抗フラクタルカイン抗体E6011のクローン病治療薬開発について産学官連携の契約を締結し、研究開発を開始

EAファーマ株式会社

エーザイ株式会社

   

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤 晴夫、以下 エーザイ)とエーザイの消化器事業子会社であるEAファーマ株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:松江 裕二、以下 EAファーマ)は、E6011のクローン病治療薬開発において、EAファーマと6つの共同研究機関との間で研究委受託契約を締結し、研究開発を本格的に開始しましたのでお知らせします。本研究開発プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下 AMED)における医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に採択されています1

 

 E6011は、エーザイの研究子会社である株式会社カン研究所が創製した新規の抗フラクタルカイン抗体です。フラクタルカイン(以下 FKN)は、炎症性腸疾患や関節リウマチをはじめとする炎症性疾患の血管内皮細胞に発現し、FKN受容体(CX3CR1)を発現する免疫細胞に結合することで炎症反応を惹起します。E6011は、CX3CR1を発現する免疫細胞の遊走・浸潤抑制による抗炎症作用が期待される新規メカニズムのバイオ医薬(抗体医薬)です。

 

 今回研究開発を開始したCiCLE採択課題「クローン病を対象とした産学連携による本邦発バイオ医薬品と新規薬効予測マーカーの開発」は、EAファーマが代表機関となります。本プロジェクトにおいては、EAファーマがE6011の臨床開発を主導し、研究委受託契約を締結した各研究機関(慶應義塾大学医学部、国立大学法人東京医科歯科大学、北里大学北里研究所病院、公立大学法人名古屋市立大学、国立大学法人鹿児島大学、および株式会社カン研究所)が新規薬効予測マーカーの開発に係る臨床研究を担当します。

 

 EAファーマが参画する産学官連携として、本プロジェクトの他、「組換えヒト肝細胞増殖因子を用いた急性肝不全治療薬」の実用化に対する取り組みがAMEDの研究成果最適展開支援プログラム(AMED・A-STEP)に、「良性小腸狭窄を治療するための内視鏡下で留置可能な自己拡張型生分解性小腸用ステントの開発・海外展開」に対する取り組みがAMEDの医工連携事業化推進事業(開発・事業化事業)に、それぞれ採択されています。さらに、筑波大学との「低分子化合物とバイオマーカーを用いた炎症性腸疾患の治療」に対する取り組みが、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の助成による産学共同実用化開発事業(NexTEP)に採択されています。

 

 EAファーマおよびエーザイは、本研究開発開始を機に、CiCLEの産学官連携を通じて、E6011の開発を促進し、クローン病の患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より早期に貢献することが出来るよう取り組んでまいります。

 以上

  

本件に関する報道関係お問い合わせ先

<参考資料> 

1. CiCLEについて

 AMEDによるCiCLEは、産学官連携により、我が国の力を結集し、医療現場ニーズに的確に対応する研究開発の実施や創薬等の実用化の加速化等が抜本的に革新される基盤(人材を含む)の形成、医療研究開発分野でのオープンイノベーション・ベンチャー育成が強力に促進される環境の創出を推進することを目的とした事業です。

     

2. E6011について  
 E6011は、エーザイの研究子会社である株式会社カン研究所において創製された、世界初のヒト化抗FKNモノクローナル抗体です。E6011はFKNに対する中和活性を有し、従来のサイトカイン療法とは異なる、新規メカニズムによる細胞浸潤抑制を機序とする抗体医薬です。FKNは、炎症時に血管内皮細胞などに誘導される、細胞遊走因子と接着分子の2つの機能を併せ持つケモカインです。FKNの受容体であるCX3CR1は、主にマクロファージやキラーリンパ球に選択的に発現し、これら細胞の炎症部位への効率的な集積に重要な役割を果たします。FKN/CX3CR1系は、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝疾患、中枢性疾患、動脈硬化、皮膚疾患など多くの慢性炎症性疾患の病態への関与が示唆されています。E6011については、クローン病、原発性胆汁性胆管炎および関節リウマチ患者様を対象とした臨床第Ⅱ相試験をそれぞれ実施しています。なお、E6011のクローン病および原発性胆汁性胆管炎患者様を対象とした臨床開発については、2016年4月より、EAファーマが担っています。

 

3. クローン病について    
 クローン病は主に小腸や大腸に潰瘍や炎症病変が発生し、下痢や腹痛を伴う原因不明の慢性の炎症性腸疾患で、厚生労働省の特定疾患に指定されています。近年、患者数は増加しており、平成28年度末時点における特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は42,789人と報告されています2。また、日本人の患者数は、10万人に対し27人程度と言われており、米国の10万人あたり約200人の患者数と比較すると、欧米の約10分の1と言われています3。男女比は2対1と男性に多く、年代別に見ると、発症のピークは10歳代後半~20歳代前半となっています。クローン病は腸管狭窄、腸閉塞や膿瘍(感染部位に膿がたまる状態)を伴い、肛門周囲に痩孔(腸管に孔が開いて腸管と腸管、あるいは腸管と皮膚がつながった状態)が見られるのが特徴です。栄養療法や薬物療法等で症状が抑えられない場合には、手術適応となる場合もあります。また、クローン病は活動期と寛解期を繰り返すことから、一旦、寛解期に入っても、再燃(再び消化管に炎症が生じる)や再発(新たな部位に炎症が生じる)を予防するために長期にわたる治療が必要になります。

  

4. EAファーマについて    
 エーザイ株式会社の消化器事業子会社であるEAファーマ株式会社は、エーザイグループが60年以上取り組んでいる消化器事業と、アミノ酸をコアとする味の素グループの消化器事業が、2016年4月に統合して設立された、研究開発、生産物流、営業・マーケティングのフルバリューチェーンを有する消化器のスペシャリティ・ファーマです。

 EAファーマ株式会社の詳細情報は、http://www.eapharma.co.jpをご覧ください。

   

5. エーザイについて     

 エーザイ株式会社は、本社を日本に置く研究開発型グローバル製薬企業です。患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「がん」「神経領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

 

 

1 AMED の CiCLE 課題採択に関するページ: https://www.amed.go.jp/koubo/07/saitaku_00013.html

難病情報センター 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数: http://www.nanbyou.or.jp/entry/5354

難病情報センター クローン病(指定難病96): http://www.nanbyou.or.jp/entry/81