「レンビマ®」(レンバチニブ)について、全身化学治療歴のない切除不能な肝細胞がんに対する治療薬として中国当局より承認を取得中国における「レンビマ」初承認であり
中国において約10年ぶりに切除不能な肝細胞がんに対する新たな一次治療薬を創出

エーザイ株式会社

Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.

    

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)は、このたび、マルチキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名: レンバチニブメシル酸塩)について、単剤における「全身化学治療歴のない切除不能な肝細胞がん」に対する治療薬として、中国国家薬品監督管理局(National Medical Products Administration)より承認を取得したことをお知らせします。中国では、2017年10月に肝細胞がんの適応で承認申請を行い、既存の治療に比べ治療上の顕著なメリットを有するとして優先審査品目に指定されており、申請から約10カ月での承認取得となります。本承認は、中国における「レンビマ」の初承認であり、肝細胞がんの発生率が最も高い中国において1、切除不能な肝細胞がんの全身化学療法の一次治療として使用可能な薬剤として、約10年ぶりの新たな治療薬の創出となります。

 

 本承認は、「レンビマ」の全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様954人を対象とした、非盲検、無作為化臨床第Ⅲ相試験(REFLECT試験/304試験)の結果に基づいています2。本試験において、「レンビマ」は、全生存期間(Overall Survival:OS)*1について、標準治療薬であるソラフェニブと比較して統計学的に非劣性を証明しました。また、無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)*2、無増悪期間(Time To Progression:TTP)*3および奏効率(Objective Response Rate:ORR)*4について、ソラフェニブに対して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。また、グレーターチャイナ(中国、香港、台湾)の患者様288人を対象とした同試験における部分集団解析結果において3、「レンビマ」はソラフェニブに比較してOSを延長し高い有効性を示し、PFS、TTPおよびORRについて改善が確認されました。 さらに、グレーターチャイナの部分集団の約80%を占め、重要性が高い慢性B型肝炎ウイルス(HBV)由来の肝細胞がん患者様の部分集団解析結果においても、「レンビマ」はソラフェニブに比較してOSを延長し、従来の薬物療法において治療効果の低減が示唆されているHBV由来の肝細胞がん患者様に対しても優れた効果が確認されました(詳細なデータは参考資料に記載)。

 中国の添付文書に記載された、「レンビマ」投与群で高頻度に確認された有害事象(上位5つ)は、高血圧(45%)、疲労(44%)、下痢(39%)、食欲減退(34%)、体重減少(31%)でした。

 

 肝がんは、がん関連死亡原因の第2位であり、世界で年間約75万人が亡くなっています。また、毎年約78万人が肝がんと診断され、そのうち約80%がアジア地域に集中しています。特に中国においては、年間新規患者数約39万5千人、年間死亡者数約38万人と、全世界の約50%を占めています1。また、肝細胞がんは肝がん全体の85~90%を占めており、切除不能な肝細胞がんは、治療方法が限られており、予後が極めて悪く、アンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患です。

 

 現在、「レンビマ」は、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州など50カ国以上、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州など45カ国以上で承認を取得しており、今までに1万人を超える患者様に「レンビマ」が処方されています。肝細胞がんに係る適応については、2018年3月に日本、同年8月に米国、欧州において承認を取得しており、日本においては、本適応での承認取得以来、約3,000人の患者様に「レンビマ」が処方されました。

 

*1全生存期間(OS): 死因ががんによるものかに関わらず、がんの治療が行われた時点から、あらゆる死因による死亡までの期間

 

*2無増悪生存期間(PFS): がんの治療が行われた時点から、あらゆるイベントによる死亡または腫瘍の増悪が客観的に確認されるまでの期間

 

*3無増悪期間(TTP): がんの治療が行われた時点から、がんが増悪した時点までの期間。PFSと異なり、あらゆるイベントによる死亡までの期間は考慮しない。

 

*4奏効率(ORR): 固形がんの抗腫瘍効果の画像評価において、完全奏効(腫瘍が完全に消失した状態)と部分奏効(腫瘍の大きさの和が30%以上縮小した状態)を合わせた割合

 

以上

 

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社


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    Michael DeCarbo: (908) 740-1807

<参考資料> 

1. REFLECT(304)試験について2
 REFLECT試験は、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんの患者様954人を対象とした、「レンビマ」と標準治療薬であるソラフェニブとの有効性および安全性を比較する多施設共同、非盲検、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相試験です。本試験は20カ国、154施設で実施されました。本試験では、954人の患者様が各投与群に1:1の割合で無作為に割り付けられ、「レンビマ」群(478人)では、体重によって1日1回12mg(60㎏以上)または8mg(60㎏未満)が投与され、ソラフェニブ群(476人)では1回400mgを1日2回投与されました。投与は病勢進行あるいは忍容できない有害事象の発現まで継続されました。本試験は、主要評価項目をOSとし、非劣性の検証を目的に実施しました。また、副次評価項目をPFS、TTPおよびORRとし、ソラフェニブに対する優越性の検証を行いました。

