬品局(FDA)に、新薬承認申請を提出したことをお知らせします。

 今回の申請は、合計約2,000人の不眠障害患者様を対象に実施した2つのピボタル臨床第Ⅲ相試験であるSUNRISE 1試験(304試験)およびSUNRISE 2試験(303試験)、さらに夜間覚醒時の姿勢安定性(転倒リスクの予測因子)および翌朝の自動車運転能力について検討した主要な安全性試験に基づくものです。
 SUNRISE 1試験は、実薬であるゾルピデム酒石酸徐放性製剤との比較による1カ月間の二重盲検、プラセボ対照臨床第Ⅲ相試験であり、睡眠ポリグラフ検査法によるデータセットを用いて、就床から 入眠までの時間(睡眠潜時)、睡眠効率および睡眠時間後半部分の中途覚醒時間について客観評価しました。
 SUNRISE 2試験は、患者様の睡眠日誌を用いた12カ月間の試験であり、入眠や睡眠維持について主観評価しました。

 レンボレキサントは、オレキシン神経伝達に作用し、外部刺激による覚醒能力を減退することなく、睡眠と覚醒を調整すると考えられており、エーザイとPurdue Pharmaが不眠障害をはじめとする睡眠覚醒障害治療薬としての開発を共同で行っています。不眠障害に係る適応のほか、アルツハイマー病/認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)を対象とした臨床第Ⅱ相試験を実施しています。
 進行中の臨床試験については、clinicaltrials.govをご覧ください。

 両社は、新たなアンメット・メディカル・ニーズの充足と患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層貢献してまいります。

 以上

本件に関する報道関係お問い合わせ先

<参考資料>

1. レンボレキサント(開発コード:E2006)について

 レンボレキサント (開発コード:E2006)は、エーザイ創製の新規低分子化合物で、オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1および2受容体)に対し、オレキシンと競合的に結合する拮抗剤です。正常な睡眠覚醒リズムにおいて、オレキシンの神経伝達によって覚醒が促進されると考えられていますが、不眠障害では、覚醒を制御するオレキシンの神経伝達が正常に働いていない可能性があります。正常な睡眠時はオレキシン作動性神経が抑制されることから、オレキシンによる神経伝達の阻害により睡眠導入や睡眠維持をはかることができる可能性があると考えられています。

 

2. SUNRISE 1試験(304試験)について1

 SUNRISE 1試験は、北米と欧州において、55歳以上の不眠障害患者様1,006人(全症例の約45%は65歳以上)を対象とした、レンボレキサントの有効性および安全性を評価する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、実薬比較、並行群間比較臨床第Ⅲ相試験です。SUNRISE 1試験は、2週間のプラセボ投与期間を含む最長35日間の観察期および30日間の投与期間と最低2週間のフォローアップ期からなる治療期から構成されます。本試験では、レンボレキサント 5mg、10mg、ゾルピデム酒石酸徐放性製剤(以下、ゾルピデム徐放性製剤)6.25mg、またはプラセボが投与されました。

 主要評価項目として、1カ月投与の最後の2日間における睡眠潜時を、睡眠ポリグラフ検査法を用いてレンボレキサント両群のプラセボ群に対するベースラインからの変化量について評価しました。主な副次評価項目としては、プラセボ群との比較におけるレンボレキサント両群の平均睡眠効率と中途覚醒時間について、またゾルピデム徐放製剤群との比較におけるレンボレキサント両群の1カ月投与の最後の2日間における睡眠時間後半部分の中途覚醒時間を、睡眠ポリグラフ検査法を用いて客観的に評価しました。

   

3. SUNRISE 2試験(303試験)について2

 SUNRISE 2試験は、グローバルで実施された、18歳から88歳の不眠障害患者様949人の成人男女を対象とした、レンボレキサントの有効性および安全性を評価する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較、12カ月間の臨床第Ⅲ相試験です。SUNRISE 2試験は、2週間のプラセボ投与期間を含む最長35日間の観察期、および6カ月のプラセボ対照投与期間と6カ月の被験薬のみの投与期間さらに2週間のフォローアップ期からなる治療期から構成されます。本試験では、患者様の自宅において、毎晩の就寝直前にレンボレキサント 5mg、10mgまたはプラセボの錠剤が投与されました。また、最初の6カ月間にプラセボが投与された患者様は、後半6カ月はレキボレキサント 5mgまたは10mgが投与されました。最初に被験薬を投与された患者様は、後半6カ月においても継続して被験薬が投与されました。