 中国添付文書に記載されたOS(中央値)について、「レンビマ」群は13.6カ月に対し、ソラフェニブ群は12.3カ月となり(ハザード比 0.92(95%信頼区間:CI = 0.79-1.06))、「レンビマ」は、ソラフェニブに対して統計学的な非劣性を証明し、主要評価項目を達成しました。

 また、盲検下での独立画像判定において、副次評価項目であるPFS、TTPおよびORRについて、ソラフェニブに対する「レンビマ」群の優越性が示され、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が認められました。

  • • PFS(中央値)について、盲検下での独立画像判定におけるmRECISTによる評価において、「レンビマ」群7.3カ月、ソラフェニブ群3.6カ月(ハザード比 0.64 (95%CI = 0.55-0.75)、P<0.00001)でした。
    • TTP(中央値)について、盲検下での独立画像判定におけるmRECISTによる評価において、「レンビマ」群7.4カ月、ソラフェニブ群3.7カ月(ハザード比 0.60 (95%CI = 0.51-0.71)、P<0.00001)でした。
    • ORRについて、盲検下での独立画像判定におけるmRECISTによる評価において、「レンビマ」群   40.6%(95%CI = 36.2-45.0)に対しソラフェニブ群12%(95%CI = 9.4-15.4)であり(オッズ比5.01 (95%CI = 3.59-7.01)、P<0.00001)、「レンビマ」群はソラフェニブ群に対してORRを約3.5倍近く改善しました。

     

2. グレーターチャイナを対象とした部分集団解析について3   
 グレーターチャイナを対象とした部分集団解析は、REFLECT試験における肝細胞がんの患者様954人のうち、288人を対象としました。本部分集団解析に関しては、OS(中央値)は、「レンビマ」群で15.0カ月、ソラフェニブ群で10.2カ月(ハザード比0.73 (95%CI = 0.55-0.96)、名目P = 0.02620)でした。独立画像判定におけるmRECISTによる評価において、PFS(中央値)は、「レンビマ」群で8.4カ月、ソラフェニブ群で3.6カ月(ハザード比0.47 (95%CI = 0.35-0.64)、名目P<0.00001)、またTTP(中央値)は、「レンビマ」群で9.2カ月、ソラフェニブ群で3.6カ月(ハザード比0.45 (95%CI = 0.33-0.62)、名目P < 0.00001)でした。ORRは、「レンビマ」群で43.8%、ソラフェニブ群で13.2%(オッズ比5.14 (95%CI = 2.84-9.31)、名目P<0.00001)でした。

 また、本部分集団288人のうち、約8割にあたる242人のHBV由来の肝細胞がん患者様を対象とした部分集団解析において、OS(中央値)は、「レンビマ」群(123 人)で14.9カ月、ソラフェニブ群(119人)で9.9カ月(ハザード比 0.72、95%CI = 0.53-0.97)でした。

 

3. 肝細胞がんについて     
 肝がんはがん関連死亡原因の第2位であり、世界で年間約75万人が亡くなり、毎年約78万人が肝がんと診断されています。地域差も大きく、中国、日本を含むアジアに新規患者様の約80%が集中しています1。肝細胞がんは、肝がんにおいて最も発生頻度が高く、肝がん全体の85~90%を占めています。肝細胞がんは慢性肝疾患、特に肝硬変と関連しており、発生原因として、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスが挙げられますが、最近の調査では非B型非C型肝細胞がんの増加が報告されています。肝細胞がんの第一治療選択は外科手術ですが、肝臓移植、外科的切除、腫瘍アブレーション(ラジオ波焼灼法または凍結療法など)を含む根治的な治療介入、または肝動脈化学塞栓療法(TACE)に適さない切除不能な肝細胞がんの場合は、治療薬が限られており、予後が極めて悪いことが知られています。

  

4.「レンビマ®」(一般名: レンバチニブメシル酸塩)について

 「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、エーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

 現在、本剤は、甲状腺がんに係る適応で米国、日本、欧州など50カ国以上で承認を取得しています。また、米国、欧州など45カ国以上で、腎細胞がん(二次治療)に対するエベロリムスとの併用療法に係る承認も取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。

 また、肝細胞がんに係る適応について、日本、米国、欧州および韓国で承認を取得し、台湾(2017年12月)などにおいて承認申請中です。

 切除不能な肝細胞がんの患者様に対して「レンビマ」は、成人には体重にあわせて、体重60 kg 以上の場合は12 mg、体重60 kg 未満の場合は8 mg が投与されます。なお、推奨投与量および用量の増減については添付文書に記載されています。