 主要評価項目として、プラセボ対照の6カ月投与後における主観評価による睡眠潜時を、レンボレキサント両投与群のプラセボ群に対するベースラインからの変化量について評価しました。主な副次評価項目としては、6カ月投与後の主観評価による睡眠効率および中途覚醒時間について、レンボレキサント両群のプラセボ群に対するベースラインからの変化量について評価しました。

 

4. 不眠障害について

 ある人口調査によると、全世界において、以前考えられていたより多くの睡眠障害の患者様が報告されています3。不眠障害はもっとも一般的な睡眠障害であり、全世界で成人の約30%の方が不眠障害の症状を有しています3、4。不眠障害は、入眠困難、睡眠維持またはその両方に苦しむことが特徴です。睡眠をとる十分な機会があるにもかかわらず、疲労、集中困難、そして易刺激性を引き起こす可能性があります5、6

 良く眠ることは、脳を含めたからだの健康にとても重要です。睡眠不足は、高血圧、事故、糖尿病、うつ病、心臓発作、脳卒中、認知症のリスク増加に加え、気分や行動に対する悪影響など、幅広い範囲で健康への影響との関連性が示唆されています5、7

 動物および人での試験結果によると、睡眠と死亡率、多くの病気、病気のリスク因子の関連性が示されており8、最適な睡眠時間は7-8時間と言われています9

 不眠障害について、女性は男性に比べて約1.4倍罹患率が高いとの報告もあります10。高齢者に関しても、不眠障害の罹患率が高いことが知られています。老化による、睡眠の乱れ、頻繁な起床、早朝の起床などによる睡眠パターンの変化により、不眠障害に至ることがあります11

 

5. エーザイ株式会社について

 エーザイ株式会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 また、当社は開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善に向け主要なステークホルダーズとの連携を通じ積極的な活動を展開しています。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

 

6. Purdue Pharma L.P.について

 Purdue Pharma L.P.とその米国における関連会社は、コネチカット州スタンフォード市に本社を置く、株式非上場企業です。Purdue Pharmaは、患者様とプロバイダーに、革新的な医薬品を提供することを目的とするネットワーク関連企業の一翼を担っています。当社のリーダーシップおよび従業員は、医療や生活にプラスの影響を与える高品質な製品や教育リソースの提供を通じて、医療従事者、患者様および介護者の方々に貢献することをめざしています。Purdue Pharmaの詳細情報は、http://www.purduepharma.com/をご覧ください。

         

1 Eisai Inc. A multicenter, randomized, double-blind, placebo-conrolled, active comparator, parallel-group study of the efficacy and safety of lemborexant in subjects 55 years and older with insomnia disorder. (E2006-G000-304). (Clinicaltrials.gov Identifier NCT02783729). 2018. Unpublished data on file. 

2 Eisai Inc. A long-term multicenter, randomized, double-blind, controlled, parallel-group study of the safety and efficacy of lemborexant in subjects with insomnia disorder (E2006-G000-303). (Clinicaltrials.gov Identifier NCT02952820). 2018. Unpublished data on file. 

3 Ferrie JE, et al. Sleep epidemiology – a rapidly growing field. Int J Epidemiol. 2011;40(6):1431–1437.

4 Roth T. Insomnia: definition, prevalence, etiology and consequences. J Clin Sleep Med. 2007;3(5 Suppl):S7–S10.

5 Institute of Medicine. Sleep disorders and sleep deprivation: An unmet public health problem. Washington, DC: National Academies Press. 2006.

Ohayon MM, et al. Epidemiology of insomnia: what we know and what we still need to learn. Sleep Med Rev. 2002;6(2):97-111.

7 Pase MP, Himali JJ, Grima NA, et al. Sleep architecture and the risk of incident dementia in the community. Neurology. 2017;89(12):1244-1250.

8 Cappuccio FP et al. Sleep and cardio-metabolic disease. Curr Cardiol Rep. 2017;19:110.

9 Cappuccio FP et al. Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Sleep. 2010;33(5):585-592.

10 Roth T, et al. Prevalence and perceived health associated with insomnia based on DSM-IV-TR; International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, tenth revision; and Research Diagnostic Criteria/International Classification of Sleep Disorders, second edition criteria: results from the America Insomnia Survey. Biol Psychiatry. 2011;69:592– 600.

11 Crowley, K. Sleep and sleep disorders in older adults. Neuropsychol Rev. 2011;21(1):41-53.