 

5.エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について

 2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.はレンビマのグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、レンビマについて、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法における共同開発、共同販促を行います。併用療法については、既に実施している臨床試験に加え、6種のがん(子宮内膜がん、非小細胞肺がん、肝細胞がん、頭頸部がん、膀胱がん、メラノーマ)における11の適応取得を目的とした臨床試験、さらに6種のがんに対するバスケット型臨床試験を共同して同時並行で実施します。「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法については、現在、臨床の試験段階にあり、その有効性と安全性を精査中です。また、現時点で承認された「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法の適応はありません。

 

6. エーザイ株式会社について

 エーザイは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する 「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「がん」「神経領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界で約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

 また、当社は開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善に向け主要なステークホルダーズとの連携を通じ積極的な活動を展開しています。

 エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

 

7. Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のがん領域における取り組み

 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.では、画期的な科学を革新的ながん治療薬に変換して世界中のがん患者さんを助けることに取り組んでいます。オンコロジー事業にとって、がんと闘う人々を助けることは私たちの情熱であり、がん治療薬へアクセスしやすくすることは私たちの責任です。

 また、がん領域における取り組みの一環として、医薬品業界で一二を争う急成長を遂げている開発プログラムにより、30種類以上のがんに対するがん免疫療法の可能性を模索しています。また、引き続き戦略的買収を通じて、がん免疫療法のポートフォリオを強化し、進行がんの治療を改善する可能性をもつ有望ながん治療薬候補の開発を最優先に進めています。

 当社のオンコロジー臨床試験について詳しくは、www.merck.com/clinicaltrialsをご覧ください。

 

8. Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.について

 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は1世紀以上にわたり、バイオ医薬品のグローバルリーダー企業として人々の生命を救い、生活を改善するために、世界で最も治療が困難な病気のための革新的な医薬品やワクチンの製造に取り組んできました。Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は、米国およびカナダ以外の地域ではMSDの名称で知られています。医療用医薬品、ワクチン、バイオ医薬品およびアニマルヘルス製品の提供を通じてお客様と協力し、世界140カ国以上で事業を展開して革新的なヘルスケア・ソリューションを提供しています。また、さまざまなプログラムやパートナーシップを通じて、医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.は今も、がん、生活習慣病、新種の動物病、アルツハイマー病、HIVやエボラなどの感染病をはじめとして、世界中で人々の命やコミュニティを脅かしている病気の治療や予防のために、研究開発の最前線に立ち続けています。詳細については当社ウェブサイトwww.merck.comやMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のTwitter、Facebook、YouTube、LinkedInをご参照ください。

 

9. Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の将来に関する記述

 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(以下、当社)が発行した本リリースには、米国の1995年私的証券訴訟改革法(the Private Securities Litigation Reform Act of 1995)の免責条項で定義された「将来に関する記述」が含まれています。これらの記述は、当社の経営陣の現時点での信条と期待に基づくもので、相当のリスクと不確実性が含まれています。新薬パイプラインに対する承認取得またはその製品化による収益を保証するものではありません。予測が正確性に欠けていた場合またはリスクもしくは不確実性が現実化した場合、実際の成果が、将来に関する記述で述べたものと異なる場合も生じます。

 リスクと不確実性には、業界の一般的な状況および競争環境、金利および為替レートの変動などの一般的な経済要因、医薬品業界の規制やヘルスケア関連の米国法および国際法が及ぼす影響、ヘルスケア費用抑制の世界的な傾向、競合他社による技術的進歩や新製品開発および特許取得、承認申請などの新薬開発特有の問題、当社による将来の市況予測の正確性、製造上の問題または遅延、国際経済および政府の信用リスクなどの金融不安、画期的製品に対する当社の特許権やその他の保護の有効性への依存、特許訴訟や規制措置の対象となる可能性等がありますが、これらに限定されるものではありません。当社は、新たな情報、新たな出来事、その他いかなる状況が加わった場合でも、将来に関する記述の更新を行う義務は負いません。将来に関する記述の記載と大きく異なる成果を招くおそれがあるこの他の要因については、当社に関する Form 10-K の 2017 年度年次報告書および SEC のインターネットサイト(www.sec.gov)で入手できる米国証券取引委員会(SEC)に対するこの他の書類で確認できます。

 

 「キイトルーダ®」はMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.Aの子会社であるMerck Sharp & Dohme Corp.の登録商標です。

 

1  GLOBOCAN2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012. http://globocan.iarc.fr/

2 Kudo M et al., “Lenvatinib versus sorafenib in first-line treatment of patients with unresectable hepatocellular carcinoma: a randomised phase 3 non-inferiority trial” The Lancet 2018, 391 (10126), 1163-1173.

3 レンビマ添付文書(中国)